• HOME
  • 記事
  • Jリーグ
  • データから見る、浦和レッズのリアル。スポーツアナリティクスジャパン2022レポート

データから見る、浦和レッズのリアル。スポーツアナリティクスジャパン2022レポート

2022年3月26日、東京都内にて「スポーツアナリティクスジャパン2022(SAJ2022)」が開催されました。SAJは、各競技の現場で活躍するアナリスト集団「日本スポーツアナリティクス協会(JSAA)」が2014年に立ち上げたイベント。各競技で分析に携わるスペシャリストの方々やスポーツビジネスに関わる方々が登壇し、さまざまな観点からデータ分析についての議論が繰り広げられました。

開催8回目を迎えた今回は、明治安田生命J1リーグ・浦和レッドダイヤモンズ(以下、浦和レッズ) テクニカルディレクターを務める西野努氏が登壇しました。議題は、「浦和レッズの3年計画の現在地とテクノロジー活用のリアル」。リーグ優勝への返り咲きを目指している2020年〜2022年までの3年計画の現状と、2030年までを見据えた長期計画、浦和レッズが分析にこだわる理由についてお話しされました。

今回は、セッションの一部を抜粋してお届けします。

監督頼みでない、クラブを主語にした戦略を。

こんにちは。2020シーズンより着任している、浦和レッズテクニカルディレクターの西野と申します。今回は、私を含めた新体制が着任時に掲げた浦和レッズの3年計画と現状の振り返り、そしてチームでのデータの活用方法についてお伝えできればと考えています。

レッズでは、監督に全てを委ねるのではなく、「クラブを軸としてチームを編成していこう」という考え方が根底にあります。テクニカルディレクターというのは、とても難しい立場だと感じますね。監督が要望する選手が求められますし、監督がいらないと言う選手は獲得できない。監督によってある程度チーム作りが変わっていくのは、仕方ありません。

ですが、監督は長くて5年、短ければ1年以内にいなくなってしまいます。彼らに頼りきりにならない、ぶれない編成システムを作っていこうというのがレッズの取り組みです。

サッカーでは、自チームの状態や対戦相手の情報を把握した上で日々の練習を組み立てます。試合中には、その場で瞬時に判断することも求められます。これら全ては、監督一人の経験値では太刀打ちできないと思っています。監督は、「どんなサッカーをするのか」を頭に描くアーティスト。これをチームに落とし込むのは、他のスタッフが担当するべきなんです。

日本ではまだまだ監督に頼ったチームが多いですが、これからはクラブの総合力が一層問われます。どういうチーム作りをしていくのか。クラブがマネジメントして、監督がリーダーとして引っ張る形が理想ではないかと感じています。

それでは、具体的にどのようなビジョンを掲げてデータを活用しているのか、ご紹介していきます。

浦和レッズ、3年計画の現在地。

まずは、着任時(2019年12月)に発表した浦和レッズの3年計画について説明します。2020年から2022年までの3年間で足固めをして、国内でリーグ優勝できるチームを作っていく。そして2030年までの中長期的なビジョンとして、世界トップレベルのチームを目指す、というものになります。

この計画のもと、もう少し具体的に何をやっていくか時期ごとに明記したものが「チーム編成システム」です。長期的な目標を達成するために、いつ何をやっていくのかを言語化し、データを蓄積しています。たとえ人が入れ替わっても機能するシステムを作っていくことが一番の目的です。

作成当時は先が見えていない状態でしたが、数年経った今、方向性は間違っていなかったと感じています。項目については、この数年間でさらに明確になってきました(下記スライド参照)。

どのようなデータをどう活用し蓄積していくべきなのか、トライアンドエラーを繰り返しながら模索しています。

データ分析に、明確な答えはありません。日々勉強しながら挑戦していくのみですね。たとえ監督や強化部の人間が変わったとしても揺るがない、「浦和レッズのフットボール」の確立に取り組んでいます。

最後の「事業化」の部分は、構想段階です。日本のサッカーが世界で勝つためには、組織力を強みにしていく必要があると思います。日本人ならではの知恵を活かして、チームとしてまとまって戦わなければなりません。そのためにデータを活用し戦略を立てて初めて、世界と互角に戦えるのだと思っています。

世界の舞台で結果を残し、ノウハウやデータを販売できるようになればいいなとも思っています。成長に直結したデータとして、海外クラブなどへ販売できると面白いなと。そんな妄想もしていますね。

関連記事