怪物ドラ1候補から、特大アーチを放った1年生・中沢航介

二松学舎を選んだ理由は「フルスイング」

いくつもの高校からスカウトを受け、その中には強豪校が多く存在する地元・埼玉の高校からもあったはずだ。そんな中で、最終的に二松学舎を選んだのは、試合を見に行った時にある光景を見たからだった。「全員がフルスイングをしていたのが印象的で、このユニフォームを着てやりたいと思った」。フルスイングが信条の中沢にはその光景がたまらなく見えたのであろう。

実家から学校までは通えない距離であるため、中沢は現在、寮生活をしている。その中で彼が二松学舎に入って最も驚いたのは食事の量だ。「もともと食べる方だったんですけど、大盛りのラーメンが3杯もあって、さすがに驚いた(笑)。今では全然食べられるようになりましたけどね」と食事も体を大きくするための練習の一環ということが分かった。

親元から離れ、寮に入る際は「覚悟を持ってやれ」と両親から言われ、その言葉は日々忘れないようにしているという。まだ高校生活が始まって半年も経ってはいないが「毎日毎日練習があるので、中学と比べると伸びている」と本人は成長に手応えを感じていた。

中沢航介

同世代は常に刺激、対戦したい相手は大阪桐蔭の根尾昴

「自分たちの世代は本当に上手い選手が集まっていて、常にチェックしています」と同世代の選手の活躍を気にしているようで、横浜高校と対戦した際には「万波(中生)のあの飛距離には勝てないなと感じた」という。他にも大阪桐蔭の藤原恭大とはNPB12球団ジュニアトーナメントで会ったことがあるなど、小学生の頃から知る仲で、「あいつには負けたくない」と並々ならぬ思いがあった。その中で同じく大阪桐蔭の根尾昴投手と対戦したいと話し、同世代の中でも注目を浴びるピッチャーにスラッガーとして甲子園の舞台で戦うことを約束した。

9月10日、3年生が引退し始めての公式戦となる秋季東京大会一次予選の一回戦の試合で中沢は1年生でありながら一桁の背番号「9」を背負い元気よくキャッチボールやバッティングを行っていた。しかし試合が始まると中沢の名前はなかった。試合は8対0の7回コールドで二松学舎の勝利で終了。結局中沢が出ることはなかった。「気の緩みというか、そういうのがあった。現実は甘くない」と今自身が置かれている立場についてこう話したが、このように中沢の口からはほぼ全ての質問に対して「まだまだ」や「全然」という言葉が常にあり、慢心する様子は伺えなかったことも印象深い。

秋の大会が終われば冬は体を追い込む季節となる。「バッティングの波があるので、安定した形を続けられれば」と口にするが、特に技術面での強さを強化したいという。そして甲子園の舞台に立ったその先の目標としてプロの二文字を口にした。「目標はやっぱりそう(プロ)ですね。もう引退してしまったんですけど松井(秀喜)選手は憧れです」と力強く答えてくれた。同じ左のスラッガーとして松井の名を挙げただけでなく、メジャーについての憧れをも口にする。日本のプロ野球会において左の大砲というのは非常に貴重な存在だ。100回目の夏の甲子園。スタンドにアーチを描く彼の姿に期待したい。

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