アジア得点王は現役慶應生!日本女子フットサル界のホープに迫る

スポーツ界にも社会全体にも貢献できるような人材に

-では、吉林さんが思うフットサルの魅力は。

それは…ありすぎて。サッカーをやっている時は若かったから分からかったですけど、今はフットサルをやっていて生まれる人との繋がりが楽しいんです。選手もそうですし、サポーターも。あとは全然知らなくてもフットサルを通じて知り合える人がたくさんいます。それが楽しくて嬉しいですね。

-日本は文武両道の選手が少ないと思います。ただ、吉林選手はしっかり勉強もされてきています。そうなったのは親御さんの影響なのか、それとも自発的になのでしょうか。

勉強しろと言われたことは今まで、一言も言われたことはないです。

-それこそ(※)SFCというのは、スポーツをずっとやっていたけど怪我でその道が終わってしまって、起業しようみたいな人が行ったりもすると思います。起業志向の人が多いと思うのですが、SFCを選んだ理由はどういうものだったのでしょうか。

将来を考えていろいろな大学を調べていた中で、どこも似たり寄ったりの学校が多いなと思ったんです。そこで自分は何をやりたいんだろうと考えたんです。元々私自身が弁護士だったおじいちゃんに憧れていて、自分もなりたいなと思ったことはあります。ただ、普通の弁護士にはなりたくないなと。そこで色々と調べていく中で知ったのがSFCで、法律やスポーツなど色々なものを掛けあわせて勉強できる環境がそこにはあるという風に感じました。変わった人がたくさん集まる大学だということも聞いて、面白そうだなと思ったんです。

※SFC:慶應義塾大学湘南藤沢キャンパスの通称。吉林さんが通う総合政策学部もそこにある。

-そこからの勉強は大変じゃなかったでしょうか?

そうですね。ちんぷんかんぷんでした。一応高校時代に勉強はしていたのですが、SFCに入ったのはAO入試です。学校の成績をはじめ、色々と組み合わせた評価で、ということですね。

試験は面接と、小論文でした。志望理由書を2000字くらい書かなければいけなくて。それが小論文の代わりになるという感じです。

-ちなみにその小論文では何を書いたのでしょうか。

その時は日本には優れた選手が全国各地にいるのに、それを拾い出すネットワークができていないということをテーマに書きました。そういう選手のネットワークを自ら作っていきたい、という内容ですね。でも、あまり実現ができていないなと(笑)

-サッカーとフットサルを両方やってきた中で、今までで1番嬉しかった瞬間と辛かった瞬間を教えてください。

嬉しかった瞬間は日本で代表戦ができたことです。2013年に、最初に代々木体育館でやった時ですね。日本の選抜チームと女子日本代表が国内で初めて対戦した試合でした。外国で日本代表のユニフォームを着てプレーするのと、国内でそれを着てプレーするのではやっぱり違うなと思いました。

-日本国内で代表のユニフォームを着られたというのが良かったと。 いろいろな人が観てくれている中でのプレー、ということもありますもんね。

そうですね。親も1番嬉しく思っていたとは思います。サッカーをやめたときに最もショックを受けていたのは親だったので。頑張ればなでしこも目指せない位置ではないのに『あなた、サッカーしかしてこなかったのに辞めるの?』と。止められはしなかったけど、そういう風に思っていたというのは後から聞かされました。

-逆に、辛かったことや大変だったことはありますか?

肉体的に辛かったことはたくさんあります。メニーナのときの走りは大変でした。いちばん辛かったのは、終わりの見えないフィジカルメニューですね。それと、グラウンドの端から校歌を歌わされたときは結構キツかったです。すごい体育会系なんですよ。それまでエリート扱いされていたというのもあると思うのですが、声が出ていないと言われて、全員がグラウンドの端っこに並ばせられて校歌を歌わされました。もちろんクラブチームだから全員、校歌が違うので、それもあって印象深いです(笑)

あとは、スペインにいたときはキツかったですね。言葉はある程度話せるようになるけど、言い返せるまでの能力はなかったので。外国は自分の意見を発信して初めて、周りがようやく認めてくれるというところがありました。例えばミーティングとか試合中の話し合いで、言っていることはなんとなくわかるのだけど、思っていることは言えないから、自分のプレーを上手く出せない。その辺りがうまくいかなかったので、大変でしたね。

-スペインで歯痒い思いをしたことによって、帰ってきてから変わった部分はありますか?

