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「ボーナス」を「ビッグ・ボーナス」に変えたマキロイの勝利【舩越園子コラム】

最難関の18番でウイニングパットを沈めて、このアクション(撮影:GettyImages)

「ジェネシス・スコティッシュ・オープン」最終日は、天候悪化の予報を受け、スタート時間が大幅に繰り上げられたが、それでも強風と時折降る雨に翻弄されたゴルフは、まさに英国のリンクスゴルフそのものだった。

単独首位で最終日を迎えたのは北アイルランド出身の34歳、ローリー・マキロイ。しかし、前半で2つスコアを落としたマキロイは首位の座から陥落し、2位へ、3位へと後退。だが、それでもグッドショットのたびに垣間見せた自然な笑顔は、あたかも彼の勝利を予感させるスマイルのようだった。
 
ピンそばを捉えて鮮やかにバーディを奪った11番から弾みが付いた。12番は外したと思ったパーパットがカップに沈み、「あれは、ラッキーだった」。14番でもバーディを奪ったマキロイは波に乗り始めたが、DPワールドツアー(欧州ツアー)を主戦場とするスコットランド出身のロバート・マッキンタイアが地元ならではの知識と経験を生かして次々にスコアを伸ばし、通算14アンダー、単独首位で先にフィニッシュした。
 
追いかける立場のマキロイはマッキンタイアに1打差で上がり2ホールを迎え、「バーディを1つ奪ってプレーオフに持ち込めれば、ボーナスみたいなものだと思っていた」。
 
その謙虚な姿勢が、平穏な心と会心のゴルフをもたらしたのだろう。17番(パー3)ではピンそばを見事に捉えてバーディ。18番でも快打を放ってピン3メートルに付けると、これをしっかり沈めてバーディフィニッシュ。プレーオフに持ち込むどころか、マッキンタイアに1打差を付けて勝利をもぎ取り、「ボーナス」以上の「ビッグボーナス」を得て、満足と安堵の笑顔を輝かせた。
 
昨年10月の「ザ・CJカップinサウスカロライナ」に続く今季2勝目、通算24勝目となったが、北アイルランドで生まれ育ったというのに「僕はこれまで一度もスコットランドで勝利を挙げていない。この地で未勝利のままの18年はあまりにも長い」と語っていたマキロイにとって、この優勝はスコットランドにおける初めてのビクトリーとなった。
 
さらにマキロイは、「アイリッシュ・オープン」、「スコティッシュ・オープン」、「ジ・オープン(全英)」という「3つのオープン」をすべて制した初めての選手となり、「その記録のことは知らなかったけど、この地域の出身選手にとって、全オープン制覇はとても意義深い」と、さらなる笑顔で頷いた。
 
今年4月の「マスターズ」では、キャリア・グランドスラム達成が期待された中、予選落ちを喫し、悔しさとショックのあまり、エントリー済みだった翌週の「RBCヘリテージ」を急遽欠場して批判を浴びた。
 
だが、気持ちを切り替えて臨んだ5月の「全米プロ」では7位タイ、6月の全米オープンでは単独2位。なかなか優勝できなかったものの、全米プロ以降は出場5試合すべてでトップ10入りを果たし、復活ぶりをアピールしていた。
 
感情を表に出すタイプのマキロイは、ひどいミスをしたとき、予選落ちしたとき、あるいは惜敗を喫した際に、クラブを投げたり、着ていたシャツをびりびり引き裂いたりして激高してきたが、この日のマキロイは、リードを奪われても穏やかな表情でクラブを振っていたことが、何より印象的だった。
 
そもそも、最終日を単独首位でスタートしたのはマキロイだったというのに、最後には「プレーオフに持ち込めれば、ボーナスだ」と謙虚な心を抱き、要所要所で「幸運に助けられた」と感謝していた。そんな彼の平穏な心が意義深い勝利をもたらしたのだと思う。
 
次週は今季最後のメジャー大会、全英オープン。今年の舞台ロイヤル・リバプールは2014年大会でマキロイが勝利を挙げた場所だ。この優勝の余韻を感じながら、かつて勝利した思い出の地で開催されるジ・オープンを迎えるという流れも、きっとマキロイにとっては幸運なのではないかと思えてくる。
 
「この優勝は来週への大きな自信になった」
 
是非とも、その自信を9年ぶりのメジャー優勝につなげてほしい。
 
文/舩越園子(ゴルフジャーナリスト)

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