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「フットサルを愛しているからこそ、この競技を盛り上げたい」。あしざるFCの現役引退を懸けた“無謀な挑戦”の舞台裏

2023年3月31日までにYouTubeのチャンネル登録者数が10万人を突破できなければ現役を引退する──。

水田伸明(のぶ)
佐々木諒(ダンガンくん)
鈴木雄大(ゆうた)
小島翼(つばさ)
宮原勇哉(みや)

今年4月、広島エフ・ドゥに所属する5人は「あしざるFC」を結成し、壮大なチャレンジを始めた。しかし彼らの挑戦には「軽々しく引退を懸けるなよ」「絶対無理に決まってる」「現実を見ろ」と、多くの批判がつきまとった。

当然、引退するつもりは微塵もない。5人は同じ家で寝食を共にし、必死で取り組んだ。だが、その道のりは険しく、数字は伸び悩んだ。

「このままでは本当に引退になるかもしれない……」

リーダー・のぶは、弱気になることが何度もあったが、挫けそうになるたびに仲間の存在に支えられ、立ち上がっては前に進んでいった。

そうやって動画を作り続け、検証を繰り返していると、“ある傾向”に気がつく。それ以降、登録者数がぐんぐん伸びていった。そして8月26日の深夜、想定よりもかなり早いタイミングで“その瞬間”は訪れた。

10万人を突破した瞬間、ライブ配信を行っていた5人は、あふれ出す感情を抑えることができず号泣した。2022年12月29日現在、彼らのチャンネル登録者数は17万人にも膨れ上がった。しかしまだ、足りない。志なかば。あしざるFCはなぜ、リスクを承知でチャレンジを始めたのか。そして、この先に、何を思い描いているのか。リーダー・のぶに、話を聞いた。

※インタビュー、取材は今季、4月と9月の2回にわたって実施した

インタビュー=本田好伸
編集=舞野隼大

登録者数が爆増したワケ

──まずはYouTubeの登録者数10万人突破、おめでとうございます!

ありがとうございます。思ったより早く達成できたので、10万人を突破する直前は「そんな感動しないでしょ」と思っていました。でも、いざ「10万」という数字を見た時に、「達成できなければ引退」と宣言していた呪縛のようなものから解き放たれて、シンプルにうれしくて涙を流してしまいました。

──「10万人突破ライブ」の最後は、『24時間テレビ』のマラソンを見ているような感覚でした。

ははは(笑)。

■あしざるFC 10万人突破ライブ

──登録者数が10万人になる前と後で、身の回りに変化はありましたか?

街を歩いている時や遠征先のサービスエリア、温泉でも声をよくかけられるようになりました。企画で「知名度調査」をやったことがあるんですけど、あしざるFCのユニフォームを着て広島で一番の街を歩いた時はいつもより話しかけられましたね。

──認知を高めるというのは目標の一つだった思います。映像という手法は、自分たちにマッチしている感覚だった?

そうですね。今はSNSの時代ですし、僕は小さい頃からクラスの中で一番前に出たいようなタイプだったので。メンバー全員がそういうタイプではないのですが、自分がやりたいことと「フットサル界を盛り上げたい!」という気持ちがマッチしている場所がYouTubeやTikTokでした。

──登録者数が一気に伸びた時期があったと思うのですが、何がきっかけだったのでしょうか?

TikTokですね。それも、ただやっていたわけではなく、「僕たちは現役引退を懸けて、YouTubeの登録者数10万人を目指しています。だからチャンネル登録お願いします!」と、言葉にしたからです。伸びるコンテンツを作ったうえで、そういったコメントを盛り込んだことが一番の要因だったと思います。

──なぜTikTokを選んだのでしょうか?

もうすぐ日本でも収益化が実装されるので、クリエイターの数が多くなって、コンテンツの質はより高くなっていきます。TikTokの質と量が高くなるだろうと思っていたので、YouTubeの横動画と同じか、それ以上に力を入れました。

──横動画と縦動画(TikTokやYouTubeショート)では、内容にどんな違いがあるのでしょうか?

尺の短い縦動画は僕たちを知らない層に届かせるイメージで、流れのいい動画を作っています。横動画に関しては、僕たちのファンやライトな層に向けて僕たちのキャラを知って楽しんでもらえるような内容にしています。

──タイトルでどんなワードを使うか、どんな動画の構成にするかといったことも意識している?

そうですね。特に動画の構成は大事で、縦動画は「1秒も飽きさせない」をコンセプトにやっています。2秒ごとに、視聴者が「動画を見たい」という理由を言語化しています。

──「1秒も飽きさせない」ですか。

ただ垂れ流しで「見てくれるだろう」じゃなくて、「2秒後にこういう発言があるから2秒後は絶対見るよね」「次の2秒後には、こういう展開がありそうだから見るよね」といったように、2秒ごとで切り取って考えるということをやっています。

メンバーの人生は自分の人生の一部

──動画の内容や見せ方については、メンバーのみんなで戦略会議をして考えているのでしょうか?

担当を分けていて、戦略系は基本的に自分が考えています。「こういうコメントが来ているから、次の企画はこれに寄せて考えてみよう」と言ったら、縦動画を担当しているりょうくん(佐々木諒)は、僕が思うような動画を考えてきてくれるんです。ゼロイチを僕が考えて、みんながそこに肉付けしていくというやり方ですね。役割がはっきりしていて、みんなが頑張っている分、自分は戦略をちゃんと考えなければいけません。

──みんなで同じ作業を分担するのではなく、会社の部署やフットサルのポジションのようにそれぞれが別々のことをされているんですね。

「その人のいいところを生かせられるのは何だろう?」ということをベースに、それぞれが違う仕事をしています。例えば、翼くんは元から画像編集がうまかったので、「この仕事を任せることでセンスがより磨かれていくんじゃないかな」というように、得意なことに合わせた作業をお願いするようになりました。

──最初からそうしたやり方だったのか、それともやりながらその方法に行き着いたのか、どちらでしょう?

やりながらですね。最初、横動画の編集を5人でやっていて、僕はそれと同時に戦略も考えていました。でもある時、みんなが「のぶくんは戦略を考えることに集中させたほうがいいんじゃないか」と言ってくれて、今の形態になっています。

──適材適所でいいメンバーが集まっているように感じるのですが、のぶさんにとってメンバーのみなさんはどんな存在ですか?

「家族」ですかね。この挑戦を始めた頃は、うまくいかず苦しくて、「このままじゃ本当に引退かもしれない。ホームで試合ができるのはあと数試合になる可能性がある」と話すくらい、追い込まれていました。だけど夜、みんなの部屋に電気が点いていて、眠気でひどい顔になりながら編集作業をしている仲間を見た時に「リーダーである以上、もっともっと俺が頑張っている姿を見せなあかんな。自分の人生の一部だから、彼らの人生が成功するように自分は責任を持ってやらないと」って。

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