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ショーン・トゥーロンがまた独立。『Toulon Golf』で“美しい”パターに原点回帰。まさかのアイアンも!?

ショーンの輝かしき経歴とは?

今年、米国キャロウェイのGMの立場を辞したショーン・トゥーロン。彼の華々しいキャリアを振り返ると、ウィスコンシン大学を卒業したショーンは1982年に黎明期のテーラーメイドに入社してセールス業務に7年従事して退社。その後、90年代にカスタムフィッティングを標榜する『Zevo Golf』を設立した。
 
ここでショーン自ら、現代の可変スリーブに繋がる、湾曲したホーゼルで調整できるカスタムフィット用クラブの特許を取得するなど、時代の先を見据えたクラブを次々に市場投入。当時をショーンは「すごく好奇心が強くて、色んなことに興味を持っていました。若い時期に小さい会社で働くことによって、あらゆる面で会社の仕組みも勉強することもできたし、何よりゴルフが大好きでした」と振り返る。
 
その後「Zevo Golf」を売却したショーンは、99年に米国テーラーメイドのマーク・キングから誘われ、開発部門の上級副社長としてテーラーメイドに戻り、そこから黄金期を迎える。彼が在任中のテーラーメイドの売上高は2億7,000万ドルから2015年には18億ドル近くまで成長したが、牽引したのはもちろんメタルウッドだ。
 
TMの成功は「高速開発サイクル」

2000年に業界に先駆けて3機種を一気に発売した『R300』シリーズが世界的な大ヒット。2005年にはウェイト可変の『R7』シリーズが生まれ、2009年にはスリーブ可変の『R9』も大ヒットを遂げた。また、2011年には『R11』で白いヘッドを手掛けるなど、デザインにも先入観なく挑戦を続け、ことごとくヒットに結びつけたショーン。99年からのテーラーメイド時代の成功の秘訣はどこにあったのか。
 
「エンドレスの改良です。当時のゴルフメーカーは、他社もそれほど早く新作を開発する時代じゃなかったので、開発サイクルの早さが、上手くいった理由ではないでしょうか。私がいつも熱意と情熱を持ってやることの一つはゴルフ。もう一つはデザイン。この2つにパッションを注ぎ込んできました。デザインに関しては、建築やファッションなど、他業種からカッコいいモノの刺激を受け、インスピレーションが湧くこともあります。私は無類のカーマニアで142台も乗り換えてきましたが、その影響もかなりあります。

カッコいいモノに影響を受け、クラブのデザインに使えないか?ってね。機能的に優れたクラブは色々ありますが、デザインは大切。いろんな経験をした中で『これは流行るだろう』というのはある程度予測できます。ゴルフをプレーするのも好きだし、ゴルファーと一緒に過ごす時間も非常に楽しく、その経験から自分の商品を見直し、やはりカッコいいクラブを自分も選んできました。ゴルファーの心臓がバクバクするような、興奮するようなモノを作る信念をいつも大切にしています」
 
このように「早いスピードでどんどん開発するのが好き」なショーンが率いた革新的なメタルウッドは大きく成長。ところが、当時パターにはそれほど力を入れていなかったテーラーメイド。疑問を感じた彼は車からインスピレーションを得て、赤いフェースの『ROSSA MONZA』シリーズを手掛けるなど、テコ入れを図っており、その経験は2016年以降のキャリアにも繋がることになる。
 
息子とパターブランドを立ち上げ

2015年末にテーラーメイドに2度目の別れを告げ、ショーンは独立し、パターブランドを立ち上げることに。自身の好みの削り出しでハイソな世界観。ガレージからワンオフのイメージで生み出す『Toulon Garage』パターが生まれたきっかけは、彼の息子たちだった。
 
「3人息子がいて一人はまだ大学生でしたが、長男と次男からある日呼ばれて『お父さん、パターメーカーを作らない?』って。思いもよらない提案に、本当に涙が出るくらい感動しましたね。当然スコッティ・キャメロンも市場にありましたが、彼らもパター好きで、それとは違うパターに興味を持っていて、パターデザインする時が一番楽しそうでした。当時はそんなに削り出しの選択肢もなかったですしね。
 
