THINK SPORTS『名シーンの定義』

スポーツパブの店内で、いつものように同僚とグチ飲みをしていたら、隣の30代とおぼしき団体さんの会話が耳に入ってきた。

「タロウ! 食べかけのお皿置いて、席移動するなって」

「ほんとだよ。タロウ、いつもだな」

「まったくあれがサイドバックだったんだから、周りは大変だよ。上がったら戻ってこないんだから」

「えっ? でも俺の攻め上がりがなきゃ、あの決勝ゴールはないでしょ」

「まあ、たまたまね~(笑)」

「それでタロウのたまたまクロスに、いつものコウタがお得意の相手1人巻き込みでニアでつぶれて(笑)」

「あれは巻き込んだんじゃない。引っかけられたんだって! PKでしょ」

「PKだったら、コウタは外していたかもな……」

「メンタル弱いからね~」

「それでファーでジュンね。まさかのジュンね」

「それまで試合に出ていなかったのにさ~」

「シュートも危なかったよな。ギリギリ合わせた感じで」

「ちゃんと当たってないよね? スネだろ?」

「違うよ、インステップにビシッとね」

「なんで俺たち、毎回同じ話をするんだろうね(笑)」

店内のモニターは、先ほどのゴールシーンをリプレイしている。5分前にはちょっと興奮したものだが、ふと心によぎった。

「あれ? 俺にも高校時代の忘れられないシーンがあるじゃないか。観るだけがスポーツの楽しみ方じゃないよな。久しぶりに昔の仲間と会ってみるかな」

スポーツの名シーンとはプロの世界だけではない。皆さんの心に刻まれた思い出は、たとえ少人数だろうと「かけがえのない仲間」の間で語り継がれていく。

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