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「誰にも相談できなかった」卓球前日本代表監督・倉嶋洋介に聞いた 指導者の栄光と孤独

指導の基本は「コミュニケーション」と「選手に考えさせる」

——選手を指導する上で、倉嶋さんが大切にしていることは何でしょうか。 倉嶋洋介総監督:基本は、コミュニケーションと、選手に考えさせる、その2つはずっと変わってないですね。 言葉がけを僕はすごく重要視しています。選手たちが感じていることをちゃんと受け止めながら、どこまで自分が入っていって良いのか、間合いを考えながら。やっぱり、いつも選手とコミュニケーションを取っていないと、選手の状態はわからないですから。

写真:倉嶋洋介監督からアドバイスを受ける及川瑞基(木下マイスター東京)/提供:T.LEAGUE/アフロスポーツ
写真:倉嶋洋介総監督(左)/提供:T.LEAGUE/アフロスポーツ——選手に考えさせる、というのは。 倉嶋洋介総監督:今の選手は、頭を使うことをめんどくさがってあんまりしないんです。携帯で調べたらなんでもわかる時代ですからね。 でも、卓球は0コンマ何秒の早さで来るボールを自分で判断し、決断して打つ。回転もコースも読んで、1球1球状況が変わるコート上で、戦術も転換しながら自分の頭で考えて、判断しないといけないスポーツです。

練習のときから、自分で考えて考えて、そして気づいて決断する選手を育てたいと思ってます。

選手たちに“絶対にできる”という自信を持たせる

——代表監督の頃から、選手のモチベーションを高めることも上手な印象です。 倉嶋洋介総監督:結局は、選手たちに絶対に俺たちはできるんだという自信を持たせることなんだと思います。 選手はやっぱり未経験のことをイメージするときに不安になるんですよね。そこはなんとかしたいと思っています。

——例えば。 倉嶋洋介総監督:リオ五輪前は、当時水谷のプライベートコーチだった邱(建新)さんに“水谷をいっぱい褒めてください”とお願いしました。普段まったく褒めない人なので(笑)。 丹羽もリオ五輪直前は、ワールドツアー1回戦負けが続く絶不調だったので、もう弱点は練習しませんでした。得意なことだけやろうと、チキータやって速攻の練習ばかり。ゲーム練習もやらなかったです。で、悪いイメージを全部取っ払って臨んだ。

(吉村)真晴も、肩の故障で練習したくてもできない、と悩んでいた時期に、映像見せながら“お前の良さ、強さはここなんだよ、だから国内での世界ランキングがトップなんだ、決定率はこれだけ高い”と数値も示しながら。

——それぞれに自信を持たせるんですね。 倉嶋洋介総監督:方法はいろいろ試しましたね。 大きな大会の直前は、家族からのメッセージなども入れたモチベーションビデオや思い出深い試合をみんなで見て、その後に円陣組んでというのがルーティンでした。

技術なんてそれまでやってきてるんだから、もう最後は気持ちですよ。「自分がやってやるぞ」という気持ちにさせるだけです。

自信がないと絶対に勝てませんから。

日本男子メンバー
写真:東京五輪での日本男子の張本智和、倉嶋洋介監督、丹羽孝希、水谷隼/提供:森田直樹/アフロスポーツ

代表監督の孤独

——でも、日本代表監督の仕事って、ときに孤独を感じませんか。 倉嶋洋介総監督:それは、ずっと感じてました。誰にも相談できないことばかりで、常に自分で決めないといけないので。家でも全然卓球の話はしませんでした。 倉嶋洋介(木下グループ卓球部総監督)
写真:倉嶋洋介(木下グループ卓球部総監督)/撮影:槌谷昭人——それはそうですよね… 倉嶋洋介総監督:失敗も成功もすべて自分の責任ですし、発言には重い責任が伴う。9年間、その意味では孤独でしたね。 その代わり、本当に貴重な経験をさせてもらいましたから。

——今はどうですか? 倉嶋洋介総監督:今は、孤独は感じないですね。 木下代表、役員の方々、渡邉隆司をはじめスタッフの皆さんが身近で支えてくれています。

木下グループのバックアップは本当に心強いです。木下代表の決断の早さ、助言はなるほどなと思うことが多く、良いアドバイスを頂いています。

ああ、相談も良いなと思いました(笑)。

倉嶋洋介(木下グループ卓球部総監督)
写真:倉嶋洋介(木下グループ卓球部総監督)/撮影:槌谷昭人>>(後編「トップ選手を教える指導者が少ない」「Tリーグの発展は急務」前日本代表監督・倉嶋洋介が抱く日本卓球界の課題 に続く)

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