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シャープな小技が光ったタイガー・ウッズ 「練習さえできれば、2024年は戦える」【舩越園子コラム】

タイガー・ウッズと初めてキャディを務めた娘のサム(撮影:GettyImages)

スター選手たちが親子で競い合うPNCチャンピオンシップは、12月16日から17日の2日間、米フロリダ州オーランドのリッツカールトンGCで開催され、20チーム、40名が参加した。

残念ながら天候には恵まれず、2日間とも小雨交じりとなったが、名プレーヤーとその家族から溢れ出した愛情が、冷たい雨を温和なムードに変えてくれていた。
 
見事、優勝したのは、66歳のベルンハルト・ランガー(ドイツ)と息子ジェイソンのペアだった。最終日を7連続バーディで発進したランガー父子は13アンダー、「59」をマークし、2位に2打差のトータル25アンダーで勝利。
 
ランガーは長男ステファンとのペアで2005年と2006年に2年連続優勝を飾り、ジェイソンとのペアでは2014年、2019年に続いて今回が3度目の優勝となった。
 
同大会通算5勝は、この20年間、レイモンド・フロイド父子(米国)が守り続けてきた最多優勝記録だったが、この記録についに並んだランガー父子は、喜びの笑顔を輝かせていた。2位にはデビッド・デュバル父子(米国)、3位にはビジェイ・シン父子(フィジー)が食い込んだ。
 
往年の女王アニカ・ソレンスタム(スウェーデン)は息子ウィルとともにプレーして11位タイとなり、「こうして親子で戦えることは素晴らしい」と感動の涙を流した。
 
スティーブ・ストリッカー(米国)は娘のイズィーとペアを組み、10位になったが、彼のバッグを担いでいたのは愛妻のニッキーで、もう1人の娘は応援団としてロープの外側を歩くなど、家族みんなでPNCチャンピオンシップを楽しんでいた。

最大のギャラリーを引き連れていたのは、言うまでもなくタイガー・ウッズ(米国)と14歳の長男チャーリーの父子ペアだった。今回は16歳の長女サムがキャディに初挑戦し、ウッズの傍らに寄り添っていた。
 
そして、4年連続出場となったチャーリーくんは、背丈も伸び、ゴルフのスキルも一層向上させた様子。
 
数週間前、ジュニアの大会でバッグを担いだ父親キャディの出来栄えを尋ねられたチャーリーくんは、「父はパットのラインをフックめに読む癖があり、そのせいで僕はパットを右に外すことが多かった。だから、父にグリーンを読んでもらうときは、フックめに読む彼の癖を差し引いて受け取らなきゃいけない」と答えるなど、父親譲りの絶妙なリップサービスでメディアを笑わせていた。
 
そして、最終日の5番パー5では、見事なチップイン・イーグルを決め、父親そっくりのガッツポーズで会場を沸かせるなど見せ場も作り、トータル19アンダー・5位タイで2日間36ホールを終えた。
 
父親ウッズは息子の頼もしいプレーぶりに目を細め、終始、優しい笑顔を浮かべていた。2週間前の「ヒーローワールドチャレンジ」で、4月のマスターズ以来の実戦復帰を果たしたウッズは「僕のゴルフはすっかり錆びついていたが、とりあえず錆を落とすことができた」と語ったが、今大会では小技の上手さが光り、ウッズのゴルフが「錆落とし」から「磨き上げ」の段階へ進んだことが、はっきりと見て取れた。
 
ウッズらしいゴルフ、ウッズならではのゴルフは日に日に戻りつつあり、「毎月1試合に出場する」と公言した2024年シーズンのウッズの活躍に期待が膨らんでくる。
 
2021年2月の交通事故で重傷を負い、今年4月に再手術を受けた右足は「もう大丈夫」と言えるのか? 来季は、かつてのような力強いゴルフで、勝利を追い求めることができるのか?
 
「練習さえ、思うように存分にできれば、僕は高いレベルで戦える」
 
そして、勝てる――そう確信したウッズの2024年が、すでに待ち遠しくなっている。
 
文・舩越園子(ゴルフジャーナリスト)

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