横浜FCを、歴史に残すために。 松本雄一×みる兄さん【後編】

「ウチは、単なるクラブじゃない」

—松本さん、今後クラブのマーケティング担当者としてどういう展望を持っておられますか?

松本 考えていることは、めっちゃあるんですよね。コロナで制限が無ければ全部やりたい。横浜FCというチームの価値を、日本サッカーをよくすることに使えるようにしたいですね。

カズさんをはじめレジェンドが多いクラブというイメージはあると思いますが、彼らの知名度に頼るのではなく、今足りていないファンを増やすためのホームタウン活動の質・量を担保する。世代を超えて、何世代にもわたってスタジアムに戻って来てくれるファンを作っていく。

デジタルの活用も、新しいものを取り入れるというよりは「地域でやったことをしっかり発信する」という基本に立ち返りたいですね。

—みる兄さんは、サポーターとしてどういう部分に期待されていますか?

みる兄さん 映像などクリエイティブにもっとチカラを入れてほしいですね。

もちろんリアルをコツコツやっていくのは大事です。ただ、横浜FCって53歳のカズさんも居れば、19歳の斉藤光毅選手(2020シーズンを最後にベルギーリーグのロンメルSKへ移籍)みたいな若手のスターもいる、ドラマチックなチームでもあると思うんですよ。

ドキュメンタリーなり映像のチカラを使って人を巻き込んでいく、そのストーリーをいかに描くか。クリエイティブの費用対効果を算出するのは難しいので、予算取りは大変だと思いますけども。

結局、やっていることをいかにグロースし、どう広げるかというと「人」なんですよね。リアルの口コミと両輪で広げていくためには、映像とクリエイティブのチカラは非常に大きいと思います。

今後1~2年は、コロナの影響でなかなかリアルが体験しづらいと思っていて。今いるファンの体験価値をもっと高めるためにも、映像に張っていいのではと思います。

—一方で、費用面も課題ですね。

みる兄さん それこそ、クラウドファンディングを使ってほしかったりしますね。物品やチケットだけを売るのではなく、いま形になっていないものを作るための投資として。

ビジョンや夢、「その船に乗りたい」と思わせるようなこと。それがあるからチケットを買ってもらえるし、応援してもらえる。

チームには、歴史やストーリーがたくさんあります。「だから僕らは戦う、皆さんには共犯者になってもらいたい」というメッセージを出すことはすごく大事。そこに集中してほしいなと思います。

—実際、ドーハの悲劇やジョホールバルの歓喜があってサッカーにとりつかれた人はたくさん居ます。最近ではトッテナムの「ALL OR NOTHING」も話題になりました。横浜FCさんでは、そういうコンテンツは難しいですか?

松本 実はまさにそれはやりたいことで、もちろんトップチームとの調整は必要ですが「ウチは単なるクラブじゃない、日本サッカーに何かを残すべきクラブ」というのは多くのファンが感じていると思いますし前向きに動きたいですね。

みる兄さん 実現してほしいですね。現場の人たちからすると「なんでこんな面倒なことするの、ここまで見せるのはどうなの」って声は上がると思うんです。でも、それを越えるものを見せて、かつDVDなり販売で収益化できるという形は示せると思うんですよね。

もちろんバランスなんですが、スポーツはショーでもあって。共犯者たるファンとの繋がりを強化するうえで、ストーリーというのは最大の武器になると思います。

—実現に期待したいです。本日は、お忙しい中ありがとうございました!

<了>

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