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アルトゥールさん、日本でまた会いましょう。日本人の心を携えた最高のフィクソが、僕らに見せてくれたもの|俺たちの全日本

俺たちの全日本|特集

W杯の最高のプレーが日本への恩返し

彼の印象はずっと変わらず、真面目で、プロフェッショナルな選手だった。

Fリーグで唯一無二のフィクソとして君臨してきたオリベイラ・アルトゥール。

初めて彼にインタビューをしたのは、名古屋オーシャンズへ移籍してきた2020シーズンの開幕前のことだった。

元ブラジル代表監督・ペセ氏の実子で、2016シーズンにシュライカー大阪の初優勝に貢献した選手がFリーグ最強チームに入ると知り、どんな相乗効果を生むのかとワクワクした気持ちを今でも覚えている。

その頃には、日本人に帰化する意志を抱いていた。なぜ、名古屋へ移籍したのか。なぜ、日本国籍の取得を目指すのか。通訳を介しながら様々な疑問をぶつけていると、インタビューの時間は気づけば1時間以上が経過していた。それでもアルトゥールは、質問の一つひとつに真摯に答えてくれた。

インタビュー前から抱いていた、真面目で、プロフェッショナルな印象は変わらなかった。むしろ、ピッチ外での言語の壁や文化の違いにも適応しようとする姿勢を知り、そのイメージはより強くなった。

アルトゥールは、帰化申請の準備が整うまでに“お試し”で受けた日本語のテストに二度落ちてしまっていたという。しかし手続きが完了して臨んだ“本番”のテストでは見事一発合格。申請から日本国籍取得まで1年はかかると言われていた工程を、2020年12月アルトゥールはわずか半年でクリアした。

晴れて日本人となった3カ月後の2021年3月、アルトゥールはブルーノ・ガルシア監督が率いる日本代表に初招集された。もし、平均的な取得期間の1年以上を費やしていたら、彼はその年の9月に開催されたワールドカップに出場できていなかったかもしれない。もしもアルトゥールがいなければ、日本はW杯でスペインと同組のグループを突破し、ラウンド16でブラジルと善戦したあの戦いはなかったかもしれない。

「日本では自分と自分の家族を温かく支えてもらいましたし、いろいろなことを学べたのですごく感謝しています。日の丸を背負ってプレーすることはその恩返しになる」。

その一心で、“もう一つの祖国”のためにピッチの外でも努力を怠らなかった。

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