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ゴルフ場の食事はなぜ高いのか? コースによって違いがありすぎる事情を探る

レストランのメニューとは違うが、ゴルフの祭典として知られるマスターズでは、ギャラリー用の食事として低価格メニューが用意されている(撮影:GettyImages)

“牛丼 7000円”そのコースで一番安いランチメニューです。

漫画や映画のようなフィクションの話ではありません。令和の現在の話です。ゴルフにおいては付加価値としての食事ですが、7000円は行き過ぎとしても、巷の食事より確実に高額であることは間違いありません。

上述のコースとは違いますが、この国のゴルファーなら一度はプレーしてみたいという憧れの対象であるコースとして、名前が確実に挙がる“あの”コースは、昭和の頃、ホテルに宿泊しなければプレーすることは不可能でした。宿泊代とプレー代で約10万円。そのために、仲間と何年も積み立てをして、夢を現実にするゴルファーがたくさんいました。

ハーフターンで食事をする場合、ホテルのレストランはジャケット着用だったので、ロッカーで着替えてからレストランに。雰囲気に飲まれそうになりながら、開いたメニューには、サーロインステーキを筆頭に、おいしそうなものが並んでいますが、あるはずのものがない。そう、そのメニュー表には金額が書かれていないのです。というわけで一番安そうに見えるカレーライスか、サンドイッチを注文するというわけです。

実は、ランチ代はプレー代に含まれていて、何を注文してもプラスにもマイナスにもなりません。二度目からはステーキを頼むという笑い話は有名でした。ちなみに、現在、そのコースは当時とは経営者が変わったこともあって、プレーしやすくなりましたし、メニューにはちゃんと金額が載っています。

夢の国の入場料が値上げされるということがニュースになりましたが、ゴルフコースの食事が高いのは、その特別な空間への入場料が含まれているからだといえます。もう一つ、別のパターンは、金の亡者に取り憑かれた発想で、プレー代以外でも1円でも多く払ってもらおうという手段が具現化しているコースもあります。

その対極の例として“名門コースのカレーは安い”という伝説は、昔からありました。
レストランで過剰に儲けるつもりはないというプライドが、安くて美味しい最安値のメニューをラインアップさせたのです。個人的な調査ですが、20世紀末までは、名門コースには安くて美味しい数百円の最安値のメニューが必ずあり、それが名門の証明になっていたのは噂ではなく、事実でした。

その反面、特別なメンバーだけに提供される裏メニューがあって、注文できることがステータスになっているという例もあります。

コロナ禍により、18ホールスループレーで食事なしというゴルフが奨励された関係で、通常に戻っていくゴルフコースの食事が再注目されたことで「ゴルフ場のランチって、高くない?」という疑問を持っている人たちがたくさんいるようです。

物価高が叫ばれる昨今の事情はあるにはせよ、普段の生活では、ワンコインで食べられるランチが街に溢れています。お弁当もあるし、コンビニや牛丼などの各種チェーン店も必死の努力をした結果です。それらと比較する人もいるようですが、薄利多売を前提にしているビジネスとゴルフコースはまったく違うもので、意味がありません。

この国にはたくさんのゴルフコースがあり、ランチなしを選べるコースもたくさんあります。
ゴルフ場はプレーするのが目的で「ランチを目的にゴルフ場に行くわけではない」という声もあります。自分の価値観で高いと思うなら、ランチなしが可能なコースに行けば良い。ニーズの多様化によって選択肢は増えています。

冒頭に書いたような本当に高額なランチメニューのコースもありますが、ゴルフにおいて、ランチは“オマケ”に過ぎません。オマケなしでも、ありでも、ゴルフはゴルフ。それが大事なのです。

(取材/文・篠原嗣典)

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