【記者会見】1010人の歓声を糧に白星獲得!立川・藤田実桜「幸せな時間だった」

9月2日、アリーナ立川立飛にて日本女子Fリーグ第9節が行われ、立川アスレティックFCと流経大メニーナ龍ケ崎が対戦した。

立川にとって年に1度のホームゲームは、男女共同開催試合として行われ、今シーズンの女子Fリーグ最多動員数となる1010人が駆けつけた。

青に染まるスタンドからの応援が響くなか、3分、黒本里紗が先制点を奪うと、4分には藤田実桜のゴールが決まり幸先のいいスタートを切る。15分に失点を許したものの、藤田のハットトリックを含めゴールを量産。7-1で勝利を飾った。

試合を終え、小野直樹監督とキャプテンの藤田実桜が、記者会見に出席した。

我慢してきたことが、少しずつ形になっている

小野直樹監督|立川アスレティックFC

──試合を振り返って。

今年新しいことに取り組んでいるなか、とにかく点が取れずボールが奪えないことや、奪う一つ前のプレーでパスがずれることが課題でした。

神戸戦が終わったあとの3週間は、いかにゴールへ直結するプレーを増やすか、ハーフラインからゴール前に前進する局面をどうつくるかに注力しました。前節は結果が出ませんでしたが、みんな諦めずに前を向いて取り組んでくれたおかげで、今日はこうやってボールがたくさん生まれました。得点シーンも偶然ではなく、自分たちでデザインした形から生まれたゴールが多くありました。勝てばこれから先の自信につながる試合だと思って臨んだので、選手たちの進化に感謝したいです。

──今シーズン、新たに監督が就任して、どういうコンセプトでチームづくりを行っていますか?

昨年までは強力なピヴォがいたので、その選手を中心に3-1のシステムで展開していました。ただ今年は、3人いたピヴォのうちの2人が移籍や引退でチームを離れてしまい、今いる選手の構成だと、3-1を軸にすると難しいだろうと判断しました。そこでちょうど僕も新しくアスレにきたし、新しいことをやろうということでクワトロベースの戦術を選んでいます。

ただ、ご存知のとおり、クワトロってすごく難しいんですよね。3-1だとピヴォにボールをつければ前進できますが、ピヴォがいないぶん、どういった形で前進して、どうフィニッシュに結びつけるのかは、試合や練習を何回も繰り返さないと難しいです。それを承知のうえで、今新しいことに取り組んでいるという前提があります。

ピヴォは1人いるので、最初は3-1も4-0も両方やろうとしていましたが、週3回の練習で両方やってるとどっちつかずになってしまう。なので「今年はクワトロでやろう」と決めました。選手たちもうまくいかなくて、苛立つことやジレンマもあったと思いますが、一生懸命ついてきてくれています。我慢してきたことが今、少しずつ形になっていることを僕も選手も感じ始めているんじゃないかなと思います。

──中島詩織選手があれだけのフィジカルをもっているのであれば、3-1のピヴォに置いてもいいプレーができそうなイメージはありますが……。

私も同じことを思ってました。ただ、シーズンの初めに「ピヴォやってみる?」と聞いてみたら、本人があまり乗り気では無かったので(笑)。ただ彼女はスペインでずっとクワトロをやっていたので、みんなを引っ張ってくれていますし、ゲームの流れによっては今日の藤田の2点目のシーンのように、ピヴォの位置に入ってお手本のような得点機をつくってくれたりもします。

なかなか点が取れない話に戻っちゃうんですけど、相手のコートに入ったら一人がピヴォ役に入ってもいいとか、外から入って、真ん中でピヴォのように起点をつくってもいいという話はしていますが、あの場面は瞬間的に(藤田選手と中島選手の)2人が阿吽の呼吸で判断した、素晴らしいゴールでした。

──目指しているものに対して、成熟度はどのくらいですか?

よく何パーセントくらいですかと聞かれますが、難しいところです。クワトロをやるために、まずその4人がどうやってハーモニーを奏でて動くのか。しかも決まりきった動きじゃないので、口では簡単に言えるけど、相手がいるとそうはいかないですよね。

ただチームには、最初のパスと動きだしは、攻撃のスイッチとしてやり方をいくつか決めるけど、そこから先の展開は君たちのものだと話をしています。だから僕の練習では、選手たちが決断をしなきゃいけないトレーニングをなるべく心がけています。

チームの原則として、より前進していこうという話はしますが、選手たちが自分たちで見て、考えて判断できることを大事にしています。そうじゃないと選手たちは成長しないし、何より楽しくないと思います。先ほど点が入らないという話はしましたが、前進ができるようになってきたり、ライン間は使えるようになってきました。だからチームには「君らは正しい道を歩んでる。ただ、ゴールを奪うところはその先だ」というふうに話をしています。まだ道半ばですね。

──点が取れないことが課題としてある一方で、ここまで失点6と守備力の高さが数字に現れています。そこに対しての評価を教えてください。

今年に限ったことではなく、例年アスレは失点数が少ないチームです。その一つは素晴らしいGKがいるということ。もう一つは選手の個の能力の高さですね。特にさっき言った、走る力やボールを競り合う力、最後はスライディングしてでも失点を回避しようとする気持ちをもった選手が多いです。なので、守備を重点を置いたトレーニングは、ほとんどやっていません。攻撃のトレーニングの時に、あまりにもちょっとここは直してほしいなってとこは言いますけど、シーズンの最初の頃に原則的な話をしたくらいです。選手の基礎能力の高さに頼っているところが多いですね。

貪欲にゴールを狙った

藤田実桜|立川アスレティックFC

──試合を振り返って。

試合の内容はなかなかうまくリズムが作れない時間帯も多かったですが、年に1回しかないホームゲームで勝ち点3を取れたことはすごく良かったなと思います。

──これだけ多くのお客さんが入ったホームで、ハットトリックを決めて勝利に大きく貢献しました。改めて、今日のご自身のプレーを振り返って。

ゴールは毎試合狙ってはいるんですけど、今シーズンはシュートが少ないことを自分でも課題に感じていたので、今日は貪欲にゴールを狙っていきました。流れが悪い時間帯があったので、なんとか自分がいるセットや、自分のプレーでどうにかしたいという気持ちがありました。それを得点という形で示すことができました。

──代表に対する悔しさも、プレーに出た部分はありましたか?

自分のやるべきことは、選ばれても選ばれなくても変わらないので、悔しさというのは特になかったです。

──ハットトリックはいつ以来ですか?

いつしたかもちょっと覚えてないので、久しぶりだと思います。

──特に3点目の時間帯は、少し相手がペースを掴みはじめていたところで、流れを断ち切るミドルシュートを決めていました。あのシーンはどういう狙いをもってプレーしていましたか。

相手の守備一番てっぺんの選手が潰れていて、遠目からのシュートはチャンスがあるよねという話をしていたので、そこを狙っていました。

──ちなみに2点目については?

(中島)詩織さんはピヴォに入っても背負えるし、いいパスを落としてくれるだろうというイメージがありました。予想どおりすごくいい落としだったので、決めれてよかったです。

──このホームゲームの雰囲気については、選手としてどう感じていた?

なかなかホームでの開催は無いですし、この会場で青いユニフォームを着て、髪の毛まで青にして応援してくれる人たちの思いを直に感じることができました。すごく幸せな時間でした。

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