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憧れの人に勝って流した涙「ずっと背中を追ってきた」 中島啓太が手にした特別なプロ初優勝

ついに頂点に立った中島啓太(左)。憧れの存在に勝ってつかんだ初Vだった。(撮影:米川昌俊)

<ASO飯塚チャレンジドゴルフトーナメント 最終日◇11日◇麻生飯塚ゴルフ倶楽部(福岡県)◇6809ヤード・パー72>

ずっと背中を追いかけてきた2学年上の先輩。その選手とプレーオフを戦い、競り勝った中島啓太は「うれしい。金谷(拓実)さんとバチバチに優勝争いをして、プレーオフで勝って、言葉では表せない。もっと優勝争いをしていたい気持ちもありました」と誇らしさを感じた。これがプロ転向後初優勝。だが、それ以上に意義深い“1勝”だった。

3日目を終え、3打差の2位。この結果、3週連続で金谷と最終日最終組でプレーすることになった。前日には「63」を出しながらも、その背中をとらえきれず、「9個伸ばして1個しか詰まらないような先輩です(笑)」と話していた高い壁だ。とにかく食らいつくこと。「最後まで流れがどっちにくるかわからなかったんですけど、金谷選手だったので、余計に力が入りました」と楽しみながらも、意識しないわけにはいかない。

1番パー5でイーグルの滑り出し。その後も16番までに5つのバーディを奪いながら、17番パー5で痛恨のボギーを叩いた。だが、最終18番パー4で残り145ヤードからのセカンドを4メートルにつけてのバーディで、トータル29アンダー。粘りのゴルフでプレーオフに持ち込んだ。「どちらかが勝って、どちらかが負ける。複雑な気持ちも抱えながら終盤はプレーをしていました」。ライバルという言葉だけではおさまらない関係だ。

プレーオフ2ホール目。最後30センチのウイニングパットを決める時は、高まる感情を抑えこむので精いっぱいだった。実際、勝利を迎えた瞬間、涙が止まらなくなった。そしてすぐに金谷と抱擁を交わす。「“すごく良かった”と言ってもらえて、うれしかったです」。どんな言葉よりも胸を熱くしてくれる祝福だった。

まだアマチュアだった2021年に「パナソニックオープン」を制し、翌年9月にプロ転向。一躍スター候補のひとりになったが、そこからは勝てない日々も過ごした。それでも「プロになってからは調子も良くなくて、同年代の選手が勝っているのを目の前で見ていた。でも焦る自分はいなかったし、自分のゴルフを続けていれば勝てると信じていました」という気持ちで試合に臨み続け、ようやく“初優勝”をつかみとることができた。

『金谷を超えられたと思うか?』という質問には、「自分が上だとはまったく思えないし、最後のアプローチもチップインしてくるという心構えでいました。ずっと金谷さんの背中を追ってきたし、今後海外に行くと思うので、同じ舞台でまた優勝争いができれば光栄です」と、これからも憧れの存在に変わりはない。ただ、もともと目標に設定している米国ツアー挑戦の気持ちについては、今は「まだシーズンを1年間戦ったことがないので、今季は日本の試合に出場してもっと優勝を狙いたいです」と封印。国内で経験を積む方針を明かした。

中島と金谷は3日目も同じ組でプレーした。そのラウンド後には、2人の間にあいさつや『ナイス』のかけ声以外の会話は一切なかったことを中島は明かしていた。だが、それは「別々の世界観にいて、お互いがいいプレーを目指してやっているのがすごく好き。その中でもスポーツマンシップはかなり高いものを持たれているので、優勝争いをしていて一番楽しいですね」 という思いが根底にあってのことだ。ナショナルチームで一緒にプレーするなど、常に目標に掲げてきた存在と、今後もしのぎを削り合っていくことになる。

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