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片山堅仁(元シュライカー大阪)が味わった挫折。「外の世界で何ができるか」

自分を超える選手のために“答え”は言わない

-**スクール事業もしているとのことですが、指導の際に心がけていることがあれば教えてください。**

指導する上で気をつけているのは僕から絶対に答えを言わないことです。もしかしたら僕の答えを飛び越えてくる人がいるかもしれません。もしそうだとしたら、その人の伸びしろをなくしてしまう可能性があります。

だからあくまでヒントを与えるまでに留めます。じゃないとロボットになってしまいますから。スポーツにおいて絶対に同じシチュエーションは生まれないので、パターンを決めることもできないはずです。それがスポーツの面白さでもあるわけですしね。

同時に僕も指導者として学ぶことを怠らないようにしています。ありがたいことに、海外の有名クラブの指導者と触れ合える機会が僕は多いので、そういう時にはとにかく質問をするように意識しています。貴重な機会をフルに活用するということですね。それで得られた情報こそが自分にしか出せない価値へと変化していきます。

もしかしたらしつこいように見えるかもしれませんが、素晴らしい指導者は人間的にも優れていて、質問してくれることが嬉しいし、それが日本のためになるなら喜んで答えるという人ばかりです。僕は本当に常に学ばせてもらっています。でもそこで学んだことも絶対ではないので、子供に対しても答えとして教えることはありません。

海外の優秀な指導者というのは同じことを伝えようとしていても言葉のチョイスがうまいんですよね。スペインのとある有名なコーチはピッチ上のチームを「電車」だと言いました。電車は1両目、2両目、3両目と連なっていくもので、それはサッカーでも同じ。攻撃時にも守備時にも全体が連動して動くものだと教えるんです。それができていれば、ボールを途中で奪われてもまたすぐに奪い返せる体制が整います。

逆に1両目と2両目が離れていまうと誰もボールを奪いにいく人がいなくなってしまうからまずいということです。だから常にチーム全体で動くという意味を込めて、「電車に乗り遅れるな」という表現を用いています。

片山堅仁氏

スペインでもポゼッションからの得点は2割程度

-**片山さんはどこの国のプレースタイルが好きですか?**

僕が好きなのはスペインですね。本当はブラジルが好きなので、そちらに渡ったりも行ったりしてはいるのですが。スペインはどうしたらブラジルに勝てるかというところから戦術や考え方を作っていっています。もちろんそのままやってもダメでしょうが、日本も真似をするならスペインの方がいいと思います。日本人は世界に出たら体も小さいし、スピードがあると言っても他の国にもそういう選手はいます。そうなるとちょっとした考え方や細かいポジショニングなど、外国人選手が少し足を伸ばしてごまかせるようなところを早い段階から突き詰めていかないと勝てないでしょう。スペインはまさにそこに力を入れているんです。

実はスペインリーグも分析すると得点パターンの8割はカウンターとセットプレーからなんです。残りの2割はポゼッションからのゴールということになりますが、その中の8割はバルセロナの得点です。いずれにせよ、圧倒的にポゼッションからゴールを奪える可能性は低いわけです。だからバルセロナ以外のチームはそこまでポゼッションの練習はしていません。

日本ももっとデータを見て、理想との差を分析し、結果に結びつけていかないといけません。僕はむしろその辺りは日本の得意分野なのでは?と思っているくらいです。

僕が育成方針で一番だと思うのはバルセロナです。バルセロナはピッチ内外をリンクさせて考えます。ピッチ外で人のことを考えられない人が、ピッチ内で考えられるわけがないという考え方です。ひとりよがりになって、チームのためにプレーできない選手は求めていないということですね。

基本的に強いチームはそういうところも大切にしていますから、エンブレムがなくてもどんなところに所属しているのかはすぐに分かるものですよ。

-**今までサッカーやフットサルに関わってきて、最も印象的だった出来事を教えてください。**

僕はボカ・ジュニアーズというクラブが好きなのですが、アルゼンチンのボン・ボネーラというボカのホームスタジアムに行った時に、サッカーとか、そういうものを超えたものを感じて震えたんです。本当に鳥肌が立ちました。

選手に話を聞いても、もうこの1試合で死んでもいいという気持ちでプレーをしていると言うんです。そう思える環境を作り出している国、チーム、スタジアムというのが、純粋にすごいと思いました。未だに僕もその場でプレーしてみたいとは思いますよ。ブラジルもスペインのクラシコもすごいですが、やっぱりボン・ボネーラのあの感じは異質でした。

選手である以前に一人の人間として何ができるのか

-**これから日本のフットサル界を良くしていくためには何が必要だと考えていますか?**

世界トップクラスのフットサルクラブであるインテル・モビスターはフットサルという枠を超え、競技を知らない人に向けても発信をすることでチームの価値を上げていくという努力をすごくしています。試合以外の部分でもイベントの開催やSNSのフル活用などを積極的に行っているんです。競技の中だけでなく、外の人にも発信していくことは日本ももっとやっていく必要があるように思いますね。

実は選手の中にも日本のフットサルをもっとよくしたいと思っている人がたくさんいるんです。でも自分ができることはすごく限られているので、フットサルの外にいる人々に協力してもらわないとこの状況を変えていくのは難しいと思っています。

選手1人では本当に何一つできないんですよ。これは引退してからさらに痛感しています。僕が日本代表候補だったとか、Fリーガーだったとか、そんなことは、周りが思っているほど価値はないです。あったとしても業界の本当に狭い世界の中の話です。外の世界に出ていったら何にもなりません。

だから現役のうちから選手にはチームのエンブレムを取った時に一人の人間として何かできるのかを考え、練習以外の時間を有効に使うことを考えてもらいたいです。それももっと早い段階から、それこそ中学、高校のうちからやった方がいいと言うアスリートがもっと出てきてほしいです。そうすればもっと勉強や語学に対する捉え方も変わっていくんじゃないかと思います。僕なんかより影響力のある選手にそこを発信してもらいたいです。

僕らみたいにボールを蹴っているだけだと知ることができないものが世の中には間違いなく存在しています。だからそういう社会のことをアスリート向けに教えてくれるような場もできるといいですね。

-**最後に読者へメッセージをお願いします。**

僕は今、夢を持たないことにしています。今まで選手として夢を追い続けてきたのですが、叶っていない時はやはりネガティブな感情になって毎日苦しかったです。結果を出せていなければ焦りもありましたし、そのせいで試合前に気持ち悪くなったりもしました。…メンタルが弱いだけかもしれませんが。笑

もちろん、夢を持ち、夢に向かって生きる事で成長できた部分もたくさんありますし、夢を持つことは素晴らしい事です。ただ、僕が言いたいのは、夢がない事をネガティブに捉える必要はないという事。

今、僕は夢を持たないことで楽しめている部分があるんです。だから逆に今は特に何かを決めずに、今やれることを一生懸命やりたいです。子供にも別に大きな夢を持てと言うつもりはないです。

例えば一輪車に乗れるようになりたいとか、そういう自分がやりたいと思うことを夢と呼ぶことだってできるんです。小さい目標をクリアしていくに連れて、絶対成し遂げたい夢というのが出てくるかもしれないので、それを1つずつ子供達にはチャレンジしていってほしいですね。

現在、片山氏が代表を務めるウノワールドスポーツでは、かつてネイマール、メッシなどの世界トップ選手も出場した、世界最大の国際ジュニアサッカー大会「MIC FOOTBALL CUP」へ参加する日本選抜メンバーのセレクション募集を行っています!

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