• HOME
  • 記事
  • ゴルフ
  • フェードとドローどっちが有利? そして現代の道具に必要な技術とは

フェードとドローどっちが有利? そして現代の道具に必要な技術とは

デビュー当時は強烈なフックボールが持ち球だった青木功。球筋をフェードに変えたことが転機となりその後の活躍につながったことは有名(撮影:上山敬太)

「ドローからフェードにしたことで、勝利への道が開かれたのである」
かなり古い話ですが、ベン・ホーガンを始め、現在のJGTOの会長である青木功など、このような伝説が元になり20世紀末にフェードボール有利説が一世を風靡しました。

同時に日本では、1980年代後半から90年代にかけて、ジャンボ尾崎軍団の出現により、オープンスタンス、インサイド・アウト軌道、アッパーブローでハイドローを打つというメディアの取り上げもあって、ドロー有利説も負けていませんでした。

この論争は結論が出ないままで、21世紀になってもオールドゴルファーが集まると、ドローの方がランが出るから飛ぶ、フェードはミスしても大ケガになりにくいからいい、など球筋によるメリット、デメリットを引き合いにフェード or ドローというゴルフ談義が盛んに行われています。

もちろん両方打てる方がいいのはわかりきっています。特にグリーンを狙うアイアンショットなどでは、ピンポジションや風の状況により、ピン側につく確率がより高くなる球筋があるからです。左サイドのピンに対してフェードを打つ場合、ターゲットはグリーン外になり、狭いサイドから狙うためプレッシャーもかかります。もしフェードしなければ確実にオンしませんし、少しでも球がつかまって左に引っ張れば大トラブルの危険性が待っています。

しかしドローならターゲットはグリーンセンターでOK。心理的にも楽ですし、理想通りドローすればピン側、しなければセンターにオン。仮に右プッシュしてもグリーンには残る。このようにグリーンを狙う際には球筋によってオンする確率、有利不利が生まれるからです。(右ピンなら逆にフェードが有利)

ところが、ことドライバーに関しては飛距離をコントロールする必要はほぼなく思い切りスイングするため、自分の得意な球筋、すなわち持ち球で、ということになる。

右打ちの場合、意図せずに右に曲がるのがスライス。狙って曲げるのがフェード。同じく、意図せずに左に曲がるのはフック。狙って曲げるのはドロー。これが定義になりますが、最近では、曲がりづらいボールとクラブの進化で、ひと昔前と比較してもストレートにボールが飛ぶようになっていることから、大きい曲がりをスライスとフック、小さな曲がりをフェードとドローというように使い分けるケースも出てきています。

過去においてドロー有利説の根拠のひとつとなったのが、スピン量の多いクラブとボールの存在です。80年代までのドライバーは、現在の物より圧倒的にスピンがかかりやすかった(つまり飛ばずに曲がりやすかった)。糸巻バラタのボールもしかり。一概には言えませんが、フェードの球筋ではさらにスピンが多くなる傾向にあり、スピン量を抑えて飛距離増につなげるテクニックとしてドロー打ちが必要だったという側面もあったようです。

しかしまったく逆の発想で、スピンの多いフェードの方が先へ先へと球が巻き込んでいかないから安全であるという考え方もあり、このあたりも論争に拍車をかける要因のひとつとなっていたようです。

一般的には、現在でもスライスで悩んでいるゴルファーが多いというのが定説になっていて、スライスを防止する機能を売りにしているクラブは売れるという実績もあります。このときに使うワードは“ドローバイアス”です。バイアスというのは、偏りという意味ですから、スライスに対抗するのは、フックバイバスのはずなのですが、ドローなのです。フックバイアスよりドローバイアスのほうがイメージが良いことは一目瞭然で、売れるワードというわけです。

通常新しいクラブの開発には、そのメーカーの契約選手からのフィードバックによって開発が進むものです。単なる偶然かもしれない、という前置きした上での話になりますが、2023年現在テーラーメイドの契約選手はフェード打ちが多く、キャロウェイの契約選手はドロー打ちが多いといわれています(もちろん諸説ありますが)。購入者の満足度も、契約選手の持ち球と同じようにリンクする傾向があるので、参考にするという考え方もあります。

さて、21世紀になってもうすぐ四半世紀。フェードが有利か? ドローが有利か? この論争が決着するのはもう少し先のようですが、ひとつ言えるのは、ボールが曲がらない現代では昔のように曲げてコントロールする技術はあまり必要とされないということ。

これは余談ですが、国内男子ツアーの試合会場で男子プロに聞いたところ、「今の道具にはフェードの方が合っている」と複数人の選手が答えていました。プロの感覚では、フェースを返さず真っすぐ出していくライン出しに近いイメージになるようで、厳密にいうと球筋はほぼストレートボールに見えますが、感覚的にはフェードになるということでした。

ヘッドスピードによっても変わりますが、そもそもスピン量の少ない道具は、歪みのないスイング軌道とスクエアなフェース面の向きを保ったままある程度の高さにボールを打ち出すシンプルなスイングが求められる。そうやって打った時に、打ち手の個性として結果的に球筋も決まってくる。つまり手先で操作をしない、球を曲げる要素を排除したスイングこそが現代のクラブにマッチした技術なのです。

フェード、ドローどちらが有利かを考えるより、まずは今の道具に合う方法を見つければ、その過程で球筋もおのずと決まって来る。どちらを打ちたいか、ということではなく、意思に関係なく自然に決まる、と言った方が適切かもしれません。

そのような状態になるまで練習すれば、もし持ち球を聞かれても「私はフェード!」「僕はドロー!」と、自信を持って即答できるはずです。ゴロとか天プラとか誤魔化さずに答えてみましょう。さて、あなたの持ち球はどっちですか?

(取材/文・篠原嗣典) 

関連記事