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感情の起伏が激しいクルーガーをキャディの妻が操縦!? 「彼女がすべてフラットにしてくれる」

愛妻のデニスさんと笑顔でカップを掲げるジェイブ・クルーガー(撮影:福田文平)

<長嶋茂雄INVITATIONALセガサミーカップ 最終日◇2日◇ザ・ノースカントリーゴルフクラブ(北海道)◇7178ヤード・パー72>
 
「少しプレッシャーは感じていて、すべてのショットが思い通りにいったわけではないけど、ゴルフはそういうもの。それでも安定したプレーができた」。3打差の単独首位で最終日をプレーした南アフリカのジェイブ・クルーガーが、一時は追いつかれるも、終盤に突き放して、ツアー2勝目を手にした。

クルーガーが日本ツアーに本格参戦したのは韓国で開催された日本、韓国、アジア3ツアー共催の2019年「Shinhan Donghae Open」で優勝したのがきっかけ。いまでも母国・南アフリカのサンシャインツアーとアジアンツアー、そして日本ツアーと世界を飛び回っている。166センチと身長がけっして大きくない37歳は、サンシャインツアーでは5勝、アジアンツアーでは2勝を挙げている実力者だ。
 
優勝インタビューでは、大会主催者やコースへの感謝を述べたあと、「私の妻にありがとうと伝えたい」と語った。
 
最終的には3打差で勝利したクルーガーだが、その道のりは険しかった。2番のパー3でバーディを先行させたが、3番パー5では1.5メートル、4番パー4では4メートル、6番パー4では2メートルを外すなど、なかなかバーディが来ない。6番では片岡尚之がチップイン・バーディを決めて、トータル19アンダーで並ばれる。クルーガーは明らかにいらだっていた。
 
そんなとき、夫をなだめるのはキャディを務める妻、デニスさんの役目。「My wife is amazing (笑)。彼女は“先生”でとにかく私をうまくコントロールしてくれる。自分は性格的にアップダウンがあるけど、『冷静でいるように』と彼女がすべてフラットにしてくれる。落ち込んだときでも盛り上げてくれて、本当に最高の妻です」。
 
デニスさんとは友人の紹介で出会い、16年に結婚。20年はコロナ禍で日本ツアーに出られなかったが、21年に妻をキャディとして日本に戻ってきた。日本語がしゃべれず苦労することもあるが、「彼女がいるだけでリラックスできる」と話す。

最終日は地元・北海道の片岡と小林伸太郎との最終組で、2人がプレーを終えると、ギャラリーが動いてしまう。すると、デニスさんが右手を上げて日本語で「プレー入りまーす」と、かけ声でギャラリーの足を止める。静かになったところで夫のスイッチが入り、リズムよくプレーできているようにも見えた。
 
7番まではなかなかバーディが来ない展開だったが、8番ティで潮目が変わる。片岡、クルーガー、小林の順で打つはずだったが、クルーガーがデニスさんに「新しいグローブを持ってきて」と要求。それをキャディバッグまで取ってくる間に小林が先にティショットを打った。「通常は1枚のグローブを替えないけど、きょうは何かしっくりこなくて替えました」と、クルーガーは理由を明かす。
 
すると9番パー5で残り107ヤードの3打目をピンに絡めてバーディとして一歩抜け出すと、後半は13番、15番、17番とバーディを重ねて、後続を突き放した。

そんなクルーガーのプレーを見ていて気になったのは、アドレスに入るときの独特なルーティン。ボールの後方から目標を確認してアドレスに入るとき、他の選手はクラブヘッドを上にして持ち上げるが、クルーガーはヘッドを逆さにしているのだ。これには「重力で重いほうが下に行きたがるので、クラブヘッドを上にすると、力を加えて持ってないといけない。クラブヘッドが下なら、力を加えなくても簡単にバランスが取れる」と説明する。
 
また、右足を前に出して体を開いた形でアドレスに入る動きについては、「ジュニアの頃から自分の狙いよりも右に向く癖があった。それを直すために、まず右足を決めて打つようにしているんだ」と教えてくれた。一般ゴルファーでも、自分の体を目標に向ける傾向があるため、右を向く人が多い。狙い所にもよるが、目標に対して自分の体は10ヤードから20ヤード左を向くのが正解。そうすれば飛球線のラインと体のラインが交わらずに平行になる。右足からアドレスに入ることによって、体のラインが右を向きにくくなるのだ。
 
日本ツアーは3週間のオープンウィークに入るため、クルーガー夫妻は月曜日のフライトで南アフリカに帰る。気になるのはこれからの予定だが「アジアンツアーもサンシャインツアーもプレーしているので、これから妻と相談するよ」という。人生のアドレスの向きは、やはり2人で決める。(文・下村耕平)

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