ゴルファーでもあった谷村新司さんを偲んで

連載では、名門コースを回ることを楽しみにしていた谷村新司さん(写真は誌面より)

2002年、谷村新司さんにALBA誌で連載を始めていただいた。タイトルは、『谷村新司 名門コースを旅する』。ゴルフをプレーするというより、ゴルフを旅するというテーマで関東・関西の戦前からの名コースを回ってもらい、思いをつづってもらうという内容だ。その中でも印象深いものをいくつか取り上げる。
 
今年の日本オープンの舞台となった茨木カンツリー倶楽部もそのひとつ。取材では、入江勉プロと一緒にプレーしていただいた。実はお二人はともに関西出身、しかも同い年で、学生時代、桃山学院大学のゴルフ部に入った谷村さんは、関西学生新人戦で入江プロ(当時は関西学院大学の学生で、その名は轟いていた)と同じフィールドに立っていたという。まさに35年の時を経て、茨木CCで入江プロとラウンドしたのだ。その記事の締めくくりの記述にはこうある。
 
「帰りの車は、御堂筋線で渋滞の中をゆっくり動く。私は一瞬のまどろみの中で、関西学生新人戦の一番ティグラウンドで口笛を吹いている夢を見た。確かあの時の第一打はチョロであった。そしてその一打が私に音楽の道を開いてくれた。あの(いまわしい)出来事さえ、笑って思い出せるようになった。」
 
ゴルフと離れ音楽の道へ進んだことを、ユーモアを交えて語ってくれたのだ。

もうひとつは、日本最古のゴルフ場、神戸ルフ倶楽部を訪れた際のもの。歴史溢れるゴルフ場、クラブハウスの趣きに対し、「その地に立った感動はあのセント・アンドリュースよりも私にとっては大きなものであった」と記し、最後はこう締めくくる。
 
「神戸ゴルフ倶楽部のキャップを三つも買いました。一つは自分がかぶる為、一つは大切な人にプレゼントする為、そして最後の一つは使わないで、永遠に心の中にしまっておきたいから…」
 
谷村さんの歌詞に出てくるような素敵な文章を寄稿いただき、ありがとうございました。キャップの似合う谷村さんのこと、空にのぼったらあの時の神戸ゴルフ倶楽部のキャップをかぶって、どうかゴルフを楽しんでください。合掌(文・東寿彦)

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