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今季好調・阿久津未来也のコーチはプロドラコン選手? 刺さった指導法とは

ウィークポイントだと思っていたトップも、コーチの進言ですっかり長所に変わった(撮影:米山聡明)

<日本オープン 初日◇12日◇茨木カンツリー倶楽部 西コース(大阪府)◇7315ヤード・パー70>

今季はすでに2000万円以上を稼ぎ、早くも3季連続となる賞金シード獲得を決めている阿久津未来也。好調の陰には、コーチを務めるプロドラコン選手の山崎泰宏の存在があった。

現在54歳ながらトップドラコン選手として活躍を続けている山崎と、プロ7年目の28歳・阿久津が出会ったのは昨年12月。「スイングについて意見を交換する“よりどころ”みたいな人が必要じゃないか、と」。共通の知り合いの紹介をきっかけに、主にLINEで動画のやりとりをしながらスイングの指導を受けている。阿久津は関西、山崎が長野と東京を拠点にしているため、直接会ってレッスンを受けられるのは「3カ月に1度」ほどだ。

しかし、多くのスイングコーチがいるなかで、なぜプロドラコン選手を選んだのか。「正直、僕にドラコン要素はない(笑)。でも山崎さんは効率よく飛ばすために、世界の選手はこうやって動かしている、女子プロの飛ばす選手はこうやって動かしている、という研究心がすごいんです」と知識の引き出しの多さに驚いた。実は、山崎はかつて、石川遼や福田真未のスイングコーチを務めたこともある。

そして、決め手となったのはその指導法。阿久津はトップで止まる癖に悩み、これまで様々な人に意見を求めてきた。「僕がウィークポイントだと思っているところを全部ぶつけたときに、『それは阿久津のいいところだから。いいところを生かしていこう。PGAには阿久津よりも止まっている選手はいっぱいいる』と言っていただいたんです。一からというよりは、自分のいいところを半分くらい残しながらやっています」。

スイングを根本から変えようとすれば、大きな違和感が出て、ある程度の期間は成績低迷に目をつぶらなくてはならない。しかし、阿久津は自分のスイングを少しずつ修正してきたため、成果が出るのが早かった。今年3月に行われたツアー外競技「北九州オープン」で優勝を果たしたのだ。

その指導は今でも変わらない。「その動きは絶対にやっちゃダメとは言わないんです。僕がやろうとしていることとか、取り組んでいることは絶対に肯定から入る。『いいじゃん、いいじゃん、その動きだったらこういうふうにしたほうがもっといいよ』って」。その指導法が阿久津に完璧に刺さり、ここまで好調なシーズンを送っている。

ところが、9月の「パナソニックオープン」では6位タイで決勝ラウンドに進出しながら、最終的には47位まで順位を落としたのを機に、二人は方針を変えることになる。「山崎さんと『阿久津は2日間が良くても4日間持たないところが、全体的に成長しなきゃいけないところだね。もうシード権が決まったんだから、来年に向けてやろうよ』と話をして、翌週の東海クラシックから、自分の意識を180度とまでいかないですけど、90度くらい違うことに取り組んでいます」。

90度の修正ポイントはどこなのか。「もともと僕はヘッドから始動していて、スイング中にヘッドが暴れることがあったんです。前半はそこをいじらなかったんですが、来年に向けた後半は引っ張る意識に。グリップを遊ばせるという表現なんですよね」と本人は説明する。始動ではヘッドから挙げて、ダウンスイングでもヘッドを動かしていく動きだったが、それを始動ではヘッドを置いて後からついてくるイメージに変えたのだ。

「前半に意識してきたフェース面も、意識しなくてもそこに上がる。一石二鳥みたいな。それを伝えたら『完璧。阿久津が言いたいことは俺が言いたいこととまったく一緒。そのまま続けてほしい』と言ってくださって。そう言われると、やっていることが合っているんだっていう自信にもなる」

大幅チェンジに踏み切った「バンテリン東海クラシック」を45位で終えると、翌週の「ACNチャンピオンシップ」では2日目以降に60台を並べて、5位に食い込んだ。「スイングの振っている感じが、初日と4日目とそんなに変わらずにできた。今まで感じられなかったところです」と手応えをつかんで、今週の「日本オープン」に乗り込んできた。

その初日、一時は3オーバーまで落としながらも、最終9番で「17歩」の長いバーディパットを決めてコブシを突き上げると、1アンダー・14位タイにカムバックしてきた。「残りは(最終戦の)JTを入れて6試合。先週は5位に入って、JTまでにもう一回優勝争いできれば面白いのかなって今は考えています」。悲願の初優勝へ。来年に向けてまいた種が、今年のうちに花開くかもしれない。(文・下村耕平)

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