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栃木SCは、ソーシャルメディアで切り開く。えとみほインタビュー【前編】

選手のエンゲージメントは「信じられないほど」高い

—去年と比べて、発信の仕方が変わった選手はいますか?

えとみほ:瀬川和樹選手ですね。去年の途中でウチに来た選手なんですけど、コロナの間も自分にできることは何かを考えて「1人スポンサーパーティ」をやってくれたり。

—「1人スポンサーパーティ」。すごいですね、こんなことを(笑)。

1人スポンサーパーティー。訂正編。
カワチ薬品様の所に行かせてもらいKのポーズを撮っていましたが正確にはCでございました。
近くのカワチ薬品様の所でお詫びのCをさせていただきました。
たくさん買い物させていただきありがとうございます。#1人スポンサーパーティー#カワチ#カワチ薬品#C pic.twitter.com/Otya1eZ7L9

— 瀬川和樹 (@segu0425) May 16, 2020

えとみほ:ユニフォームスポンサーの本社まで走って、記念撮影をして、SNSに上げることを繰り返してくれたんです。

すごいのは、カワチ薬品さんのケース。クラブスポンサーのドラッグストアさんなんですが、本社が宇都宮市から30キロくらい離れているんですね。瀬川選手は、そこまで走ってくれたんです。

—とんでもないですね! シーズン中にはできない、自粛期間中かつアスリートだからこそ可能な行動ですね。

えとみほ:もちろん頼んだわけでなく、自発的にスポンサー露出を増やそうとしてくれたんです。彼以外にも、自粛期間中にいろいろ考えてSNSで発信してくれた選手はいます。

例えば、カワチ薬品さんでは栃木SC限定の納豆を売ってもらってるんですね。この納豆も、エスクデロ選手が「食べたことないので、動画であげます」とやってくれたり。

コメント沢山頂いたので納豆を食べてるところを動画に撮りました。
是非ご覧下さい。#栃木SC#エスクデロ競飛王#9番#カワチ薬品#納豆チャレンジ#コロナに負けるな pic.twitter.com/kEaJDogXmf

— エスクデロ 競飛王 (@chacarita151) June 2, 2020

—この協力的な姿勢、素晴らしいですね。そして、毎回一定数の反響がありますね。

えとみほ:選手のアナリティクスをキャプチャして送ってもらっているのですが、エンゲージメントがとても高いんですね。

あるとき、公式SNSで「日光カステラ」というスポンサーさんの商品をリツイートしたんです。そうしたら、瀬川選手がわざわざカステラを買ってきて、食べたよって写真を上げてくれたんです。

オフィシャルパートナー日光カステラ本舗のカステラを注文させてもらいました!冗談抜きで美味い!しっとり感エグい!タマゴ感凄い!金箔なんかも付いてて金は食べ物だと感じましたね。
皆さんもご賞味あれ!#日光カステラ本舗
ここから買えますよ! pic.twitter.com/mMCYAcMLUQ

— 瀬川和樹 (@segu0425) April 26, 2020

瀬川選手のフォロワー数は、2,000フォロワーくらい。でも、私のTwitter(5万フォロワー以上)よりエンゲージメント率が高い。フォロワー数から考えると、いいねやリツイートが信じられないほどつくんです。

ローカル企業では、インフルエンサーマーケとやSNSマーケを打つ上で苦労しているところが多いです。Jクラブは、選手を通じてそうした企業課題を解決できるのではと思います。

Jリーガーは、ローカルマーケの担い手になりうる

—伺っていると、プロサッカークラブの新しい可能性を感じます。

えとみほ:例えば、サッカー日本代表選手のSNSには大きな広告価値があります。一方J2・J3の選手は、当人がSNSで発信することに価値を感じていないんですね。

でも、実はフォロワーに地元のファン・サポーターがいるので、ローカルへのマーケティングではすごくいいインフルエンサーになり得るんです。

—これこそ「正しいインフルエンサー・マーケティング」と感じます。ネット上でただ有名というわけではなく、しっかりした基盤を持っている。

えとみほ:そうなんです、フォロワーがギュッとしているというか。私のフォロワーは分散しているので、栃木の話をしても興味を持たれずエンゲージメントが下がってしまうんですよ。

これが例えば栃木に10年いる選手だと、フォロワーがかなりの割合で栃木の人なんですよね。そこで地元の商品やお店をPRすれば、大きな効果があります。

—伺っていて、Jリーガーが新しいビジネスを生む可能性は十分あるなと感じました。

えとみほ:そうですね。今までクラブはあくまでスタジアムに人を集め、入場数に応じてお金をもらっていたと思います。しかし現在は、ひょっとしたら来年いっぱい入場規制が解除されないかもしれない。

そういう状況では、いかにスタジアム外での注目度を高めるか、選手の広告媒体としての価値を上げていくかが大事です。そこに振り切りたいと思います。

—伺った事例はいずれもtoCの商品だと思いますが、toBでも相性は良いのですか?

えとみほ:toBでも「こういう取り組みをやっています」というPRは可能です。

以前、ダスキンの代理店さんがお掃除動画を作っていたので、それを拡散するお手伝いをやったことがあります。「こういう社会貢献的な活動をしているよ」ということを、選手を絡めてPRできるんですね。

—アテンション獲得において、Jリーガーはかなり寄与できるわけですね。

えとみほ:加えて、今まで栃木でこういう活動をしても届かなかったんですよ。そもそもネットを見ている人が少なかったし、未だにキャリアメールで申し込んでくる方も多いので。

例えば「zoom居酒屋をやります」と言っても、コロナ以前はほとんど反応がなかったんです。オンラインへの移行が進んだことで、「QRからフォーム入力してください」「電子版を見てください」といったお願いがしやすくなりました。以前なら、ありえなかったことです。

—栃木在住の方も、オンライン化がかなり進んでいるんですね。

えとみほ:そうですね。一般企業でも、以前はzoomなんて知らなかったと思います。今は訪問すること自体ができないので、「オンラインミーティングで」と伝えればだいたい通用します。

—地方は、東京に比べコロナへの嫌悪感が強いと聞きます。そういう部分も後押しになっているのでしょうか。

えとみほ:それはありますね。例えば今度、ビジター席を解禁するのですが、それによって何百人という人が県外から来る可能性があります。そこに嫌悪感や恐怖心を持っている人は、一定数いらっしゃいます。

—そうした恐怖心があるからこそ、オンライン化が進みやすかった面はありそうですね。

えとみほ:地方のほうが、周囲の目を気にされるんです。緊急事態宣言明けに試合を再開したとき、お客さんが想像よりも全然来なかったんですね。理由を聞いたら、「行きたいけど、周囲の目が気になって」という声が多くて。

スポンサーさん向け招待券でも、企業側の福利厚生として配っていたものを現在は配布していないとか。そのあたり、東京などに比べると皆さん気にしていらっしゃる印象はあります。

後編に続く>

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