始めて1年も経たないうちに、キャロウェイCEOのチップ・ブリューワーから『ウチでやらないか?』と、アプローチが来ました。我々は少数かつ高額な削り出しパターに取り組んでいましたが、当時のオデッセイは庶民的な価格というか、量産パターメーカーでトップの座に君臨していましたが、我々のような高級な削り出しパターはスコッティ・キャメロンに敵わない感じでもあったんです」

 『Odyssey Toulon』を成長させ『SB』も人気に

そのキャロウェイでは、GM(ゼネラルマネジャー)の役職に就いた。1000人を越えるエンジニアたちを束ねる地位だが、息子たちと『Toulon』ブランドの削り出しラインを整え、2018年に『オデッセイ トゥーロン』の初代作を成功させ、2022年発売の現行モデルも多くのツアープロたちが愛用し、わずかな期間で60勝以上の勝利を積み重ねている。
 
「大きい会社で楽しかったし、一緒に働いたチームも上司のチップも本当に最高の人たちでしたが、“マネジメントではなく自分が開発したい”というジレンマを感じた時に長男のトニーが【一緒に『スモールバッチ(少量生産)』をやってみよう】と。すると、すぐ人気が出て非常に購入者が多かったんです。『これをペースにするビジネスもアリかもしれない』と思って、今回キャロウェイを出て、長男のトニーと鎌足徹と再びToulon Golf Companyに戻ることにしました。

私の仕事やキャリアも終盤に入っていますし、最後の挑戦としたい。やっぱり息子と一緒に働ける喜びと、自分が開発に100%の力を注いでいけることをやりたいんです。少量生産の『Toulon Golf』は私の第3章になりますが、オデッセイやキャロウェイとの提携関係も残っています。彼らのサプライチェーンも使えますし、その上で、本当に美しいモノを少量でもこだわって作りたい。その精巧さや美しさで常にリードしていきたいと思っています」
 
米国と違い、日本は店舗で販売

『SB』と刻印の付く『スモールバッチ』は、世界で75本しか作らないと決めたとか。理由は「限定なのに300とか500とかシリアルナンバーが入るモノもありますが、本当に美しくこだわったモノはそんなに作るべきじゃない。コレクターが持って嬉しいモノにしないと」と言う。独立初期作の『ドッグウッド』もクラシカルで美しいデザインだが「今後数ヶ月間、我々は『スモールバッチ』パターの新デザインの創作に集中することで、デザインへの愛にスポットライトを当て続けたい」とのこと。
 
また、販売面についても聞いた。昨今はキャロウェイも『Callaway Exclusive』など一部ショップでしか扱わないレア物を取り揃えるが、ショーンの答えは「NO」。「アメリカでは店舗には置きたくない。売っても仲間内とかで、基本はオンラインのみにします。でも、日本はちょっと違う形にしたくて、Double Eagle5店舗とヴィクトリアゴルフの数店舗のみで販売するつもりです」。元々日本の文化やモノ作りに尊敬の念を抱いてきたショーンは、サプライヤー選定も含めて、今後その関係を強化するつもりだという。

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本当に美しいモノや芸術・工芸品を作ろうと思ったら、構想からデザイン、試作から仕上げまで、ものすごく時間がかかるのが当たり前ですよね。仮に高級な鉄などの素材を使ったとしても、時間を短縮しようとして製作すると良くないので、一つひとつの加工にも繊細に時間をかけて本当に美しく仕上げたい。そのモノ作りの価値感を理解してくれる文化が、日本には根付いていると思うんです」
 
ゴルファーに「美しさで興奮を届けたい」と意気込むショーン。根っからのクラブ開発者は、歳を重ねても熱量が違う。「こんなモノもいま試作してるんだ。どう、カッコいいだろう?君はAパターンとBパターン、どっちが好きだい?」と、日本で試作中のプロトタイプアイアンを手に、目を輝かせて見せてくれた。
 
カスタムフィッティングクラブ(Zevo)から、現代に続く可変ドライバー(Taylormade)、量産パターから少量生産パターへ(Odyssey)。尽きることないゴルフクラブ愛、デザイン愛を持つ名プロデューサー、ショーン・トゥーロンが、第三章で未来の“美しいクラブ”シーンに挑む。
 
✦取材協力/Double Eagle横浜元町店
double-eagle-golf.com/ ✦toulongolf.jp/
✦撮影/鈴木建夫、Sean Toulon、Toulon Golf Company
✦新作のアナウンスはToulon GolfのInstagramから!

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