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「小さな部屋で泣いた」日も…リディア・コが“裏庭”で低迷から復活V 通算20勝、史上5人目の生涯賞金1700万ドル突破

苦しかった1年を経て、通算20勝目を挙げたリディア(撮影:GettyImages)

<ヒルトン・グランド・バケーションズ・トーナメント・オブ・チャンピオンズ 最終日◇21日◇レイクノナG&CC(米フロリダ州)◇6608ヤード・パー72>

復活の地は“自宅の裏庭”だった。だが、そこまでの道のりはとても遠く感じるものだった。トータル14アンダーで、今季の米国女子ツアー最初の優勝者になったリディア・コ(ニュージーランド)は、「本当に“勝者の輪”に戻れるかどうか分からなかった」と苦しかった1年間を思い起こす。

前回の優勝はツアー年間女王に輝いた2022年の最終戦「CMEグループ・ツアー選手権」。“復活”というが、たった1年間勝利がなかっただけだ。だが、その1年間がどん底だった。20試合に出場した昨季は、夏場を過ぎても調子が上がらずに低迷。ツアーのポイントランキング100位と、シード圏外のまま終わった。今季は、過去2年間の優勝者という枠組みの『カテゴリー4』(シード選手は『カテゴリー1』)に位置している。

最もつらかった時期を聞かれると、48位に終わった昨年9月の「ウォルマートNWアーカンソー選手権」を挙げる。「(65を出した)初日はとてもいいプレーができたの。でも2日目に、グリーンに乗せるために3~4打を要したホールがあった。部屋で、『どうしていいラウンドができないんだろう?』と思った」。続けて、こんなことを打ち明ける。「その日は小さな部屋で泣いたわ。このトンネルの先には何があるんだろうって」。

そんな時に支えになったのが、22年12月に結婚した夫のチョン・ジュン氏だった。「彼の言葉を聞いて、『いいスコアがでないだけで、自分がダメな人間だと感じているけど、悪いラウンドのたびに泣いていたら、無駄なエネルギーを消費するだけ』と思えた。もっとポジティブに考えるべきだった」。そしてこの後、上昇の兆しがあらわれる。

昨年10月に韓国で行われた「BMW女子選手権」で3位になると、次の出場試合になった同月の「メイバンク選手権」も11位。そして非公式試合ながら、12月に行われた男女ペア戦「グラント・ソーントン招待」ではジェイソン・デイ(オーストラリア)と優勝をつかみとった。“予感”は十分にあったともいえる。

レイクノナに自宅を構え、ホームとしているコースで歓喜を味わった。「先週もここで練習をしていたから、まったく新しい環境とは思わなかったわ。自分の裏庭だもの」。この勝利が節目の通算20勝。さらに優勝賞金22万5000ドル(約3300万円)を獲得し、ツアー史上5人目となる通算獲得賞金1700万ドル(1716万7692ドル=約25億3800万円)の大台を突破した。

そしてLPGA殿堂入りに向けても1ポイントを獲得。その最低基準となる27ポイントまで、あと1ポイントまで迫った。「次に優勝争いをする時には『大変だ、殿堂入りするんだ』ってきっと頭に浮かぶと思う。最高のゴルファーになるように努力しなければいけない」。迷路から抜け出し、今度はこの“大台突破”を目指すことになる。

今夏のパリ五輪出場にも意欲を見せる。16年のリオ五輪は銀、そして21年の東京五輪は稲見萌寧とのプレーオフに敗れたものの、銅を獲得している。「五輪は最高よ。私のなかのおとぎ話では、次は金メダルを獲得して、3つのコレクションをそろえたいの」。かつての天才少女も26歳になったが、まだ26歳。ここからもさらなる金字塔を打ち立てるに違いない。再び時計が動きだした。(文・間宮輝憲

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