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聖地・御嶽から悲願の五輪出場へ。4年後に向けて漕ぎ始めた吉田拓

トップ選手からの金言は『あらゆるストレスをなくすこと』

-**人口の少ないスポーツは国内外を問わず、トップ選手との距離が近いという話をよく聞きます。**

カヌーでもそうで、世界のトップ選手でも誰一人威張っていないですね。ロンドン五輪の金メダリストのダニエレ・モルメンティ選手なんかもすごいウェルカムで、練習や食事を一緒にすることもありますし、家に招かれて泊まったこともあります(笑)

きっと“カヌースラロームファミリー”という意識が競技をやっている人の中にはあるんだと思います。

僕は海外の大会で特にダメなことが多くて、選手達に何が試合の臨む上で一番大事なのか聞いた時もみんな考えて答えてくれました。

-**その中で一番腑に落ちた答えは何ですか?**

やはりダニエレの回答ですかね。彼は『できる限りストレスをなくすこと』と言っていました。そのストレスというのはゲートの通り方やタイムの削り方はもちろん、前の日によく眠れたか、いい食事をできたか、周囲との人間関係はどうか等、あらゆる不安要素を含みます。それを持っていると、勝敗を決める一瞬の判断のスピードが速くなったりするから、できる限り0(ゼロ)の状態で試合に臨むことが一番大事だという話でした。

-**実際にゲートの通り方やタイムの削り方まで考えないようにすることはできるんですか?**

もちろん何も考えないのではなく、迷いのない状態にしておく、ということです。あの波を使うかどうか、ゲートを右左どちらから回るか、などの選択を予め決めておけば迷いが出ないで済みますよね。

-**事前に戦略を立てておくことが必要なんですね。**

はい。競技は基本的にコンクリートで作られた専用の川で行います。事前にそのコースで練習もできるのですが、ゲートはそれが終わった後に設置されるので試合と全く同じ環境で乗ることはできません。ゲート設置後はデモンストレーターがコースを1回漕いでいるのを見て、あとは頭の中でシミュレーションをして、レースに挑みます。

でも実は日本にはコンクリートで作った人工コースがないんです。でも世界選手権は海外のそういうコースで行われるので、日本人は不利な側面もあるんです。人工コースの方がギャラリーが観に来やすいというのもありますし。

東京五輪に合わせて都心に人工コースを作るという話も出ているので、そこで世界で戦える選手が生まれていけばいいな、とは思っています。

【後編へ続く】

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