【高橋優介監督×三笠貴史】師弟からライバルへ。「F1昇格」に向けた課題と展望

8月19日、Fリーグ2023-2024ディビジョン2の第9節、アグレミーナ浜松vsボアルース長野が行われた。この試合で、5シーズンぶりに再会を果たした人物がいる。

アグレミーナ浜松・高橋優介監督と、ボアルース長野の三笠貴史だ。

2018-2019シーズンに、各クラブの若手選手の出場機会と成長を目的に選出された「Fリーグ選抜」で、両者は指揮官とキャプテンとして1年間、リーグ戦を戦った。

フウガドールすみだに所属していた当時、自身のキャリアと人生に悩み、もがいていた三笠にとって、Fリーグ選抜で己の道を照らしてくれた高橋監督は“恩師”でもある。

5年の月日を経て、互いにチームも立場も変わった。ただ一つ、敵チームでありながら目指している同じ目標は「F1昇格」だ。2人に、今の率直な思いを聞いた。

取材・文=青木ひかる

【F2第9節|記者会見/浜松vs長野】浜松・高橋優介監督「リスク管理の差が出た」

“事件だらけ”だったF選抜

──お2人がFリーグ選抜の監督とキャプテン選手だった当時から5年が経ちます。会うのは久しぶりですか?

高橋 もうそんなに経つんだ。

三笠 懐かしいですね。会うのは、2年前に名古屋オーシャンズ戦を見に来てくれた時以来ですかね。

高橋 春日井市の体育館だっけ? バルドラール浦安と名古屋の試合を見に行ったね。あとはなにかあれば、時々、LINEするぐらいですかね。

──個人的な話になりますが、私がFリーグの試合を初めて見たのは、元サッカーブラジル代表のロベルト・カルロスさんが参戦して話題になった、Fリーグ選抜vsヴォスクオーレ仙台でした。5年後にこうやってお2人の話を聞けるのは、なんだかうれしいです。

高橋 そんな試合もありましたね。あれは大変だったなあ(苦笑)。

三笠 なにが起こったのかよくわかんなかったですね。でも、ゲンさん(高橋監督の愛称)がホテルから会場に向かう時にみんなを呼び止めて、「ここから先のドアを出てから起きることに対して、なにもネガティブなことはないし、受け入れてやろう」っていう話をしてたのはすごく覚えています。

高橋 ロベカルさんがFリーグ選抜のメンバーとしてプレーしましたけど、一緒に練習する時間もなかったですからね。一人の選手がポンと入ってきて、どんなプレーをするのかもわからない。しかもチームは、前の日に名古屋にボコボコにやられて負けているわけですから。あの試合もリーグ戦なので絶対勝ちたいし、選手はなおさらですよ。だからあのタイミングで先に話をしておこうかなと。

──でも結果、2-1で勝利しました。

高橋 本当に信じられないですよね。他にもいろんな事件がたくさんあったよね。

三笠 坂(桂輔)が新幹線に荷物を忘れたりとか。

高橋 あったね(笑)。都内の試合だと乗り換えがわからなくて、すぐセミ(三笠選手の愛称)に聞いたりとかね。昔からしっかりしてたよ。でもあの1年も思い返せば、いろんな経験ができたし、最高だったね。

内容か、勝利か。それぞれが目指すフットサル

──そんな2人がライバルとして対戦しましたが、試合を終えてみてどうですか。

高橋 さっきの記者会見では、三笠くんの悪口を言いました(笑)。

三笠 え!? 今日、なにも悪いことしてないですよ! 出場停止になっちゃうから、もうカードはもらえないし。

高橋 いや、パワープレーの守備の時によく動くのは知っていたから、そこを狙いたかったのにという話をしてた。うちのよくないミスが出ちゃって、ボールが動かなかったからうまくいかなかったけど。

三笠 なるほど(笑)。僕としては、そこを突いてくるだろうなっていうのはわかってましたけど、自分の守り方を変えずにやってもパスがずれていたりもしたので、大丈夫だなと思って続けてました。

高橋 Fリーグ選抜対決というより、今日は改めてこのリーグの難しさを感じました。やりにくいんだよなあ、F2は。

三笠 いや、めっちゃわかります。やりにくいです。

高橋 自分たちのフットサルを、どこまで突き詰めて、追求するのか。今日の長野みたいに、勝利に徹して手堅いチームもいるなかで、うちなんかリスクの塊だし、やりたいことをやろうとすると点が入らない。もうちょっとシンプルにピヴォ当てとかしなきゃいけないよなって。

三笠 もともと浜松の試合も見てたし、対戦する準備のためにも確認してましたけど、やっぱりF2で一番いいフットサルしてるチームだなと個人的には感じます。ただ、今日は中身重視でやるか勝敗に徹するかどっちかなとは考えましたね。勝ちには来るだろうなと思ったので、もう少し守備のラインとかも引いてくるかなって予想してました。

高橋 引かないよ!長野がピヴォ当てをして、もちろんしっかり収まる時もあるけど、収まらなければマイボールにはなるから、そこから自分たちのペースにすればやれると思ってたから。でも後半に長野のピヴォ当てが想定以上にたくさん収まるようになっちゃって、引くべきか否かは悩んでた。そしたら、先に点を取られちゃったからさ。

勝つことだけを目指してたら、もちろん今のやり方はしないよ。でもその戦い方をした先になにがあるかをいろいろ考えると、引かなくていいかなっていう決断を取っちゃうんだよね。でも、ボール保持はもういいから、ゴール前の10メートルに行かないとね。

三笠 選抜の時も最初はそうでしたよね。1巡目はクワトロベースで深さが足りなくて。

高橋 そうだけど、今日はチャンスもいっぱいあったから。

三笠 チームのリーダーシップは誰が取ってるんですか?

高橋 そこもふんわりしてる。去年までは須藤(慎一)くんがいたから、彼が抜けたのはかなり大きいかな。怪我もあって出れてないところもあったから、純粋なプレー面での影響はわからないけど、ベテランという立場でチームのためによく動いて、話をしてくれてたから。今いる選手も、そこを補おうとしている姿勢は見えてきてるけど。

──チーム全体を見てコミュニケーションをとるというのは、三笠選手としては選抜時代にキャプテンを務めた経験が今に生きているのでは?

三笠 間違いなくそうですね。僕のキャリアのベースはあの1年間にあるし、今のチームでもそれは自分の役割だと思っているし、自然にやっている部分かもしれません。

高橋 そういう意味で彼は、選抜の時からたくさん考えながらプレーしているし、言語化能力も高いし、しっかりやってくれていました。よく2人で記者会見に出て、先にしゃべってくれてたよね。だいたい試合の総括って監督から話すけど、なんで俺が先に話さなきゃいけないんだろうって思ってたから、時々「三笠選手はどうでしたか?」って先に振って。人前で話すのも鍛えられたでしょ?

三笠 そうでしたね。けっこう先にしゃべってましたよね。しかも当時、そのすべてが記事になってましたからね。あの経験は生きています。

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