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データから見る、浦和レッズのリアル。スポーツアナリティクスジャパン2022レポート

客観的にチームの位置を把握する、2つの指標

では実際、浦和レッズでどのようにデータを分析しているのかお話しします。チームで追っている代表的な2つの指標は、「プレッシング(プレッシャーをかけてボールを奪うこと)」と「コンパクトネス」です。

まずは、「プレッシング」について。PPDA(Pass per defensive action)と呼ばれる、「1回の守備アクション(プレッシング)に対して、相手に何本のパスを回されているか」という指標を用いています。守備の仕掛けがどれほど有効だったのか、客観的に振り返る材料です。この頃の浦和レッズの守備は、ちょうど平均より少し下くらいだったことがわかります。

もうひとつの指標が、「コンパクトネス」。コンパクトネスとは、トップと最終ラインとの縦幅です。相手にスペースを与えないためにできるだけ狭い方が良いですし、最終ラインもできるだけ高い方が良いものです。

「リーグ平均よりも最終ラインが低いし、縦幅も広くなっている」と現場を見ている監督にフィードバックをしています。現場が考えている戦術も踏まえつつ「客観的なデータはこう」と見せて、ひとつの指標として活用しています。

続いて、スカウティングに関するデータ分析についてお伝えします。ひとつは、獲得候補選手を比較する材料として、市場価値やシーズンを通じての成長曲線を活用しています。あくまでひとつのデータなので絶対的なものではありませんが、目安として参考にしています。

また、独自の指標を用いて獲得対象選手のパフォーマンス査定も行なっています。縦軸が違約金、横軸がパフォーマンス査定指標になっていて、選手への投資効率が高いのか低いのかを検討します。移籍金適正ラインを参考に、経済的な条件と照らし合わせて考えられるので良いですね。

データリテラシーに長けた人材がどんどん入ってきてほしい

ここまでチームパフォーマンス評価とスカウティングデータの一部をご紹介しましたが、分析全体としてまだまだ不十分だと感じています。

昨年は、現場とのすり合わせでぶつかったことも多かったです。「理想はそうかもしれないけど、選手の様子を見てみた?」と。ただ、今までは議論すらできなかったところに、共通言語ができたこと自体大きな変化だと思います。

数字は、嘘をつかないんですよね。ブレない基準ができるので、議論の質が上がっていると感じています。

データを扱える人材の育成とデータリテラシーの向上も、課題だと痛感しています。僕は51歳ですが、50歳を超えた方だとPCを扱うのが苦手な方も多いです。ただ今後もサッカーの世界で仕事をするために、避けて通れない分野かなと。少なくともデータを読む力は必要です。データや新しいテクノロジーについて学び続ける指導者の姿勢が、勝敗を分けるひとつのポイントになると思っています。

年齢関係なく、データリテラシーに長けた人材がどんどんスポーツ界に入ってきてほしいです。優秀な人材が刺激を与えてくれることで、変わっていけると思います。レッズでも今はデータ部門の担当者は一人ですが、3〜4名の頭脳集団にしていきたいですね。

これまでお伝えしてきた分析がレッズでできているのも、2月にデータアナリストを採用してから加速した部分が大きいです。「サッカーを数字で見ること」に非常に長けた方だと感じています。今でこそ日本では少ないですが、5年もするとどのクラブにもデータアナリストがいるような存在になっていると思いますね。

チームとしてどのようにデータ分析を始めるのが良いか、正解はわかりません。レッズでも「今のチームの評価をしてみよう」というところから手探りで始めました。やり方があっているのかは、試しながら確認していけば良いと思っています。やってみることで見えてくることは多いので、ぜひデータ分析へチャレンジしてほしいです。

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