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PGAツアーから見た“日本の未来” 日本のコースから松山英樹に続く選手は現れるのか

PGAツアーインターナショナル副社長のクリスチャン・ハーディー氏(左)と優勝したコリン・モリカワ(撮影:岩本芳弘)

日本開催4回目の米PGAツアー「ZOZOチャンピオンシップ」はコリン・モリカワ(米国)の圧勝劇で幕を閉じた。会場に訪れていたPGAツアーインターナショナル副社長のクリスチャン・ハーディー氏に日本の印象について聞いた。

ハーディー氏は、PGAツアーにおける海外事業全般の業務(スポンサーシップ、メディア、広告収益管理、ツアー管理等)を担当しており、1年間のなかで日本に年4回、ロンドンに年6~7回、中東に年3回と世界中を飛び回り、「3、4割くらい」海外で過ごす。多忙な中でも「PGAツアー選手のために、インターナショナルな事業をできることがすごく誇りに思う。アメリカにいるときはなるべく家族と時間を過ごすようにしています」と話す。

「日本が大好き」というハーディー氏だが、来日しても会議や打ち合わせに追われ、なかなか観光はできていない。「私の趣味はスキー。年に1、2回は家族とユタ州のパークシティにスキーに行っています。日本は海外でもパウダースノーが有名なので一度体験してみたい。富士山にも登ってみたいし、素晴らしいお寺がたくさんあるのでお寺を訪問してみたい」と、“日本で行きたいところリスト”はどんどん増えている。

■PGAツアーを日本で開催する意義

そんなハーディー氏に、PGAツアーを日本で開催する意義について聞いてみた。「日本はPGAツアーにとって非常に大切なマーケットです。ゴルフ市場でも日本は世界で2番目。PGAツアーには松山英樹というスターがいます。今後、PGAツアーで活躍する若い選手が現れるでしょうし、明るい未来があると思っています」。

実際、今大会では石川遼の4位タイをはじめとして、22歳の平田憲聖と21歳の久常涼が6位タイと、日本勢がトップ10に3人。松山が優勝し金谷拓実が7位タイに入った21年大会を超える日本勢の活躍だった。世界で通用していきそうな若手は着実に育ってきている。

■ハーディ氏から見た日本コースの印象

次に、世界中のコースを見てきたハーディー氏に、日本のコースの印象を聞いた。「まず、2つのグリーンがあるところ。アメリカにはありませんからね」。日本には四季があり気温の変化が大きいため、夏の暑さに強いコーライ芝と、冬の寒さに強いベント芝の2グリーンのあるゴルフ場が多い。一方を使っているときは、もう一方を休ませることができるため、管理がしやすく、一年を通して状態のいいグリーンでプレーできる。しかし、いまは芝の品種改良が進み、面積の大きい1グリーンのコースや、2ベントのコースも増える傾向に。ちなみにZOZOが行われたアコーディア・ゴルフ 習志野CCは2ベントグリーンとなっている。

そして、「フェアウェイが非常に狭く、両サイドにすごく綺麗な松の木が並んでいることころ、そこがすごく難易度を上げるのではないかなと思っています」とハーディー氏。広大な土地があるアメリカのコースは長くて広く、日本のコースはそれに比べれば短くて狭い。

長いほうが難易度は上がると思われがちだが「距離が短くても、やさしいとは限りません。このコースも難しいコースセッティングにできています」とハーディー氏は考えている。今年のZOZOでは、モリカワがトータル14アンダーで優勝したが、2位はトータル8アンダーと、総じて飛距離が出るPGAツアーの選手たちも、そこまでスコアは伸びなかった。

■日本のコースで戦う日本人選手たちはPGAツアーで通用する選手に育つのか

18年に小平智がPGAツアーで優勝しているが、松山以降、なかなかPGAツアーに定着する選手が現れていない。日本のコースでプレーしながらPGAツアーに通用する選手は育つのだろうか。「絶対に可能性はあると思います。以前からも、アマチュアがすごく伸びてきたりしていますし、日本で練習してトップ選手とプレーし続けていれば、将来PGAツアーで活躍できる選手は育つと思っています。松山英樹のような複数勝利を挙げているロールモデルもいますしね」。

世界No.1のアマチュアに贈られる『マーク・マコーマックメダル』を20年に金谷拓実が日本勢で初めて受賞。21、22年は2年連続で中島啓太が受賞している。もはや日本人が世界アマチュアランキング1位に立っても驚きはない。

2人はアマチュア時代に国内男子ツアーで優勝。プロ転向後もすぐに活躍し、今年の国内ツアーの賞金レースでは金谷がトップを走り、中島が僅差の2位につけている。ともに将来はPGAツアーを目指し、21年の「マスターズ」を含むツアー通算8勝を挙げている松山との交流もある。金谷は今年、アジアンツアーで初優勝し、世界への扉を開きつつある。ハーディー氏もまた「金谷や中島には注目している」と期待を寄せる。

それだけに国内ツアーから10人以上の選手が出場し、世界トップレベルの選手たちとプレーできるZOZOチャンピオンシップが、ハーディー氏の語る「明るい未来」へとつながる1つのきっかけとなっていきそうだ。(文・高木彩音)

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