
デスマッチレスラー・竹田誠志の生き様。「オレの死闘を見よ!」
なぜ痛い思いをし、体中傷だらけになりながらも戦うのか。後編ではその理由や日常生活における苦労を中心に、デスマッチレスラーのリアルに迫る。
デスマッチを続ける理由とその苦労
-そんなに危険な経験をしてもなお、竹田さんをデスマッチへと駆り立てる何かがあるということですね。
他の人には味わえない優越感があります。やられて痛がっている自分を見て、お客さんが騒いでいるとテンションが上がります。引いているのが分かるんです(笑)でも絶対彼らにはできないことですから。常人にはできないことをやっているという自負があります。
あと、実はデスマッチは結構頭を使うんです。ただ殴ったり、蹴ったりしているだけではなく、新しいアイディアを考えてアイテムの創作もします。自分でアイテムを作ってこそ、デスマッチファイターであると思います。
-逆にやっていて苦労したことを教えてください。
日常生活は苦労することが多いです。傷だらけのこの体はデスマッチファイターとしては箔が付きますが、一般社会に出たらただのおかしな人ですから。少しでも皮膚を切れにくくするために試合前には一応クリームを塗る人が多いんですけどね。あとはだいたいみんな絆創膏は持ち歩いています。
基本的に僕は体を露出しないようにしていますが、それでもすれ違いざまに見られたり、電車の中でお年寄りに席を譲ったら断られたりはします(笑)
凶器を持参するので、空港ではよく止められますね。後輩で元警察官の選手がいて、パフォーマンスでおもちゃの拳銃を使うのですが、荷物検査で引っかかります。税関でもこんな見た目なのでよく止められます。僕の先輩に沼澤さん(沼澤邪気選手・大日本プロレス所属)という、スキンヘッドで眉毛がなく、額がこぶみたいになっていて、歯がない人がいます。その人と一緒にアメリカに行った時は、税関の係員が先に来た僕を見る前に後ろにいた沼澤さんを二度見していました。一通り僕への質問が終わった後、『あいつはお前の仲間か?』と聞かれたので、「イエス」と答えたら、『日本での殺人歴はあるか?』と言われました(笑)当然否定したものの、パスポートの偽造を疑われたりして、結局30分くらい足止めされました。
次から沼澤さんと海外に行く時は笑顔で税関に行き、わざわざ「タナカ(ヤンキース・田中将大投手)、観に来た!」と怪しくないアピールをするようにしましたね(笑)
あと、僕らは普通の人なら痛いことを痛みとして感じなくなるというのはあります。去年の夏、夜に防波堤の近くでバーベキューをしていたところ、僕は眠くなって、近くで寝てしまいました。しばらくして友達が暗闇の中から自分を見つけた瞬間、寝返りを打った僕は防波堤の上から6m下に落ちたんです。もう肩はズタズタに切れていたのですが、「全然大丈夫だよ」と言って普通にその後も飲んでました(笑)
夏に海に行き、日焼けするために上半身裸で歩いていると、みんな僕を避けていきますね。この前なんか海の家でシャワーを浴びていたら、いかつい見た目の人がずっと僕のことを見ていて、突然『兄ちゃん、どこと抗争したの?』と話しかけられました(笑)
他には血が滲むので白いTシャツは着ることができません。だからTシャツや家のベッドのシーツは基本的に黒です。試合の次の日は朝起きると血と膿でTシャツと皮膚がくっついて、滲んでしまうんですよね。僕はそのために汚れてもいい専用のTシャツを別に用意しています。
デスマッチをやった後に飲みに行くこともたまにありますが、この前肩を切った後に飲みに行ったら、途中でそこから血が噴き出てきてしまったことがありました。店中のおしぼりを借りて止血したのですが、ガールズバーだったので、もう女の子達はドン引きです(笑)
僕らのようなインディと呼ばれるような団体の試合に出るような選手は基本的に車ではなく、電車移動なんです。ある日指を切ってしまって、止血するために血の付いたタオルを傷口に巻いたまま電車に乗ったら、周りからすごく冷たい目で見られました。だから一般社会に溶け込めないんですよね。女性受けも悪いですから、彼女もできません…。
-気軽に試合を観に来てほしいともなかなか言えなさそうです。
女友達にはもし彼女だったら年中心配で気が狂うと言われました(笑)服に付いていたり、しばらくして体から出てきたりしたガラスや蛍光灯の破片が家の床に落ちていたりするので、僕と同居したり、結婚する人は大変ですね。
なので、体から出てくる破片を採取するのが僕の趣味です(笑)今、ビンにその破片を貯めていっています。
-体の中に長い間異物が入っているのは危ないですよね。
昨年の3月の試合後、痛いまま腕を1週間放置していたらどんどん腫れ、熱が39度ほど出てきてしまいました。でもそのまま飲みに行っていたんです。ただ、その日はアルコール度数が軽めのお酒しか飲めず、やはり体調がおかしかったので帰りに救急病院に寄ることにしました。レントゲンを撮ったところ、骨の近くに大きな蛍光灯の破片が入っていて、それが炎症を起こして腫れていたんです。結局初めて全身麻酔をかけ、手術することになりました。背中に大きなこぶができたこともあって、こちらもレントゲンを撮ったらガラスの破片が10個ほどあって出すことになりました。どうやらこういうケースは珍しいらしく、手術になると周りに医者が集まってきます(笑)
-治療費は出してもらえるんですか?
試合中に怪我した場合には出してもらえますが、後日病院に行く場合は自腹ですね。