「記憶にないくらい緊張」 欧州初V、星野陸也が見せた強気の攻め

星野陸也が欧州ツアー初優勝を遂げた(撮影:GettyImages)

<コマーシャルバンク・カタールマスターズ 最終日◇11日◇ドーハGC(カタール)◇6689ヤード・パー72>

星野陸也が中東の地で輝きを放った。青木功、松山英樹、久常涼に次ぐ欧州ツアー優勝。「本当にうれしい限りです。2週連続2位で2023年が終わったので、その悔しさを晴らしたいというのが一番だった」。昨年末の2戦連続2位を払拭する見事なリベンジを果たし、興奮気味に取材に応じた。

星野を含む3人が首位タイに並ぶ展開でスタートした最終ラウンド。前半は雨、風というタフなコンディションのなか、1アンダーで回り単独首位に立った。「去年ヨーロッパで戦って、ビッグスコアで上がってくる人がいると思っていた。ここで落とすのではなく、伸ばすというのを目標にした」。折り返し直後の10番でバーディを奪い、攻める姿勢を貫いた。

予想通り、スコット・ジェイミソン(スコットランド)が「65」をマークし、先にトータル12アンダーでホールアウト。この時点で同スコアで並び、ここからは伸ばすしかない状況に追い込まれる。

ところがこの日の星野はリーダーボードを見ていなかったという。気づいたのは最難関ホールの15番。3人が首位に並ぶ状況を理解し、気合を込める。「ティショットが左にフックして」とラフに飛び込んだが、そこから6番アイアンを握りチャンスメイク。パーに終わったが、ここで落とすことなく、続く16番からの連続バーディにつなげた。

1オン可能な16番パー4でドライバーを握った。「チャンスホール。ピンが右手前で、右に外すと寄らない可能性があった」と、ティショットをグリーン左手前のカラーまで運び、ここからパターで寄せバーディ。「左は狭かったけど、左に打たないとバーディが来ないと思った」という攻めの気持ちで、一つ抜け出す。

続く17番は短いパー3。「このあたりから緊張し始めました」と欧州初優勝を強く意識。ここで星野がまたも力を見せつけた。ティショットを左奥およそ6メートルにつけると、「相手がパーだったから、これを入れたら最終ホールが楽だな」と放ったバーディパット。下りのスライスラインに乗ったボールはカップに吸い込まれ、右こぶしを力強く握った。

「このバーディできょう初めてガッツポーズしました(笑)」というほどの貴重な一撃。「ラインは分かっていたので、強めに入りました。ここが大きかったです」。2打のリードを持ってパー5の最終ホールに入る。

この時点で星野がトータル14アンダー。同組のウーゴ・クサル(フランス)とすでにホールアウトしているジェイミソンがトータル12アンダー。「ぜんぶ緊張しました(笑)。ティショットをなんとかフェアウェイに置きたいと思ったら成功してまずホッとした」。続く2打目もフェアウェイ。ピンまで115ヤードを残した。

歓喜の瞬間まであとわずかというなかで、ここからの3打目は52度のウェッジでピン右9メートルにオン。「なんとか乗って」という不満の一打に続くバーディトライは1.2メートルショート。ここでクサルがバーディを決めて1打差に迫った。「入れるしかない、っていう。今までの記憶にないくらい緊張しました」というウィニングパットを決めて逃げ切りが決まると、両手を大きく突き上げた。「心臓がバクバクでした」。激闘を終えて、キャディと抱き合い、喜びを分かち合った。

22年の国内ツアー賞金ランキング上位の資格で参戦した昨シーズンは初の海外転戦でランキング81位に入りシードを獲得。開幕から2戦2位の苦杯をなめて年越し。そして待ちに待った勝利。「優勝を積み重ねていくというか、まずは2勝目が次の目標です」。年末のランキング上位10人が米国男子のPGAツアーに昇格する。このひと枠を手にするため、次戦はアフリカに渡る。

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