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「ケガしたことはプラスにとらえている」 渋野日向子が苦難を乗り越えたどり着いた“新境地”

ケガを乗り越えた渋野日向子が連日の好プレーを披露した(撮影:福田文平)

<フリードグループ・スコティッシュ女子オープン 2日目◇4日◇ダンドナルドリンクス(スコットランド)◇6494ヤード・パー72>

力みのないスイングと表情で1ホールずつ歩みを進める。単独トップからスタートした渋野日向子は、5バーディ・1ボギーの「68」と4ストローク伸ばし、トータル12アンダーでその座を守った。「もう少し緊張するかなとも思ったけど、まだ2日目だったからか自分がやるべきことを徹底してできました」。集中を切らさずにプレーする姿がこの日も印象的だった。

ピンチから始まるラウンドだった。1番で6メートルほどから3パットのボギーという滑り出し。だが気持ちをすぐに切り替え、2番ですぐにチャンスを作りだした。フェアウェイからの2打目は、最初5番ユーティリティを握ったものの、迷った結果6番アイアンをチョイス。これがピン筋に飛ぶベタピンショットになり、バウンスバックに成功した。渋野自身、「個人的にすごく良かった」とこの日一番のプレーに選んだシーンだ。

そこからはボギーを叩くことなく4つのバーディを上積み。課題に挙げていたパー5も、4ホール中3ホールでスコアを伸ばせたのも大きい。「5メートル以内のチャンスにつける回数は多かったけど、それをことごとく外してもいた」と、打ち切れずにショートすることが目立ったパッティングには反省も残す。ただ「そこで気持ちを切らさずにできたのはすごく良かった」と、前日同様の冷静なプレーをスコアにつなげた。

この数カ月間は、左手痛に苦しめられる時間を過ごしてきた。4月頃に発症したケガにより、練習制限せざるを得ない状況になり、それが成績にも響くことに。しかし、ようやく気持ちよくクラブを振り抜くことができるまで回復した。「これだけ打っても、地面が硬くても痛みがないから、それが原因で力むこともない。痛みがないのはすごくいいことですね」。こんな当たり前のことを再確認できる日が訪れた。

今年に入って、トップの位置を高くして縦振りにすることを目指す新スイング作りに着手。しかし“高く腕を上げよう”という意識が力みにつながり、故障の原因になった。今は、負担軽減のためトップの位置は気にせずに、体の使い方を意識したスイングを取り入れている。

もちろん左手を痛めた当初は後ろ向きになることも多かったが、今は「ケガをマイナスではなく、自分の中ですごくプラスにとらえている」と言えるようになった。もともとケガとは無縁で、痛みを抱えてプレーするのは「ほぼ初めて」の経験。だからこそ気づけたことも多かったという。

「今まで感覚でやってきてた自分の体のことを、理解したうえでできるようになった。早めに気づけたと言えるかは分からないけど、年齢的にも良かったと思う。この痛みが出たから視野も広がった」

戸惑うなかでも試行錯誤を重ねたことで得た“力まない”というキーワードがハマっている。まさにケガの功名といえる。今はグリップから腕まで力を抜いてスイングすることを徹底。「めっちゃ(力が)入っちゃう…、やっぱり入っちゃいますね!(笑)」という体との戦いは続くが、それをなんとか抑え込みながらプレーしている。

「残り3ホールぐらいは、(同組の)2人が飛ぶから欲が出てドライバーをブンブン回しました(笑)」。時折、アスリートの闘争心に火がつくこともあるようだが、週末も落ち着いたプレーを心がけていく。「いい緊張感。予選カットの緊張じゃないから、ちょっとは前に進めたかなっていう感覚です」。ひさしぶりの優勝争い。いい位置で最終日を迎えるため、ムービングデーも“今やるべきこと”を徹底していく。(文・間宮輝憲)

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