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ウィニングパットは「手が震えていた」 驚異の飛距離を持つルーキー・神谷そらがツアー初優勝

驚異の飛ばし屋ルーキー・神谷そらが川奈で初優勝を挙げた。(撮影:福田文平)

<フジサンケイレディス 最終日◇23日◇川奈ホテルゴルフコース 富士コース(静岡県)◇6457ヤード・パー71>

70センチのボギーパットを沈めると、スタンドから大きな拍手が起こった。ルーキー・神谷そらのツアー初優勝の瞬間だ。プロ転向後、日本ツアー8試合目での優勝は史上4番目の速さ。初々しいルーキーはギャラリーの祝福に対し、帽子のツバに手を当ててお辞儀をした。

最終日は1イーグル・2バーディ・6ボギーの「73」と2つ落とす“忙しい”一日。「最後はしっかりミスをしたので笑えなかったですね。ホッとしました」と安どの表情を浮かべた。

2位に1打差の単独首位で出た神谷は、「昨日までの方が緊張していました」とプレッシャーに押しつぶされることはなかった。しかし、1番ホールのティショットは逆に「緊張しなさすぎて、体が動きすぎていました」と普段以上に体が大きく動いて、振り遅れる形で右に飛び出した。山の間から転がり落ちたボールはフェアウェイバンカーに入ったが、そこからパーで切り抜けた。「緊張しなさすぎた」ことで苦労する一日の始まりだった。

「荒れるかなとは予感していたので、どれだけ耐えられるかなと思っていました」。いつも以上に体が動くことを抑えられない。ティショットは荒れた。平均飛距離256.23ヤードでツアー2位の飛ばし屋だけに、ボールが曲がると“大ケガ”につながる。4番パー5では飛距離を生かして2オンに成功。3メートルを沈めてイーグルとしたが、続く5番パー5は、右に曲がり隣の4番ホール方向まで飛んだ。2打目は4番のティイングエリア方向に打って、3打目で5番に戻してなんとかボギーでしのぐなど、トラブルも少なくなかった。

9番でボギーとすると、11番から2連続ボギーで首位の座を明け渡す。しかし、14番パー4で4メートルのバーディパットを沈めて取り戻すと、17番パー3では、「当たりが良くなかった」というティショットは、エッジギリギリに落ちて3メートルのバーディチャンス。「思ったところに打てたけど、少し強かった」というボールは右に曲がりながらカップに吸い込まれ、単独首位に返り咲いた。

18番に入ると2位の岩井千怜がボギーとして、神谷のリードは2打に広がっていた。グリーン奥からの3打目のアプローチを5メートルに乗せて、パーパットは70センチオーバー。ウィニングパットは「手が震えていました。それを見て自分が緊張しているんだなと気が付きました」。手の震えを止めることはできない。テークバックからの切り返しで早くならないように、リズムだけを意識して打って勝負を決めた。

この日のフェアウェイキープは14ホール中5回。ラフでは穂先がついてフライヤーしやすい状況も多かったが、「ラフにいったら手前でもいい。手前からピンまで転がってくれたらいい」という作戦で2打目以降は大ケガしないマネジメントに徹した。

昨年、2度目のプロテストでトップ合格を果たした神谷は、年末のQTで7位に入って前半戦の出場権を獲得。プロ8試合目での勝利には「こんなに早く勝てるとは思っていなかった」と驚きを隠せない。今季開幕から7戦中4試合で予選落ち。アマチュア時代にプロのトーナメントで上位に入った経験はなかったが、“トップ合格”という肩書も手伝って「自分に期待していた部分もあった」。プレッシャーで自分らしいゴルフができなかった。それが、前週の「KKT杯バンテリンレディス」で20位タイに入ったことで「結果が出て楽しくゴルフができるようになった」と自分らしさを取り戻したのである。

2003年生まれの神谷は、昨年ツアー優勝を挙げている川崎春花や尾関彩美悠らと同じいわゆるダイヤモンド世代の一人。ツアー屈指の飛ばし屋ルーキーのポテンシャルはまだまだこんなものではない。今回の優勝という結果で、さらに自信を深めた。「明確な目標はまだ立てていないけど、2勝目を目指してまた明日からイチからがんばっていきたい」。“新世代”のニューヒロインが誕生した。

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