最高の一瞬『第一人者_吉田沙保里&伊調馨(レスリング)』

レスリングはアテネ五輪のあった翌年の2005年から撮っています。雑誌の取材で浜口京子選手を撮影したのがきっかけでした。そこから世界選手権やオリンピックで選手たちを追いかけました。

今回は、ここまでのレスリング界を引っ張ってきた吉田沙保里選手と伊調馨選手の写真を紹介します。

吉田選手の1枚は、2012年のロンドン五輪で金メダルを取ったとき(五輪3連覇)。目線がばっちり来たので選びました。

もう1枚は、次の2016年リオデジャネイロ五輪の決勝で敗れたときのもの。優勝した相手選手との姿が対照的です。

吉田選手はテレビなどで出ているときの、そのまんまの雰囲気です。明るくて、元気で。レスリング界の広報的な役割を一身に背負っていました。でもすごく繊細な部分もあって、それを表に出さずに頑張ってきたんだなと思います。

世界のトップクラスで勝ち続けるのは、本当に大変です。正直のキャリアの中で出場しなくてもいい試合もあったと思うのですが、全力で勝ち続けたわけですから(世界選手権+五輪で16連覇、個人戦206連勝)。すごい選手だと思います。

伊調選手の写真は、2019年4月のアジア選手権のもの。2016年リオデジャネイロ五輪で女子選手では初の個人種目4連覇を達成してから、一度は選手生活から遠ざかった彼女が2年ぶりに戦線に復帰し、東京五輪を目指すために活動する過程での大会です。

写真からわかるとおり、伊調選手は精神状態が常に一定で冷静。それに世界選手権などで優勝してもほとんど喜びません。

スーパーストイックな人なんです。レスリングという競技自体がすごく好きで追究していますね。勉強熱心で男子の試合も目を輝かせていつも見ていました。技術的な話などを説明するのも上手なので、将来いい指導者になるのではと思います。

2人ともすごい選手なわけですが、性格や雰囲気は全然違っていて対照的です。ただそういうところも含めてお互いに認め合っているのもいいですね。

▼佐野美樹(さの・みき)

1977年、東京都生まれ。写真家いしだまことに師事後、スポーツフォトグラファー梁川剛のアシスタントを経てフリーに。サッカーやレスリングを中心としたスポーツだけでなく、人物ポートレートや料理など、広告やエディトリアルにて幅広い分野で活動している。仕事柄、国内外問わず出かけることが多いため、密かに旅の写真を撮りためている。

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