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世界No.1の圧勝 そして「タイガー・イズ・バック!」【舩越園子コラム】

タイガーが帰ってきた!(撮影:GettyImages)

タイガー・ウッズ財団がサポートする“ウッズの大会”、「ヒーローワールドチャレンジは」、PGAツアーの大会ではあるが、公式大会ではない。

そのため、フェデックスカップ・ポイントは付与されないが、世界ランキングのポイントは授けられ、非公式大会といえども優勝賞金は100万ドル(約1億4600万円)とビッグだ。そして、その双方を手に入れたのは、米国出身の27歳、世界ランキング1位のスコッティ・シェフラー(米国)だった。

シェフラーは昨年、マスターズを含む年間4勝を挙げて一世を風靡し、今年も2月の「WMフェニックス・オープン」で連覇を達成すると、3月には“第5のメジャー”と呼ばれる「ザ・プレーヤーズ選手権」を制して、通算6勝を挙げた。

だが、その後は勝利を挙げられないまま2023年シーズンを終えたシェフラーは、今大会を迎えたときは「もう長いこと勝っていない気がしている」と言っていた。

今年3月以降、優勝争いには何度も絡んだものの、勝利を掴み取れなかった最大の原因はパットの不調だった。ショットの安定性と正確性は「黄金期のウッズを彷彿させる」と言われていた一方で、パットのランキング(ストローク・ゲインド・パッティング)は3桁まで低下。

だが、シェフラーはパット専門コーチのフィル・ケニョンの指導を仰いで練習を重ね、今大会では、ほとんど無名のメーカー、「オルソン」のパターを起用。「フィルと一緒に取り組んできたことが生かせるパターだと思って、オルソン・パターを握った」。

その甲斐あって、今週は次々にボールをカップに沈め、2位を3打も引き離し、通算20アンダーで勝利。「安定したゴルフができた。パットの自信を取り戻し、メンタル面から勝つための準備を行えたことは新たな学びだった」。

不調部分や弱点に自ら取り組み、好調へ転じさせたシェフラーの世界No.1らしい圧巻の勝ちっぷりに、きっとバハマの大勢のゴルフファンが魅了されたことだろう。

だが、バハマを沸かせた最大の立役者は、やっぱりウッズだったと言っていい。

今年4月のマスターズを途中棄権後、右足首の再手術を受け、リハビリに専念していたウッズは、ほぼ8カ月ぶりの復帰戦となった今大会で、初日こそ「75」を喫したものの、2日目、3日目はアンダーパーのスコア「70」、「71」をマークし、最終日はイーブンパーで回った。

20人中18位とはいえ、しっかり歩くことができ、トレーニングや練習も十分に行うことができ、4日間72ホールを熱く戦い通せたことは、確かな前進だった。

サンデー・レッドシャツに身を包み、流れ落ちる汗をモノともせず、究極の集中状態で最終日を戦ったウッズを目の当たりにして、米TV中継の解説者やレポーターは「力強いスイング、勢いのあるゴルフが戻り、強いタイガーが戻ってきた」と絶賛。

ウッズ自身は「錆びついていた僕のゴルフの“錆”を、かなり落とすことができたのはグッド。でも、まだまだだ」と、満足はしていない様子である。

だが、「2024年にウッズは再び勝てるか?」の問いに対しては、米国のゴルフ解説者もウッズ本人も「もちろんだ」と即答した。

今大会開幕前の会見では「来年は毎月1試合のペースで試合に出ることが、今、僕が思い描いているベスト・シナリオだ」と語ったウッズ。4日間を戦い通し、錆を落として確かな前進と手ごたえを得て「うん。来年、毎月1試合は、いい感じでやれそうだ」と笑顔を輝かせた。

勝つために試合に臨み、勝利を競い合い、そして勝利するウッズを、来年は毎月、ワクワクしながら眺めることができそうである。

文・舩越園子(ゴルフジャーナリスト)

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