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ファイナルで再会した2人のレジェンド。日本代表・木暮賢一郎vsイラン代表・シャムサイー、“監督”として初のアジア制覇を遂げるのは果たして──。

ヴァヒド・シャムサイーと木暮賢一郎は、2000年代から2010年代まで、アジアの2強であるイランと日本をけん引してきたエースストライカーだ。

日本の絶対的なエースだった木暮は、現役時代に2004年、2008年、2012年と3度のワールドカップに出場し、アジア選手権(現アジアカップ)でも日本を2度の優勝に導いた。過去に3人(木暮、逸見勝利ラファエル、吉川智貴)しかいない日本人のアジア年間最優秀フットサル選手賞の受賞者の一人でもある。一国の代表選手として、これだけ輝かしい実績を持つ選手は世界的にも少ないだろう。しかし、シャムサイーはそんな木暮も凌駕する実績を誇る。

文=河合拓

アリ・ダエイに匹敵するイランのレジェンド

シャムサイーは、イラン代表として通算189試合・392得点を記録。1試合あたりほぼ2得点を挙げている計算になり、元ブラジル代表ファルカンの通算258試合出場・401得点に次ぐ、フットサルの歴史上、代表チームにおいて世界で2番目に多いゴール数だ。アジア年間最優秀フットサル選手賞を3度受賞しているほか、1大会31得点をたたき出した2001年のアジア選手権(現アジアカップ)をはじめ、過去8回も得点王に輝いている。

稀代のゴールマシンは、イラン国内でサッカーの元イラン代表アリ・ダエイに匹敵する人気を誇り、今大会でもシャムサイーがピッチに登場すると、イランのファンは選手が登場する時以上に彼を歓迎する。記者会見が終われば、中東の記者たちが記念撮影を求めて列を成すほどの存在だ。

雌雄を競ったシャムサイーと木暮賢一郎

そんなシャムサイーだが、実は昨年まで現役選手でもあった。正確に言えば、2014年から指導者としてのキャリアもスタートさせており、選手兼監督としてイランの強豪ギティ・パサンを率いていた。昨年のワールドカップ終了後、イラン代表監督に就任して現役を引退。その際、周囲はファルカンが持つ個人記録を抜かせようと国際親善試合の開催を提案したのだが、本人は「フットサルの発展のためにならない」と、これを固辞した逸話もある。そして、現在は「就任初日から私たちの目標はW杯で決勝に進出することだ。非常に長く険しい道になるが、必ず達成する」と、新たな目標を掲げている。

選手として圧倒的なプレーを見せ、アジアのレジェンドとなっているシャムサイーだが、「選手時代のほうが多くの喜びや楽しさがあった。その時は、とにかく自分自身と向き合えば良かったからね。今はそうじゃない。監督というのは、その国の指導者全員を代表してきている。そして8500万人の国民の期待を背負うことになる。これは本当に大変な重圧だ」と話しながら、現役時代よりも白くなった頭をなでた。

決勝を前にした前日会見は、現役時代は激しく競い合っていた両雄が肩を並べ、和やかな雰囲気で行われた。日本戦へ向けて、コメントを求められたシャムサイー監督は「私は、コグレと選手として戦った経験が何度もある。現在、私たちは監督となり、以前とは異なる役割を持っているが、再び戦うことができてうれしい。日本というのは、とても強いチームだ。私たちの戦略、戦術に沿った戦いを見せて前進していきたい。しっかりと分析をして、試合中のすべての瞬間を支配できるような最高のイランを披露したい」と、意気込んだ。さらに、「日本は常に試合に向けて素晴らしい準備をしてくる。そして規律をもって戦ってくる。私の願いとしては、とても魅力的なゲームになってほしい」と続けた。

これに対して木暮監督も「シャムサイー監督のことは、選手としても、人としても、よく知っている友人です。代表監督として、再び彼と、彼の率いるイランと対戦できることがうれしい。この20年間、イランは常に私たちのライバルで、多くの決勝を戦ってきました。決勝に向けていい準備をしたい。選手たちも自信を持っているので、イランを倒して、チャンピオンになりたい」と、闘志を燃やした。

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