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地元でのステップアップツアー解説で感じた現場の大切さ【原田香里のゴルフ未来会議】

ゴルフを愛するみなさん、こんにちは。原田香里です。先日、ステップ・アップ・ツアー「山口周南レディースカップ」でお仕事をしてきました。春先の「フンドーキンレディース」に続く2度目のテレビ解説です。

会場の周南カントリー倶楽部は、私の故郷、山口県にあり、ジュニアの頃からお世話になっているコースです。父もメンバーで、現在キャプテンを務めているご縁もあります。歴代支配人のみなさんとも顔見知りです。そのコースで、今の選手たちのプレーを解説するという機会に恵まれたことは本当にありがたく、同時に妙な緊張感もありました。

3日間大会で2日目はあいにくの雨だったのですが、それでも合計3102人のギャラリーにいらしていただけたとのことでした。ステップ・アップ・ツアーはJLPGAツアーに出場資格を持たない選手および新人を対象に、試合経験を積ませることによる育成・レベルアップを目的とし、1991年から始まったトーナメントです。当初の91年は2日間大会が2試合だけ。その後、3日間の大会も増えたことで2017年からはロレックスランキング(女子の世界ゴルフランキング)の対象ツアーにもなっています。

今年は23試合が行われ、そのうち2日間大会は1試合だけ。“ロレックスランキングフラッグシップイベント”と銘打った「SkyレディースABC杯」は、4日間の大きな大会です。それ以外の21試合はすべて3日間。始まった1991年から考えると、ツアーとして大きく育っていることがはっきりとわかります。レギュラーツアー出場を目指して、文字通りステップアップする場ですから、その差はもちろんあります。ただ、選手層が厚くなるにつれてこちらのツアーも少しずつですがレベルアップしているのも確かです。

今回、5打差逆転で優勝したのは、新海美優さんでした。2017年には賞金ランキング39位でJLPGAツアーのシード権を獲得したのですが、その後は苦しい戦いが続いています。今年もQTランキング25位でJLPGAツアー25試合に出場し、パナソニックレディス4位タイなどもあります。ただ、予選落ちも多く、第2回リランキングで43位となってしまい、終盤はステップアップツアーでプレーした中での勝利です。

新海さんは、昨年も同じ大会で優勝しています。そこからJLPGAツアーでプレーして、再びステップ・アップ・ツアーに戻っての勝利には、複雑な思いもあるかと思いますが、今年は厳しい中で培ったものが感じられる優勝でした。振りもシャープになっており、飛距離も出ているとのこと。いい方向に向かっているのではないでしょうか。

ステップ・アップ・ツアーからJLPGAツアーに“昇格”しても、結果が出ずに同ツアーに戻る選手は少なくありません。そこからまた這い上がるのはすごく大変なことですが、そこで踏ん張れる選手もいます。

もう一人、気になる選手がいました。3勝して今年のステップ・アップ・ツアー賞金女王となったウー・チャイェン(台湾)さんです。昨年のプロテストに合格したルーキーで台湾出身。師匠はツアー通算58勝の永久シード選手、ト阿玉(台湾)さんです。ウーさんの良いところはアイアンショットのボールのとらえ方だと思います。インパクトがよい音だと感じられました。

グリーンでのライン読みもよかったですよ。周南のグリーンは、傾斜があり、ところどころ芝目の影響もあり、ライン読みが難しいのです。賞金1位となったことで、来年の第1回リランキングまでのJLPGAツアー出場権を手にしたウーさんは、この先、どんなプレーを見せてくれるのでしょうか。昨年、ステップアップツアー5勝でJLPGAツアーに”昇格“し、今年4勝と見事に結果を出している櫻井心那さんに続けるかどうかも、見守りたいと思います。

解説をすることで、今の選手たちのスイングの傾向をじっくりと見ることができ、自分のゴルフを改めて振り返る機会にもなりました。また、地元ということもあってコースに出ると、多くの人に声をかけていただけるのもうれしかったです。理事時代を知る選手のみなさんとの交流も楽しく「現場ってやっぱりいいな」と言う気持ちになりました。自分をアップデートするためにも、現場の空気に触れることは大切だな、と感じました。

レギュラーツアーの華やかさ、激闘はもちろん素晴らしいものです。でも、そこを目指す選手たちの戦いぶりが見られるステップアップツアーには、そこにしかない良さがあります。みなさんも、機会があればぜひ、観ていただきたいと思います。

■原田香里(はらだ・かおり)
1966年10月27日生まれ、山口県出身。名門・日大ゴルフ部にで腕を磨き1989年のプロテストに合格。92年の「ミズノオープンレディスゴルフトーナメント」でツアー初優勝。93年には「日本女子プロゴルフ選手権大会」、「JLPGA明治乳業カップ年度最優秀女子プロ決定戦」勝利で公式戦2冠を達成。通算7勝。その後は日本女子プロゴルフ協会の運営に尽力し21年3月まで理事を務めた。

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