それまでもチームメイトとうまく付き合えなかったではないですけど、“ライバル”と思ってしまっていました。それは今でも変わらないのですが、距離を置いていたんです。必要最低限しか関わらない、と。でもスペインでチームメイトと学校で出来た友達しか周りにいない環境で、みんなに助けてもらいました。なので、今は日本に帰ってきて、スペインで色々な人に助けてもらった分、自分も周りの人を助けなければなと感じています。だから私も色々な選手に声をかけたり、チームプレーの面でも周りを引っ張っていかないといけないなと思いました。

-サッカーやフットサルのプレーの面では最後の質問なのですが、今の目標を教えて下さい。

今の1番の目標は、監督であるオスカー(眞境名オスカー)の言うフットサルが体現できる選手になりたいというのがあります。ブラジルのフットサルを教えてくれるのですが、基本的なことしか言いません。今はスペインを始め色々なスタイルのフットサルが入ってきていて、新しい動きも入ってきているのですが、それでもオスカーは基本的なことしか言わないんです。世界大会に行ったことで私がすごく感じたのは、どう考えてもブラジルが一番強いし、基本的なプレーをしている選手が1番うまいなと。なので、オスカーの言うことを信じて、基本的なことに忠実に。あとはずる賢く、という選手になりたいなと思っています。具体的な目標というと、近々アジア大会があるかもしれないという噂があるので、もし開催されるのであれば優勝と得点王を取りたいですし、あわよくばMVPを取りたいです。

-ありがとうございます。ここからはプライベートの質問を聞ければと思っているのですが、好きな漫画はありますか?

ファンタジスタですね。最初のシリーズで止まっています。30回くらいは読みましたね。めっちゃ好きですよ。

-スポーツをしていない時の過ごし方を教えて下さい。

外に出かけるのが好きです。買い物にも行くし、図書館にもよく行きます。読むこともそうですけど、本自体が好きです。周りにおじいちゃんしかいないのですが、今では週3くらいで図書館に行っています(笑)大学の課題が多かったりもするので、スポーツ系の文献を読んだりしますし、新書も読みますね。

吉林千景

-好きな異性のタイプは ?

友達とその話をするのですが、”わからないよね”という結論になります(笑)タイプとか言っていても、実際付き合ったらそれとは違うとか。でも、何か趣味を持っている人がいいですね。あとは、あえてフットサルをやっていない人のほうが良いかなとかも思います。自分とは違う分野の人の方が、良いかもしれません。『え、フットサルって何人でやるスポーツ?』くらいのレベルが良いかもです(笑)

-これからスポーツに打ち込みたいという若い人、吉林さんより下の世代の人に向けて一言頂ければと思います。

小学校、中学校に通っている子達だと思いますが、もしかしたらやりたいスポーツがあっても先が見えないとか、そういう気持ちが強いかもしれません。でも、将来的に自分がどういう風になりたいかを描いて、逆算してその人生プランを作っていくと、あまり後悔はしないかなと思います。私自身も自分が将来どうなりたいかを逆算して過ごすタイプなので。今だけを見るのではなくて、もうちょっと先のことを考えて行動できたら良いのではないでしょうか。

吉林千景

-吉林さん自身は将来、どうなりたいと思っていますか?

最終的には普通に子どもがほしいとかありますけど、その前に何かスポーツに関わる仕事はしたいです。ただ、がっつりスポーツ業界で働きたいわけではないです。“スポーツ×◯◯”という世界で働きたいなと思っています。でも今はがっつり関わっているので、その中で色々と学んで、将来は違う角度から切り込んでいって、スポーツ界にも社会全体にも貢献できるような人材になりたいなと思います。

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