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コロナ禍で新規スポンサーが3倍増。アルビレックス新潟を支えるデータの力

新型コロナウイルスの流行により、経済が大きなダメージを受けました。スポーツ界も同様です。一方、この転換期に新たなアイデアが生まれ、スポンサーの価値についての考えや施策がアップデートされたとも言えます。

明治安田生命J2リーグに所属するアルビレックス新潟はその一つです。2019年には5社だった新規スポンサー獲得数が、コロナ禍真っ只中の2020年に14社へと増加しました。その数字の裏側にはJ2降格に伴う方針変換と、とあるデータの存在がありました。

アルビレックス新潟 営業部部長の野崎翔太さんに、この苦境の中で成果を上げた背景について伺います。

転機となった1年での昇格失敗

ーまず、スポンサー獲得の際に意識していることや取り組みについて教えていただけますか?

野崎:私が入社したのは2018年なのですが、15年ぶりにJ2を戦う最初のシーズンでした。2003年のJ2優勝時から観客動員数は増え、2005年は4万人を超えていました。このときは「大勢のお客さんが集まるスタジアムで露出ができる」というスポンサーセールスにとっても、圧倒的な強みがありました。当時は営業の際に、「東京ドームのジャイアンツ戦の動員数より多い」と言っていたという話も聞いたことがあります。これは相当なインパクトですよね。

しかし、2018シーズンからJ2に降格し、更には1年での昇格に失敗しました。そこで考えたのが、オンザピッチから離れてオフザピッチで価値を作ることです。そして、新規営業の際に、3つのポイントを意識しようと。

ーその3つとは?

野崎:1つ目が地域貢献と社会貢献活動。「CSR活動、SDGsの取り組みを一緒にやりませんか?」 という提案をしています。新潟にはBtoBの企業さんが多く、BtoB企業は広告宣伝に予算をあまりかけていない部分があるので、いきなり年間600万〜800万という契約は難しい。ただ、昨今SDGsに関連する取り組みの重要性が謳われている中、何をしたらいいのか分からないという悩みを持つ企業さんも多い。そこのサポートをする形ですね。

我々は新潟という地域に根付いているクラブという自負がありますし、「新潟のために何かやりましょう」という訴えかけに賛同してくれる企業さんは多いです。

2つ目が採用のところ。BtoB企業の課題として挙げられる採用面をサポートしていくことです。

最後に、企業ブランディングです。近年はスタートアップ企業が新潟でも増えてきていますが、私たちはそこもターゲットにしています。企業の取り組みを、アルビレックスを通じて発信していただこうと。

ーそれぞれの事例についても教えてください。

野崎:2018年にオフィシャルクラブパートナー(現トレーニングウェアパートナー)になったクラフティさんは、社長が新潟県出身なんです。新潟の湯沢町に廃校になった神立小学校という学校があるのですが、現在は撮影スタジオとしてクラフティさんが運営されています。湯沢町の子どもたちのために何か活動をしたいということで、2018年からこのスタジオを活用したイベントを実施しています。1回目のイベントは共にクラフティさんからご協賛いただいている新潟アルビレックスBC(ルートインBCリーグ加盟)と一緒に、子ども向けのサッカー・野球教室を実施しました。サッカー教室と野球教室を同時に開催することは滅多にないので、子どもたちはとても喜んでいました。

採用については、システム精工さんの事例が挙げられます。長岡に拠点のあるBtoB企業なのですが、採用に力を入れるために認知度を高めたいと。そこで、元選手でアルビレックス新潟営業部に所属する野澤洋輔が会社訪問する様子を我々の公式HPやSNSで公開したり、SNSを通じた情報発信のサポートをしたりしました。後者については、システム精工さんのTwitterアカウントを作成していただき、サイン入りコラボグッズのプレゼントキャンペーンを一緒に行いました。また、オンライン面接などで選手からのメッセージ動画を出したり、クラブとコラボした投稿や企画によって認知度も高まったと思います。

このたび、アルビレックス新潟のオフィシャルクラブパートナーとなりました!
よろしくお願いします!!!

— システム精工株式会社《公式》 (@systemseiko) July 26, 2020

野崎:採用の点でいうと、パートナー企業限定の合同説明会を計画しています。サポーターの学生たちがそのままアルビを支援してくださる企業に入り、アルビを様々な角度からサポートするというストーリーを作りたいなと。

ブランディングでは健康食品を主に扱っている越後薬草さんが挙げられます。『まいキムチ』という商品はパートナーになった直後に2割ほど売上が伸びたと聞きました。SNSでサポーターがたくさんツイートしてくれて、購買に直結すると。越後薬草の塚田和志社長は新潟出身で32歳とお若いのですが、この世代は小さいころからアルビレックスが近くにあったので、この地域でアルビレックスがどういった存在で、どれほどの価値を持っているのかを知っているんです。

パートナーになれば、確実に商品が売れる

ー「スポンサー企業の商品を買う」というサポーターの行動特性はあると思うのですが、その事実は数字等で出ているものなのでしょうか?

野崎:そこも越後薬草さんの事例があります。パートナー締結を発表した翌日に「まいキムチが売り切れています」とTwitterで上げているサポーターの方がたくさんいらっしゃいました。実際に越後薬草さんが締結後にどれだけ売れたかという数字も出しています。

2021年9月にユニフォームパートナーに決まった代替肉を作っているNEXT MEATSさんにも同様の事が起こりました。パートナー契約締結をリリースした後、オンラインショップの商品が全て売り切れたんです。新潟県内の原信さんというスーパーでも販売しているのですが、そこでも完売。こういった現象は資料にまとめて新規提案の際に活用しています。

ー顧客満足度が高いのはどういったものでしょう??toC向けの製品を作っている企業に対して行うSNS施策でしょうか。

野崎:今はSNSが非常に大きいかなと。あとは、シンプルですけど選手の企業訪問ですね。元々は採用向けに2019年に初めて鎌ケ谷巧業さんと取り組んだのですが、非常に反響が大きかったです。

実際に採用の面は効果が出ているかはまだ分かりませんが、社員の方が非常に喜んでくれて、インナーマーケティングの効果があったと感じています。社員の方が喜んでくれると、経営者の方も非常に喜んでくれますよね。

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