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より楽しむための卓球の見方 本質は目に見えないところにあり|頭で勝つ!卓球戦術

メンタルの要素

得点の流れを見る

そうした解説を聞くのと同時におすすめしたいのが、「得点を見る」のではなく「得点の動きを見る」ということだ。

例えば「10-8」というカウントだったとしよう。そこで初めてテレビをつけたのならば、シンプルに「あぁ、あと1点で勝ちだな」と思うだけだろう。

しかし実はこれが、10-3でリードしているところから、追い上げられての10-8だったとしたら大変だ。リードしている側はマッチポイントを握りながら5連続失点をしていて、試合の流れは完全に相手にあると言える。こうなると相手も強気なプレーをどんどんしてくるので、焦りと不安の気持ちでいっぱいのはずだ。

写真:孫穎莎(中国)/提供:ittfworld
写真:孫穎莎(中国)/提供:ittfworldつまり今現在の得点よりも、そこに至るまでの得点の動きの方が重要なのである。さらにそれについても、解説者がちゃんと「5連続得点ですね」と必ず説明してくれるので、しっかりと聞いていれば流れを見失うことはない。なんとなく観ているだけでは、なんとなくしか楽しめないのだ。

メンタルの要素が多くを占める競技だからこそ、大逆転というのもしょっちゅう起こる。

どれだけ点数差が離れていても、絶対に油断してはならない。リードしていて一度崩れると、立て直すのは非常に難しいものだ。

実際に前回の五輪でも、9-3というスコアでリードしながら逆転されるという事態もあった。大舞台になればなるほど誰しも勝ちたいという気持ちが強くなり、その分緊張も高まるので、大逆転劇が起こりやすい。逆に見る側からすればどんなときも何が起きるか分からないので、常に目が離せないわけだ。

選手の仕草

そういったメンタル的な要素は、プレー以外の部分にも現れる。

張本智和
写真:張本智和(木下グループ)/提供:新華社/アフロたとえば表情ひとつとっても、試合を有利に進めているときと追い詰められているときとでは、顔つきがあきらかに違う。それまで強気な表情だったのが、弱気になっていく様はテレビ画面を通じても分かるものだ。

さらに仕草をみても、ラケットを見る、天をあおぐ、うなだれる、といったものは不安が現れている証拠だ。またそういう状態のときは、台を触ったり、台を離れて歩いたり、靴紐を結び直したりといったことをして、次のプレーに入るまでの「間」を長くとるといった行動も出てくる。

たとえば先程のような10-3というスコアのとき、リードしている側は自信に満ち溢れていた表情だったのが、失点するにつれてだんだんと陰りが出てきて、10-8ともなれば顔面蒼白、といった感じである。

林高遠
写真:林高遠(リンガオユエン・中国)/提供:ittfworldそういった心理的、感情的な部分はプレー意外にもつぶさに現れるので、そこに着目するのも面白いだろう。あるいは逆にそういった感情的な部分を一切見せずに戦う選手もいる。そんな細かい部分ひとつをとって見ても選手によって特徴が色々と違うのである。わざともう参りましたといった表情を見せてから、虎視眈々と逆転を狙うようなこともあるし、実に細かい駆け引きがあの小さな卓球台を挟んで繰り広げられているのである。

これらの細かい駆け引きについても解説者がきっと触れてくれるので、集中して聞いていると、選手の心持ちを理解することができ、応援にもより熱が入ること間違いなしだ。

まとめ

より楽しむための卓球の見方として、頭脳とメンタルが挙げられる。そしてそこにしっかりと着目して観戦する為には、解説者の話を聞くことが非常に大切だ。とりわけテレビで放送されるような試合では、知識のない方でも置いてきぼりにならないよう、専門用語の解説も交えながら優しく丁寧に解説してくれるため、非常に分かりやすい。

水谷隼
写真:水谷隼(木下グループ)/提供:ittfworld台から離れての激しいドライブの打ち合いや、考えられないほど後陣から粘るロビング。さらに女子選手の目にもとまらぬ高速ラリー。それらは技術的な要素で、誰が見ても華やかで素晴らしいプレーである。ニュースに切り取られて放送されることも多い。

ただ本当に面白いのは、目には見えづらい頭脳戦やメンタル戦であり、そこに着目せずでは、卓球観戦を充分に楽しめているとは到底言えないだろう。目に見えにくい部分にこそ、卓球の見方の本質がある。

これから始まる東京五輪でも、ぜひとも解説者のお話をしっかりと聞いて頂き、より興味深く卓球競技を見てもらえればこれ幸いである。

若槻軸足インタビュー記事

>>『頭で勝つ卓球戦術』シリーズ著者・若槻軸足が社会人で全国5回でられたワケ

若槻軸足が書いた記事はこちらから

頭で勝つ!卓球戦術

>>【連載】頭で勝つ!卓球戦術

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