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老舗の和菓子屋が、ラグビーチームと組む理由。ファンと刻む、新たな歴史。

和菓子とラグビーを繋いだ、”地域”と”ファン”

—”地域”という共通項があったのは大きいですね。

月岡:企業としても地域に対してできることはやっていきたいと考えていましたし、そういったご縁があるなら、なおさらやってみたいなと思いました。

スポーツチームは、すごくファンを大切にしているイメージがあります。船橋屋も、くず餅というまだまだマイナーな和菓子を取り扱っているので、ファンの方に支えられている部分が大きいです。ファンを大事にする姿勢は共通していたので、まずはそこで何かできたらいいなと。考える過程で広がることもありますからね。

逆に、船橋屋になにができるのか不安はありました。ただ、双方のファンの方に喜んでいただけたらと思い、いっしょに取り組みを実施しています。

—健康提案企業へのシフトとも繋がるのではないですか?

月岡:健康提案企業への動きはありましたが、スポーツ選手はもっとストイックに食事にこだわっているイメージでした。あくまでも私たちは嗜好品を売っているので、そういった部分で関わり方は未知数でした。

しかし、シャイニングアークスの栄養士の方が「くず餅は、試合前の食事に適している」と太鼓判を押してくださったんです。選手からも好評で、こんな光栄なことがあっていいのかと。社内で興奮気味に話しています(笑)。

—これまで栄養的な面は押し出してこなかったのですか?

月岡:もちろん健康価値も打ち出していきたいと思っていますが、やっぱり「おいしいから買う」という方が多いので…広報としても、どのくらい健康食品として取り上げるかは難しいところです。

そんな中、栄養士の方や選手に召し上がっていただいて、感想をいただけたのは、これ以上ないチャンスだなと思いました。私たちが発信する以上に、アスリートの方の言葉は説得力がありますからね。

セッションから生まれた予想外の未来

—月岡さん自身は、スポーツ経験はあるのでしょうか?

月岡:スポーツは、大学のときにチアリーディングをかじっていたくらいです。中学は体操部、高校は帰宅部でした。球技はやったこともなければ、見たこともなかったです。ラグビーの知識もなかったので、チームの方と会うたびにラグビーについて聞いています(笑)。

—スポーツが好きすぎても視野が狭くなってしまう可能性がありますし、知らないからこそ別の観点から考えられるのは強みだと思います。

月岡:先日開催されたセッションの目的も、似た考えですね。私だけではなく、船橋屋のメンバーにもシャイニングアークスを知ってもらうきっかけになればいいなと思いました。

一部の部署を除いて、基本的に社外との交流はそこまで多くありません。せっかくならといろんな部署から集めました。職人さんや、販売部の方、採用、社内活性化を担当している方、通販の責任者など。いろんな視点を持つ人が集まることで、良いセッションになったのかなと思います。

—セッションを終えて、具体的に実現した取り組みはありますか?

月岡:まずは、くず餅職人と選手の対談です。「一つの道を進むなかで、こだわりを持っている」という共通点があるという意見が出たのをきっかけに実施して、船橋屋のnoteで公開しています。
<船橋屋noteはこちら>

—職人と選手の対談は興味深いですね。

月岡:反響も多くありました。シャイニングアークスのファンの方がnoteを読んで感想をくださったり、こんなに喜んでくださるのは新しい発見だったので、これからもいっしょにできたらなと思います。

—他にはどういった取り組みがありますか?

月岡:ファン感謝祭では、オリジナルラベルのくず餅を販売させていただきました。今後は大きな会場を使ったイベントも実施してみたいですし、ただ商品を販売するだけで終わらない繋がりを作っていきたいです。

面白いと感じたのが、お互いの教育の場が生まれたことです。シャイニングアークスのコーチに船橋屋の若手社員の研修をしていただき、入社2年目から5年目の社員が、チームビルディングについて学んだり、船橋屋からは渡辺が選手に講演したり。

研修後は、仕事に対する意識が全然違います。船橋屋の社員は、入社後は販売部として各店舗に配属されるので、個人で頑張る部分も大きいと思います。ラグビーはチームで戦います。球技のなかで人数が最も多いラグビーで、チームとは何なのか、人の多様性を知って、自分の強みをどう出していくか学べたのではないかと思います。

得たものが、しっかり社内で生きていると思います。双方のブランド価値を上げられたなら良い成果かなと思います。

—投下してお金をすべて売り上げで回収するのは難しいじゃないですか。ですが、意外と求めがちですよね。数字以外の例は、すごい良いと思います。

月岡:こうした活動も、予想していなかった未来だなと。時間をとってセッションしたから、生まれたものかなと思います。セッションの中でお互いの課題を知って、ヒントをいただけたかなと思います。

—今後は、どのような取り組みをしてみたいですか?

月岡:経験価値を高めるために、リアルの場での活動を増やしたいですね。船橋屋としても店舗での施策に力を入れていますし。スタジアムに来てくれたラグビーファンの思い出に残る取り組みをしたいです。

お互いの価値を高められる兆しがあることなら、とにかくやりたいです。やりたいことがあったらやる、という関係性はこの1年で築けていると思うので、妥協せずにやっていきたいと思います。パートナーとして共に成長していけるというのは、メリットかなと思います。

ラグビーはスポーツのなかでは比較的マイナーな競技、くず餅もお菓子という広い括りのなかではマイナーな部分もあるので、まだまだ知ってもらう余地はあると思います。お互いの可能性をいっしょに模索していけるのはこれからの楽しみです。

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