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「言葉を訳す仕事は全体の0.5%」阪神タイガースの元通訳が語る、スポーツビジネスの難しさとは

通訳から営業部へ

選手の通訳として入ったのですが、1年だけ営業部としても働かせてもらいました。当時はトレーナーから通訳として入って、思い切り現場の人間だったのですが、入団2年目に営業に配属された際にフロント、つまりビジネスサイドを初めて見ることができたんです。それはすごく刺激的でした。また、本当にタイミングが良かったんですけど、僕が営業に移った2003年は優勝した年で、1年を通じて色々あったんです。

同時にスポーツビジネスの難しさを感じた時期でもあります。例えばビジネス側としてはファンサービス、例えば営業部が握手会を企画して、現場サイドに持っていく。「この選手とこの選手を握手会で出したいです」と星野監督(当時)に伝えるんです。すると、「そんなことができるか!今はインフルエンザが流行っていて、握手をして移ったら3週間試合に出られない。そんな危険なことができるか」と言われる。

これはすごく単純な例なのですが、あちこちでこういったことが複雑に絡み合うんですよね。現場の目的は優勝というか、試合に勝つ事。フロントの目標はある程度“稼ぐ“というところがある。そこのさじ加減の難しさがスポーツビジネスにはあるなと。

また、これは日本特有だと思いますが、親会社の存在が良くも悪くも大きいんです。今は阪急阪神ホールディングスですけど、当時は阪神電鉄という電鉄会社。やはり、そこから出向で来られている方はどこを見て仕事をするか、どこから給与を得ているかというところになると、電鉄会社から給与を得ている訳で、決してタイガースから給与をもらっているわけではない。

そうなると、極端な話ですが、タイガースの試合に何試合入ろうが、何百万儲けようが関係ないんです。タイガースの活躍やタイガースの業績が自分の収入と直結していないわけです。

あとはビジネスの特性が全く違う。スポーツビジネスは”エンターテイメント性”が重要なんです。ただ、電鉄会社として最も重要なことは、“安全性”と“正確性”の2つ。この2つの哲学は真逆です。電鉄がエンターテイメントを本気でやろうとなると少し難しさが生まれます。DeNA、楽天、ソフトバンクあたりが球団経営をして上手く行っているのは、親会社がIT企業で、“イケイケドンドンで楽しいことをやろうぜ!”という風土があるから、親和性があるんです。

<後編へ続く>

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