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41歳プロ卓球選手・吉田海偉はなぜ現役を続けられるのか「プロは大変さを感じないとダメ」

普段言わないけど、奥さんには感謝している

――奥さん(小西杏さん、元日本代表)は?
吉田海偉:2回目、オフチャロフに2-3で負けたとき、今回負けたよって電話したら、えーって(笑)。

俺も負けたくないよって。でも、相手も負けたくないから一緒じゃん。勝負の世界、勝つか負けるしかないじゃんって。

男はね、つらいときもありますよ(笑)。

――厳しい(笑)。
吉田海偉:でも、5分後くらいにもう1回電話かかってきて。

“よく考えたら、すごいじゃん”って。
“1回負けた相手のことをトップ選手は絶対研究する、2回目負けたくないから。自分もそうだったし。自分より全然若いトップ選手に、2回目も2-3ってすごいよ”って。

嬉しかった。最初から言えよって思ったけどね(笑)。

でも、奥さんには感謝してる、普段奥さんの前では言わないけど。

――この機にどうぞ(笑)。
吉田海偉:俺がヨーロッパにいるから、日本では奥さんがひとりで子どもの面倒見て、しかも卓球場もやっているからね。

感謝してるから、ヨーロッパで一人でもわがまま言わずに頑張れる。途中で帰りたいとか、絶対言わないようにしている。

日本食が食べたい、くらいかな(笑)。

吉田海偉
写真:吉田海偉/撮影:ラリーズ編集部

試合に勝つことが一番のストレス発散

――ポーランドではどんな生活ですか。
吉田海偉:練習、食べる、寝る、練習、食べる、寝る(笑)。

あんまり喋る相手もいないです。自分は夜早く寝るので、時差の関係で日本の家族ともあんまり電話できない。夜は寂しくなりますね。

――卓球の練習がストレス発散になる面もあるんですか。
吉田海偉:それもあるけど、試合に勝つこと。それが一番。

ヨーロッパは移動も長いから、試合が始まると時間がなくて、全部移動です。ホーム会場も、住んでいるところから監督の車で2時間くらいかかる。

連チャンで試合して帰ってきて、2日後にまた10時間くらいかけて車で移動して試合、とか普通です。

でも、それが本当のプロリーグでしょう。

プロは大変さを感じなきゃダメ

――と、言うと。
吉田海偉:プロは、いろんな大変さを感じなきゃダメ。

確かに、日本のTリーグも毎日卓球でお金もらって、それもまあプロでしょう。

でも、本当のプロはね、いろんな大変さを感じなきゃダメなの。日本の移動は新幹線、飛行機でサッと行ける。美味しいもの食べられる。

俺41歳、ヨーロッパで、我慢、ストレス、我慢。美味しいもの全然食べられない。もうラーメンも飽きた。

でも自信持って言える。俺のほうがファンタジーがある。俺のほうがカッコいいって。

吉田海偉(東京アート)
写真:熱いガッツポーズを見せる吉田海偉/撮影:ラリーズ編集部

プロの意味をわかってない

――でも、ヨーロッパでも、新幹線移動ができるならそれに越したことはないですよね。
吉田海偉:ドイツの新幹線、止まり過ぎだから(笑)。日本は便利、その意味では最高なのよ日本は(笑)。

だからこそ、今の日本の卓球に不満もある。

――例えば?
吉田海偉:Tリーグは、出てるのが子どもばかり。将来性?世界で勝ってる?それは本当に卓球の将来性?

お客さんに対してパフォーマンスもできない。試合終わって黙って帰る。だから人気が出ない。

サッカーがなんで人気なのかって、あのパフォーマンスがあるからでしょう。

Tリーグを観に来て、選手が黙ってプレーして黙って帰るなら、もう寝てるのと一緒。つまらない。

卓球をプロでやるっていう意味をわかってないよ。

――全日本を戦うのとはまた違う意味がありますからね。
吉田海偉:選手だけじゃない。問題になっているオリンピック代表選考ポイントもそう。(水谷)隼や、(石川)佳純が言ってる通りだよ。国内で勝ったって、世界に勝てないと意味がない。

Tリーグはプロチームの試合。オリンピック代表は選考会で選べばいい。一緒にしたらTリーグの魅力がなくなる。

チョコレートと酢、混ぜると酸っぱくない?別々に食べて、飲めばいいのに。混ぜるのは変でしょう?

諦めない41歳

ユニークな例えも交えながら、日本の卓球へ激を飛ばす吉田海偉。

「つい熱くなっちゃうんですよ、ポーランドで喋る機会少ないから」時折、照れる。

何ひとつ諦めていない男、吉田海偉、41歳。

吉田海偉
写真:吉田海偉/撮影:ラリーズ編集部

取材・文:槌谷昭人(ラリーズ編集長)

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