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伊藤美誠,平野美宇,早田ひな

【卓球】五輪選考レース独走の早田ひなを平野美宇、伊藤美誠が追う “黄金世代”のパリ行きをかけたデッドヒートを検証

写真:伊藤美誠,平野美宇,早田ひな(提供:ITTF/Rallys)

パリ五輪行きをかけた女子シングルスの争いは中盤にかけて熾烈を極めており、わずか2人という狭き門を有力選手たちが争っている。そんななか、選考レースをリードするのが早田ひな(日本生命)、平野美宇(木下グループ)、伊藤美誠(スターツ)の3人。2000年生まれの“黄金世代”の中でも、五輪初出場を狙う早田が首位を独走し、五輪経験者の平野と伊藤が後を追うというハイレベルな戦いが繰り広げられている。黄金世代による3つ巴の様相を呈してきた戦いの行方を検証する。(文・井本佳孝)

初出場を目指すサウスポーがけん引

写真:早田ひな(提供:ITTF)
写真:早田ひな(提供:ITTF)

選考レースをここまでけん引してきたのが初の五輪の舞台をかけて戦う早田で、前回の東京五輪ではサポートメンバーに回った23歳はこの数年で目覚ましい活躍を見せてきた。今年の1月に行われた全日本選手権ではシングルス、女子ダブルス、混合ダブルスの三冠を達成。また、5月に南アフリカで行われた世界卓球では、準々決勝で王芸迪(中国)相手に激闘を披露。最終ゲームはマッチポイントを9本返しての「21-19」という互いにしのぎを削っての戦いを制し一気に存在感を高めた。

そんな早田は7月3日に発表された現在のパリ五輪選考ポイントでは497.5ポイントを稼ぎ、2位以下に圧倒的な差をつけて後続を引き離す。選考対象第1回目となった昨年の「LION CUP TOP32」を制すると、続く「Tリーグ NOJIMA CUP 2022」でもシングルス制覇。その後も全日本選手権や5月の「全農CUP平塚大会」も優勝するなど、大きな波もなく、上位に必ず顔を出す安定感抜群の戦いでここまでの選考レースをけん引してきた。

7月に控える第5回の選考会「全農CUP東京大会」以降も同様の戦いを続けていけば、パリ五輪選考1位の座は揺るがない。気をつけたいのがコンディション面で、国内外でタフな日程をこなす早田にとって、心身フレッシュな状態で来年のパリ五輪への戦いに挑めるか。また、メダル獲得が期待される早田にとっては選考会と同様に中国勢とのレベルの戦いで自分を高められるかもパリ五輪が迫っていく中ではカギを握ってくる。

平野が世界1位撃破の快挙

平野美宇,提供ITTF
写真:平野美宇(提供ITTF)

選考レースで早田が独走状態を築く中で、一番の焦点となってくるのが2位争い。ここに来て一気に調子を上げてきたのが平野で、初のシングルス出場を狙うなかで2位の座を死守している。6月に行われた「NOJIMA CUP 2023」では安定した戦いを見せて優勝。そして、「WTTコンテンダーザグレブ」では世界ランキング1位に君臨する“絶対女王”、孫穎莎(中国)を含む圧巻の中国勢3連勝でこの大会も制し、選考ポイントで15点が加算され、最新は312ポイントとなった。

平野との戦いに入っていきたいのがリオ五輪、東京五輪の2大会連続メダル獲得と実績面では黄金世代随一の伊藤(275.5ポイント)。今年に入って腰と臀部の不調を訴えるなどコンディションを崩していた伊藤は全日本選手権ではベスト16で敗退し、5月の「全農CUP平塚」でも2回戦で敗れた。パリ五輪争いでは7位まで順位を落とし、厳しい状況に追い込まれた。試合後の会見では思うようにいかないコンディションと結果を嘆く姿が見られた。

写真:早田ひな、伊藤美誠(提供:ITTF)
写真:早田ひな、伊藤美誠(提供:ITTF)

それでも、世界卓球ではシングルスでベスト8に入るなど復調の兆しを見せると、「NOJIMA CUP」の決勝ではフルゲームの末平野には敗れたものの、準決勝で戦った早田との“みまひな”対決に勝利。試合後は喜びの姿を見せるなど、しのぎを削ってきたライバルとの戦いに充実感をにじませた。直近の「WTTコンテンダーリュブリャナ」では準決勝まで進出し、陣夢(中国)に敗れた。ベスト4に終わったものの、大会を通した戦いでは切れのある動きが見られた。苦しい時を経て、状態は上がってきたとみていいだろう。

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