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「若手に刺激は受けない、見て楽しみます」 54歳・藤田寛之のエネルギーは頑張る“先輩”の姿勢

史上4人目の同一年度メジャー2冠を狙う藤田寛之(撮影:ALBA)

<日本プロゴルフシニア選手権 2日目◇6日◇サミットゴルフクラブ(茨城県)◇7023ヤード・パー72>

「ショットがなかなかうまくいかない。日々調整していますが…」。第2ラウンドを終えた今年の「日本シニアオープン」覇者・藤田寛之はボヤいた。言葉とは裏腹にスコアの方は4バーディ・ボギーなしの「68」。トータル5アンダーまで伸ばして、初日の23位タイから首位と3打差の5位タイに浮上。史上4人目の同一年メジャー2冠に向けて週末を迎える。

藤田の代名詞でもあるフェードボールが、ここ数年はしっくりこない。「ちょっとフックが出る。右に行ったり、左に行ったり、そういうズレがあります」。狙ったところに思ったようなボールが打てることが少ない。ティショットをラフに入れたり、パーオンを逃しても得意のショートゲームでしのぐ。ミドルパットを沈めてスコアメークするのが藤田の強さである。インから出たこの日も11番パー3で6メートル、15番パー4では下りのフックを沈めるなど、無傷で伸ばした。

昨季は年間2勝を挙げて賞金ランキング2位に入り、目標だった海外シニアメジャーに今季3試合出場。今年もここまで賞金ランキングは3位につけている。賞金ランキング5位以内に入って来年の海外挑戦が大きな目標だが、そのためにも、今大会で上位に入ってランキング上位を安泰にしたい。

今年6月に54歳となった藤田の“戦闘モード”はすっかり変わった。52歳の2021年までレギュラーツアーのシード選手として戦い、昨季は「生涯獲得賞金上位25位以内」の資格を行使してレギュラーにも多く足を踏み入れたが、終盤はシニアに重きを置いた。

レギュラーツアー通算18勝のうち12勝が40代。43歳のときには賞金王のタイトルも手にした。若手が台頭しても、50歳が近づいても、戦う姿勢は崩さなかった。「若手に刺激を受けて、負けないようにとやっていたのは52歳、53歳ぐらいまでかな~」。リレーに例えると、「走っていて前の走者についていけなくて、その瞬間、感じるじゃないですか」。全力疾走をしても、前を行く若手の背中が見えてこないという。

今年もレギュラーには6試合出場しているが、予選通過は2回で「中日クラウンズ」の26位タイが最高成績。賞金ランキング上位の中島啓太や金谷拓実とは30歳ほど年が離れている。刺激を受けるのは、それらの若手たちではなくなった。

今年のシニアツアー「ファンケルクラシック」でレギュラーツアー通算3勝の58歳・米山剛と同組でラウンドをした。「もともと飛ばし屋ですけど、一緒に回ったら40ヤードぐらい置いて行かれました」。自分より年上の選手がいつまでも飛距離を伸ばしている姿を見て興味津々。「どういうことをされているのか聞いたら、(ヘッドスピードの)計測器を置いてドライバーを打ったり、階段を上っているっていうんです」。シニアになると、一生懸命振っているつもりでも無意識にスピードが落ちていることもあるが、数字で可視化することで、振ることを忘れないという。

藤田もこっそり素振りや階段上りを取り入れるようになった。「全米プロシニア」で同組となった米シニア46勝の66歳、ベルンハルト・ランガー(ドイツ)から大きな刺激を受けた。「飛距離もそうですけど、ひたすら真っすぐ飛ばす。毎日ジムにいってフィジカルトレーニングを行っていると知りました。日本だと(高橋)勝成さんとか、すごい人がたくさんいます。そういう年上の人の頑張りはエネルギーになりますよ」。今はシニアの舞台で活躍する先輩の姿に刺激を受けている。

先週の「バンテリン東海クラシック」では、人生初のレギュラーツアーのテレビ解説も経験。同大会中の土曜日に行われたドラコンイベントでは、優勝した幡地隆寛は350ヤード越え。他の選手も320~330ヤードを越えるのが当たり前という姿も目の当たりにした。「異次元。すごいっすよね、本当に。若い人のマネはできなくなったので、見て楽しむ。すごいね、とか言って楽しむ。そんな感じの年齢になりました(笑)」。自然と笑いジワの数も増えた。

今週はメジャー競技とあって、シニアツアーでは数少ない予選カットのある4日間大会。「まず予選を通れて良かった。あと2日もありますね(笑)。自分のショットのコンディションもいろいろやりながら。このコースはショットがしっかり管理されていないとダメですから。あまり期待しないで。いつも期待していないけど…」。

ボヤキが多いのはレギュラー時代から変わらない。それでも勝ってきた。「日本シニアオープン」もショットが良くないと言いながら、タイトルを手中に収めた。数年前とは戦い方も変わった。今は世界の舞台を目指すための、シニアでのやり方がある。頑張る先輩がいる限り、藤田の挑戦に終わりはない。

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