Jクラブの下部組織でも実践。椎名純代が語る目標設定の重要性

未知の世界、ラグビーチームの通訳に

ある日、スポーツマネジメント時代の伝で「ラグビートップリーグのクボタスピアーズが通訳を探しているけれど興味はないですか?」と声を掛けていただきました。興味があったので、チームの石川GMにお会いしたのですが、「ラグビーのことは分かりません。通訳もお手伝いをしたことはあるけれど、仕事としてやったことはないです」と正直にお伝えしました。それでも先方は受け入れてくれて、ラグビーの世界で働くことになります。

そこでは元オーストラリア代表でW杯優勝も経験しているトウタイ・ケフHCの通訳を2年、務めました。ケフは日本滞在歴が長いので日本語を話すことはしませんが、聞いて理解することはできますし、彼の英語もわかりやすかったですね。

それでも、私自身がラグビー用語は分からないし、さらにチーム独自のサインが色々ある中で、それを伝えるのは難しかったです。

基本的なサインやポジション名をやっと覚えたと思っても、外国人選手は出身国によっても違う言い方をします。本当に難しかったですね。なので、最初の練習は何も訳すことができませんでした。あまりにきつくて最初の頃はストレスでクラブハウスに近づくと過呼吸症候群のようになってしまうこともありました。選手たちのことも分からず、自分自身が緊張しすぎていた部分もあったと思いますが、信頼関係も築けてリラックスして話せるようになった3か月目くらいでその症状は治まりました。

ケフ体制が終わった後にHCとなったのが、南アフリカ出身ののフラン・ルディケです。彼がは就任前に来日してスタッフ全員と個人面談をしたのですが、その面談を訳しながら、考え方などが素晴らしい方だと感じ、残れるのであればこの人のもとでやってみたいなと感じました。幸い継続のオファーも頂くことができ、チームに残りました。

実はケフ時代から通訳のみでなく、ファシリテーターという肩書も持ち「目標設定」などのワークショップを行っていました。後任のルディケは、元々教師であり、スポーツ心理の知識も豊富なので、それをサポートできるような形でやれないかと、今は「通訳 兼 ライフスキルカウンセラー」として仕事をさせてもらっています。私自身、サッカー、ゴルフなどのスポーツ選手とも接してきているので、そういったバックグラウンドも活かされていると思います。

スポーツの環境は変わりつつある

私自身、ライフワークとしてブラインドサッカーのパンクしたボールを再利用する取り組みを行っています。思い出がいっぱい詰まっているランドセルも捨てずに、ミニランドセルにリメイクするとかあるじゃないですか。思い出のボールを違った形で保管することが出来ないかなと思ったことがきっかけで始めました。

ブラインドサッカーのパンクしたボールをもらい、社会福祉事務所で解体してもらっているのですが、社会福祉事務所で働く障がいを持つお子さんたちの中には、かつては部活でサッカーをやっていたという子が多くて、喜んでパンクしたボールを剥がしてくれるんです。その解体で出来たピースを再利用するのですが、ブラインドサッカーの会場で、来場したサッカー好きのお子さんたちに好きな色、好きなピースでキーホルダーを作ってもらうというワークショップを行っています。

これは5年ほど取り組んではいますが、開催も不定期なので、活動自体があまり広がっていません。今後もっと知られたら、来場したお子さんたちにはサッカーボールのキーホルダーを作って喜んで頂けるし、社会福祉事務所で働くお子さんたちへも賃金の提供ができるので、広めたいと思っています。

このように、様々な形でスポーツに携わっていますが、昔とはスポーツの環境が変わっていることもあって、以前は思いつかなかった理由で困っている人たちがいるんじゃないかなと思っています。時代、時代に応じてそういった人たちの悩みを私が解決するというよりは、解決するきっかけ作りの場や機会を提供できたらいいなと思っています。

パンクしたボールを再利用して作るキーホルダー

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