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トップリーグのビジネスリーダーが語る、スマホの普及とスポーツの関係性

潜在的な有望選手の発掘にも活用

一方侍ジャパンでは観客に向けた施策だけでなく、スマホを用いて選手発掘も行っている。現在野球日本代表はトップからアンダー世代、女子まで統一のユニフォームを着用し、“侍ジャパン”として活動をしている。その中でU-12日本代表はアジア選手権で優勝を果たした。

しかし、実はこれまで小学生年代の日本代表を編成する仕組みがなかった。サッカーのようなトレセン制度がなく、前年度全国大会優勝チームがそのまま日本代表として派遣されるケースが多かった。つまり選手1人ひとりを選考し、選抜していたわけではなかったのだ。

そこで行われたのが動画による選手選考である。スマホで1分ほどの動画を撮影し、専用サイトに送付することで選考にエントリーできるというものだ。U-12代表首脳陣がそれを見て、セレクションに召集するメンバーを直接選ぶ形になっている。

「どの子でも侍ジャパンになれるチャンスがある、ということを発信できたのはよかったと思います」(加藤氏)

子供達にとって夢のある話であり、仮にチームが弱くてもすばらしい才能を持った選手を発掘できる可能性があるという点で、非常に意義がある。

いつか訪れる“スマホ疲れ”に備え、チャレンジし続ける。

Bリーグは今後、プレーヤーのデータも紐付けていく予定で、観戦とプレーを繋げていきたい構えだ。葦原氏は今後の業界の展望として、“スマホは目玉の親父になる”という独特な表現を用いて力説した。

「『バスケをやっているなら、たまにはプロのプレーを観に行ってみたら?』と投げかけてくれる。いつも横にいるスマホはそんな存在になっていくと思います」

いわば良き相棒として、スマホがユーザーの趣向や予定などを把握し、適切なタイミングでスポーツを“おすすめ”してくれるような世界ができるということである。

昨今のスマホの普及やSNSの発達で様々な新しい試みをできる環境は徐々に整ってきている。しかし、スポーツ業界にはその機会を活かすための人材が不足しているという問題があると登壇者は口を揃えて話した。

実際に運用を行える人や特性を理解し、組織内で施策提案を通せるリーダーシップを持った人材が求められている。

加えて、大きな規模でプロジェクトを動かす場合には競技や団体を超えた横の連携を強化し、スポーツ界全体で取り組んでいく必要があるという共通認識を持っているようだ。

協力してやることで各競技・クラブの“個性”が消されるという指摘もあるが、出井氏は「一緒に作ったプラットフォームの中で個性を出せばいいだけの話。むしろ“週末に外に出かけて楽しむ”という共通のものをもっと広げていければ僕らのビジネスも発展していくはずです」と競技間での積極的に行っていくべきとの姿勢を示した。

出井宏明氏Jリーグ・出井氏

最後にBリーグの葦原氏は「スマホ疲れが起きる可能性もあります」とスマホ時代が終焉を迎える可能性を危惧した上で、既成概念に囚われないでブレイクスルーしていく必要があると指摘した。

出井氏は『PD“M”CA』が大切であると話す。Mはミス(Miss)の意だ。「プラン(Plan)の段階でミスをしないように計画を立てるとスピードが出なかったり、保守的になったりします。限界突破するためにはミスをしても、そこから学べばいいということです」とどんどんチャレンジしていくことを求めた。

今までであれば選手とファン、ファンと球団・クラブ、競技と競技などの間には大きな壁があった。

しかし、インターネットやスマホを始めとしたデバイスの普及などによって、人々の生活の変化に生じ、それに伴い壁も超えたコミュニケーションが可能となってきている。今後さらにそれを活かした施策が打ち出され、あらゆる垣根を超えたやり取りが生まれることで、スポーツの楽しみ方が多様になり、業界全体も活性化していくに違いない。各リーグのこれからの取り組みにも注目だ。

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