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なぜ全国20道府県から地方大学に選手が集まるのか?北陸大学が見せる大学卓球部の1つの在り方

関東や関西、東海の大学卓球部が強さを見せる中、“北信越地方の雄”として、近年存在感を放っているのが北陸大学だ。地方からでも全国上位を狙い、2022年のインカレでは創部初のベスト16、2023年のインカレでは2-3で敗れたものの関東1部校を追いつめた。

写真:小田尚斗(北陸大)/撮影:ラリーズ編集部
写真:日本体育大学戦で勝利をあげた小田尚斗(北陸大4年・富田高校出身)/撮影:ラリーズ編集部

北陸大学卓球部の特徴の1つが、全国20道府県の出身者、韓国籍と中国籍の学生も在籍している点だ。なぜ流出しがちな地方の大学に全国から選手が集まるのか。

そこには北陸大学ならではの取り組みがあった。

写真:金光将希(北陸大3年・関西高校出身)/撮影:ラリーズ編集部
写真:スペインリーグにも参戦した金光将希(北陸大3年・関西高校出身)/撮影:ラリーズ編集部

当初は学業をおろそかにする学生も多かった

「最初はとにかく学生を獲得することを意識するあまり、学部のアドミッションポリシーもあまり意識せず、がむしゃらに勧誘していた」と反省の弁を述べるのは就任15年目の木村信太監督だ。

写真:ミーティングで話す木村信太監督(北陸大)/撮影:ラリーズ編集部
写真:ミーティングで話す木村信太監督(北陸大)/撮影:ラリーズ編集部

「勧誘されたから入学した」というような受け身の学生が多く、そのような学生は学業への意識も低かった。

北陸大学には4学部6学科あるにも関わらず、「今後自分自身がどんな知識を身につけて、どういった業界で働くのかといった目的やビジョンが全くない状態の学生もいました。その状態で履修するので、簡単に単位を落としたり、理解度がかなり低かったりという状況でした」と振り返る。

その時代は卓球の方も勝ち切れず、周囲からも応援されにくい状況が続いていたという。

写真:現在は国体代表になる選手も出てきている(写真は熊本県代表になった3年の加藤遼・慶誠高校出身)/撮影:ラリーズ編集部
写真:現在は国体代表になる選手も出てきている(写真は熊本県代表になった3年の加藤遼・慶誠高校出身)/撮影:ラリーズ編集部

「履修登録単位取得計画書」を作成

「このままでは駄目だ。競技成績を上げる前に、学業への意識を変えてみよう」。木村監督はまず卓球面ではなく、学生たちの学業面にアプローチした。

写真:現在の北陸大学のメンバー/撮影:ラリーズ編集部
写真:インカレ2023を戦った北陸大学のメンバー/撮影:ラリーズ編集部

新型コロナウイルスが流行した2020年度から、「履修登録単位取得計画書」を半期ごとに作成し、提出することを部員全員へ義務付けた。

前の期のGPA、出席率、履修科目数および取得単位数、達成度および自己評価を記載し、次の期の履修科目名、単位数、履修登録のポイントを記載するものだ。卒業後に目指す進路なども記載させ、最後に木村監督が自分の言葉で学生へのコメントを記載し、フィードバック面談を行う。

写真:経済経営学部2年次生が作成した履修登録単位取得計画書/提供:北陸大学
写真:経済経営学部2年次生が作成した履修登録単位取得計画書/提供:北陸大学

主将の高村勇気(北陸大3年・富山商業高校出身)は「履修登録単位取得計画書を作成することで学期ごとに振り返りを行え、次学期の目標や自分を成長させるためにどのようなことが必要か考えられるようになりました。フィードバックを得て学業成績が安定することで、競技成績向上にもつながっていると感じています」と競技面にも好影響があると語る。

写真:主将の高村勇気(北陸大・写真左から3番目)/撮影:ラリーズ編集部
写真:主将の高村勇気(北陸大・写真左から3番目)/撮影:ラリーズ編集部

「また、北陸大学卓球部では、学業においても各学年で情報共有を徹底し、課題の出し忘れや出席率低下を防いでいます。競技力向上だけでなく、社会人基礎力を高める様々な取り組みを行っているので、人として成長できる環境が非常に整っていると感じています」。

この取り組みは学生への学習支援として、指導者及び大学関係者へUNIVAS(大学スポーツ協会)を通して事例報告もされている。

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