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ゴルフは自然を相手にするスポーツだが、野生動物の危険にも注意が必要

ゴルフ場に出没したサルには下手に近づくのは危険(撮影:福田文平)

自分が予約をするときには、原則としてトップスタートを取ります。早起きして付き合ってくれる同伴者は、始めは文句を言うこともありますが、そのメリットの多さにトップスターとファンになることが大多数です。理由の一つは、野生動物とのロマンチックな出逢いがあることなのですが、最近では、そうとばかりは言ってられない、危険な状況があるようです。

ほとんどの人が経験できるのは、バンカー内の動物の足跡や糞などの痕跡。珍しい経験としては、ティショットを打とうとして、50ヤード先を鹿が横切ったり、脇の植え込みから野ウサギが出てきて、フェアウェイをとんでもない速さで跳んでいったり、池の越えのパー3でグリーの近くにイノシシの家族がいたり。

ちなみに、イノシシは、グリーンに悪さをしたらマズいと大声で威嚇したのですが、後からコースのスタッフから厳重注意されました。パー3の距離をヤツらが本気で走ったらティまでは一瞬。カートでも逃げられないので、危ないそうです。静かに逃げられる体制で見守って、コースに電話するのが正しい対処法だと学んだのです。

カラスが巣を作っていて、その下にボールを打ち込んで、カラスに襲われたこともありました。この場合も、ボールはそのまま、コースに電話が正解です。ゴルフは自然との闘いと言われますが、令和の今は野生との闘いにも注意を払う必要があるようです。カートに携帯していた食べ物をカラスにさらわれるなんていうのは序の口で、「可愛い」と思って不用意に近づいて、サルに襲われそうになったなど、ゴルファーには、野生動物の危険が身近に迫っていることを認識しましょう。

よく言われるのは、自然界と人間界の境界線として機能していた、人の手が入った里山の存在がなくなりつつあることで、野生動物の行動範囲と人間の距離が近くなっていること。連日のように報道されている、クマに襲われる事件が頻発している原因のひとつにもなっています。さすがにコースにクマが出没することはあまり聞きませんが、整備されたゴルフ場が、里山の機能を代替しているという考え方もあり、それがコースで野生動物との遭遇を助長している可能性もあるようです。実際に、ゴルフ場では野生動物によるコースへの獣害(イノシシ、カラス、モグラ、シカなど)に様々な対策を実施している現実があります。

厄介な昆虫も多くいます。蚊などの害虫は殺虫剤と虫除けで対応できますが、アブやブヨは特別な虫除けがないと防げません。毒があるマダニや、血を吸うヒルがラフに潜んでいるコースもありますが、これらは長ズボンと厚手の靴下で防げます。木陰で一休みという夏のシーンでも、毛虫がいたりします。特にこれからの季節(8月~9月頃)で注意が必要なのはスズメバチ。ボール探しなどで不用意に巣に近づいて被害にあうことのないよう気を付けたいところです。もしも巣を発見したら、コースに電話することが基本。

昆虫ではありませんが、ヘビもいます。猛毒のマムシの可能性もあるので、近づかずにやり過ごすのが正解。「マムシ注意」の看板は多くの場合、ボール探しが危険な場所で事故防止のために設置されています。ちなみにシマヘビやアオダイショウなどと違い、体長は短く、三角形の頭部の形が特徴的です。体色には個体差、地域差もあり、マムシを見たことがない人には瞬時に識別することは難しいかもしれません。とにかく“近づかない”ことが最善の策となります。

諸説ありますが、野生との闘いの究極は、動物の糞の上にボールが乗ってしまったときだという話があります。動物の糞は、ルースインペディメントで、ボールが動かないなら無罰で取り除けますが、この場合は、ボールが動いてしまうので、そのまま打つか? 1打罰で糞をどかすか? の二択です。

自らは未経験ですが、同伴者が選択するのは3度ほど見たことがあります。1打罰を選んだのは一人だけで、二人はそのまま打ちました。結果は、まさにウンの尽き。

野生との闘いの勝敗は常に人間の負けです。自然に勝てないように、野生にも勝てません。ただし、良い負け方をするという花道は残されています。だから、ゴルフは面白いのです。

(取材/文・篠原嗣典)

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