最近聞かなくなったゴルフ場の農薬問題、今どうなってる?

ことゴルフ場においては、農薬散布が問題視されたのは過去の話になりつつある(撮影:GettyImages)

昭和の終わりの頃、バブル期に向かう中でゴルフコースの新設ブームが起きました。ほぼ同時に、ゴルフコースは、環境破壊をして農薬を撒き散らしている最悪な施設だ、と糾弾された過去がありました。理由は様々でしたが、いくつかのメディアがネガティプキャンペーンを行った結果でもあります。これによってゴルフをしない人たちにとって、ゴルフ=悪、というイメージが作られたわけです。

1990年(平成2年)に、厚生省(当時、以後同様)から水道水の暫定目標値が、また、環境庁からゴルフ場農薬の暫定指導指針が通知されました。この水質の基準を達成するため、ゴルフ場農薬使用の適正化についての通達が農林水産省から出されました。

つまり、ゴルフコースの下流でも水を飲み水にできるような基準ができて、どうやれば、それが可能かも具体的に示されたのです。これによって、ゴルフ場の農薬問題の騒ぎは一気に収束していきます。

そもそも、ゴルフコースの芝生の多くは、高麗芝と野芝。グリーンに使うベント芝はムギ科ですが、高麗芝と野芝はイネ科なのです。イネ科ですので、使用する農薬の多くが近所の田んぼでも使うもので、使用量も田んぼよりも少なかったのです。

周囲との協調性を高めるために、地元のJAなどを通して農薬を購入することで、使用量が明確になり、現在では、むしろ、畑や田んぼよりも低農薬なことが証明されています。何よりも、コーススタッフの多くは、地元の人。雇用を生み出しているので、当時から、地元はゴルフコース反対運動には加わっていないと聞きました。

更に、平成になって自然林や山林の研究が進むと、ゴルフコースが森や山林に良い影響を与えていることがわかったのです。森や山林は、人が手を加えないと衰退してしまうもの。枝打ちと間伐で日光が当たり、風通しを良くすることで、木々の生長は促されます。環境が良くなったことで、自然に野生動物が増えるというわけです。これは昔から続く里山の仕組みそのものでした。

現在では、ゴルフコースが生む里山効果は、環境破壊ではなく、環境保護に役立っているというのが、専門家たちの一致した意見になっています。

令和のいま、ゴルフコースでは新しい環境問題に悩まされています。
環境が良くなりすぎたことで、イノシシや鹿、猿などが増え、ゴルフコースが荒らされるだけではなく、近隣の農産物にも被害が出てしまっているのです。

ゴルフの面白さは、なかなか思い通りに行かないこと。プレーだけではなく、コースの外にも、それは及んでいるのです。

(取材/文・篠原嗣典)

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