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北海道と沖縄のスタジアム・アリーナから見る日本スポーツ界の現在地

スタジアム・アリーナと地方自治体

講演も後半に差し掛かり、話題はスタジアムアリーナのプロフィットセンター化と、民設民営のスタジアム・アリーナについてに。クラブと地方自治体がどのような協力関係を結ぶべきかという点において議論が交わされた。

近年「民設民営」という言葉が様々なメディアで躍り、地方自治体に依存しないスポーツ施設のあり方が注目されている。

しかし木村氏は「真の意味で純粋な民設民営は存在しません。何らかの形で必ず行政とは関わっていきます。」と釘を刺す。

前沢氏もこれに同調し「我々の球場も約600億円の総工費を民間から集めているわけですけど、だからといって完全に民設民営かというと全くそうではないと思っています。」と述べる。

前沢氏は続けて「たとえ球場だけが民設民営だとしても、球場に足を運んでいただくための道路や鉄道、あるいは上下水道、電力といったインフラに関して行政の方々と話し合っていかなければなりません。上下水道インフラは市のお金でやっていただいたり、道路も道庁の方にやっていただいたりしています。そういった意味で、純粋な民設民営なんかはあり得ないと思います。」と述べ、行政と協力関係を結ぶ意義を唱えた。

また前沢氏は、球団自体も「半官半民のように見られることがある」と言う。

プロ野球チームが地域に与える影響の大きさや、行政との密接な関わりによって、自分たちも公共性も期待されているという意識が前沢氏にはあるようだ。

そういった中で、新球場を建設する意義について前沢氏は「当然、球団価値を上げることが第一の目的です。ただ、その上で地域創生にも影響は波及していくと思っています。」と自信を覗かせた。

一方、ゴールデンキングスのアリーナプロジェクトについて木村氏は「クラブの成長というのも当然ありますが、アリーナがあることでバスケットボール以外のコンテンツが沖縄にきて、喜び、楽しみ、エンターテインメントというのを創り出していけるということが私たちの筋書きです。」と発言し、スポーツを超えたより大きなムーブメントに期待を滲ませた。

また木村氏は「キングスのためのアリーナではなくて、みんなのためのアリーナ。そこを大切にしています。」とも強調した。

スタジアム・アリーナに欠かせないクラブの哲学

講演もいよいよ最終盤を迎え、前沢・木村両氏から一言ずつコメントを頂くことに。

前沢氏は球場づくりの真髄を「空間づくり」だと語る。

「私たちは、球場内の回遊性がどういう論拠でできているのか、トイレの適正な数は揃っているか、そして野球の観戦に最適化された配置になっているかというところを非常に気にしています。我々は美術作品を求めているのではなく、常日頃使われるような実用品を作りたい。そしてそういった実用品の中にいかに“非日常”を入れていくかが大事だと思っています。」

一方、木村氏は「アリーナは収益性も大事ですが、収益性のために計画していくと、商売施設になりすぎてしまい、人がどうやって楽しんでもらうかという純粋な思いが見えにくくなってしまう。そういった意味でも、アリーナプロジェクトの中にクラブの哲学みたいなものを失ってはいけないと思っています。」と語り、締めくくった。

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