• HOME
  • 記事
  • その他
  • スマートスタジアムは誰のため?忘れてはいけないアスリート視点[PR]

スマートスタジアムは誰のため?忘れてはいけないアスリート視点[PR]

陸上競技の魅力発信へのICT技術の応用が期待される

ここから議題は未来へと視点を移す。陸上競技は、今後テクノロジーとともにどのように変化していくべきなのだろうか。「テクノロジーがいくら進化しようとも、競技者のメンタル面は動かせないもの」というのが、今日の議論を経た高平氏の考えだ。そのうえで、テクノロジーを駆使する人材と、陸上界の人材の歩み寄りによって、陸上競技というローテクの世界に何かが生まれるのでは、という期待もにじませた。

運営面の改善を挙げたのは寺田氏だ。「陸上はラグビーに比べてボランティアの方がすごく多い」というラグビーから陸上競技に転向した寺田氏ならではの発見から、ボランティアへの負担の大きさを逆説的に感じたという。すでにやりやハンマーをラジコンが運ぶ例もあるといい、そうした準備面でのテクノロジーのサポートを歓迎した。

寺田明日香氏

寺田明日香氏

また、競技者と観戦者の関係についても課題がある。陸上競技場に足を運んだことがあるか、という会場への質問に対し、あると答えたのは4人。そのなかで楽しかったという感想を持ったのはわずか1名という結果だった。その理由として高平氏は、競技の見にくさを指摘した。同じフィールドのなかで同時に4,5種目同時に開催されるため、観戦者は1つの競技に集中することができない。また、観戦者は上から眺める構図になるため、棒高跳びなどの競技ではどれほど高く飛んだかというのが伝わりにくく、競技の魅力発信のうえでも難しい環境にあるという。

さらに、観戦の敷居が高く感じられていることも挙げた。たとえば競技を見ながらビールを飲む、といった光景はサッカーや野球観戦ではおなじみだが、陸上競技ではそもそもお酒を飲んでいいのかわからないという人も多いようで、エンタメというよりは体育=教育現場という印象が強いのではないかとイメージ改善の必要性を訴えた。

ここで参加者からも、身近なところで陸上競技の魅力を伝えるエキシビジョンなどの取り組みはないのか、という質問が挙がった。高平氏は「可能性はゼロではない」としながらも、エキシビジョンのパフォーマンスに向けて大会と同様のコンディショニングの調整が必要になるため、ハードルは高いとし、陸上の魅力発信の手法に制限がかかりやすいもどかしさを感じさせた。

陸上への理解・認知促進と、既存ファンとの関係を縮めることにも、まだまだテクノロジーが介入する余地がありそうだ。過去には、東京・丸の内で“ストリート陸上”を行った例もあり、プロモーションの工夫次第で人々の目に触れる機会を増やしていくことが求められる。アスリートとファン両者のインタラクティブなコミュニケーション量を増やした先に、双方が求めるスマートスタジアムの構想が見えてくる。

関連記事