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井本直歩子が難民支援で感じた、スポーツのチカラ。競泳選手からユニセフへ

子どもに、教育を取り戻す。それが私の役目。

私は現在、ギリシャで活動しています。国内には約9万人の難民がいて、そのうち3万5,000人が子どもです。シリア、アフガニスタン、イラクなどからエーゲ海をボートで渡ったり、トルコからの陸路でギリシャに辿り着きます。

子どもたちに、教育の機会を取り戻させるのが私の役割です。

ユニセフでは教育チーフとして、心のケアを含めた難民キャンプでの教室を展開しています。また、ギリシャ政府と手を組んで、子どもたちがギリシャの公立学校に入れるよう活動しています。

当然、ギリシャ語がわからない子ばかりです。通訳を入れるなど、先生が難民の子どもたちにギリシャ語をイチから教育できるよう、就学環境を支援する活動をしています。

大変なことは多いですが、辛いと思ったことは一度もないですね。危険なところにいても、怖くないです。今まで競泳をやってきて、たくさん苦しい思いをしてきたからだと思います。あとは、もともと上手くいかないことばかりだったから、かえって割り切れているのかなと。

私は、教育を与えることしかできません。子どもが路頭に迷ったり、両親に職がなかったりしても何もできません。教育だけを、ひたすらやり続けるしかないんです。

とはいえ、やればやるほど子どもたちに教育が与えられていくので、ポジティブに捉えています。

HEROs AWARD受賞が意味すること

2019年12月にHEROs AWARDを受賞できたこと、信じられない気持ちでいっぱいです。

16年くらい日本を離れていますし、あまり知られていない分野なので。賞をいただけたことで、社会から認められた気持ちになれました。

途上国支援をするにあたって、「貧しいから助けなきゃ」と思う人もいれば、私のように「自分がやらずして誰がやるんだ」という人もいます。それぞれ入口は違います。私のようにスポーツを通して、途上国に興味を持つこともあるかもしれません。

私のような元アスリートが行動することには、大きな意味があるのかなと。アスリートの中でもやりたいと思う人はたくさんいる一方、やり方が分からないという人も結構いて。そういう方に対しては、何かしら提案ができれば良いなと思っています。

今の仕事を、死ぬまで続けたい

海外のアスリートでは、例えばデイビッド・ベッカムさん(元サッカーイングランド代表)などはユニセフの親善大使として、積極的に途上国の子どもを支援していますね。

一方で、日本人のアスリートは自然災害に対する支援のイメージが強いです。どちらが良いという話ではないですが、プロスポーツ選手が増えてきたこともあって、そういった支援に力を入れる人は良く見るようになりました。

日本に帰った時には、自分の経験を伝えるために高校・大学で講演しています。若い人たちがどれだけ興味を持ってくれるかはわからないですが、一人でも多くの人が感化されてくれれば嬉しいです。

2020年東京五輪開催に向けて、多くの国との交流が増えています。南スーダンの選手たちは、紛争の影響で練習環境が整っていないので、大会の約8カ月前から群馬でキャンプを始めました。スーダンがどういう国か知ることができますし、こういう機会が東京五輪でたくさん生まれればと思います。

個人的には、今やっている仕事を死ぬまで続けたいです。教育がなければ、子どもたちは思考能力も育たず、知識を得る方法も、話し合いで解決する方法も分からない。結果として社会は発展せず、紛争は増えてしまいます。

できるだけ多くの子どもに、教育を届けたい。そして、教育を受けた子どもたちに、紛争のない平和な社会を作っていってほしいです。

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