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広島・野村の制球力は大学時代からピカイチ! 大久保ら現役社会人からも厳選【西尾典文が選ぶ『最もコントロールが良かった大学・社会人投手5人』】<SLUGGER>

明治大から出色の制球力を誇った野村は、そのままカープのエースとしても活躍した。写真:SLUGGER
長年アマチュア野球を見ていると、「これまで見た選手のなかで誰が一番凄かったですか?」という質問をよく聞かれる。投手や野手、カテゴリーによっても異なるため絞るのはなかなか困難だ。

しかし、ここではテーマとカテゴリーに分けてランキング形式で5人ずつ紹介していきたいと思う。対象は現在の記録をとるスタイルでアマチュア野球を見始めた2001年秋以降の選手とした。今回は「本当にコントロールが良かった投手」の大学生・社会人編だ。

5位:攝津正(JR東日本東北→08年ドラフト5位ソフトバンク) 

秋田敬法大付(現ノースアジア大明桜)時代から好投手として評判で、3年春にはエースとしてセンバツに出場。社会人で8年間プレーし、26歳の年齢でプロ入りしたが、その期間に制球力は年々向上していた印象だ。高校時代はオーソドックスだったテイクバックをコンパクトすると左右のぶれがなくなり、さらにボールの出所も見づらくなった。

社会人ではフル回転していたためにスピードは140キロ程度だったが、プロ入り後に中継ぎを任せられてスピードアップ。その後、先発としても5年連続2ケタ勝利、沢村賞を獲得するなど常勝ホークスのエースに台頭したが、社会人で磨いた制球力が土台になったのは間違いない。
4位:須田幸太(JFE東日本) 

プロ入り前ではなく、DeNAを戦力外となってJFE東日本に復帰してからの投球を評価した。とくに見事だったのがアウトローへのコントロールだ。スピードガンの数字は140キロ台前半でも指のかかりが素晴らしく、“糸を引くような”という表現がピッタリ当てはまるボールで、打者がなすすべなく見送り三振に倒れるケースも多かった。

社会人復帰1年目の19年にはリリーフとしてフル回転し、チームの都市対抗初優勝に大きく貢献。その後、コーチ兼任となった2年間もジョーカー的な役割を担い続けた。惜しまれながらも昨年限りでの現役引退を表明したが、そのピッチングをもう見られないことを残念に思っているファンは多いはずだ。

3位:野村祐輔(明治大→11年ドラフト1位広島)

大学生で唯一の選出となったのが野村だ。層の厚い明治大投手陣のなかで、1年春から先発の一角に定着すると、秋にはリーグ史上5人目のシーズン防御率0.00を記録。その後も順調に勝ち星を重ね、リーグ通算30勝、358奪三振をマークした。365.0イニングを投げて与えた四死球はわずかに68、1試合平均1.68という数字は見事という他ない。

高校時代はスライダーの印象が強かったが、大学ではカットボール、チェンジアップなど他の変化球も大きくレベルアップ。4年秋の明治神宮大会では決勝で無四球完封勝利をマークし、チームを日本一に導いた。プロでも1年目から活躍を続けたが、ここ数年は苦しい投球が続く。大学で発揮したあの制球力がもう一度輝くことを期待している。
2位:大久保匠(明治安田生命) 

明治大の4年間でリーグ戦登板わずか5試合と目立つ選手ではなかったが、明治安田生命に進んでから大きく成長。今でもエース格として活躍している。いつ見ても感心させられるのがフォームの安定感だ。上半身に無駄な力がまったく入っておらず、ストレートも変化球もなぞるような同じ動きで投げることができる。

スピードは速くても140キロ台前半で、ここ数年は130キロ台後半が多くなっているが、甘いボールは少なく、緩急を上手く使いながら打者にフルスイングを許さないピッチングは安定感抜群。19年には都市対抗で4安打完封勝利をマークしている。今年で32歳となるが、まだまだチームの主戦として期待がかかる。
1位:佐伯尚治(西濃運輸) 

コントロール自慢の多い社会人投手のなかでも、自分が見てきた投手でナンバーワンと言えるのが佐伯だ。九州産業大4年時にはエースとして明治神宮大会で優勝。西濃運輸でも長くエースとして活躍し、14年にはチームを都市対抗優勝に導き、自身もMVPに当たる橋戸賞を受賞している。

テイクバックの小さい独特のサイドスローが特徴で、例えとして適切ではないかもしれないが、碁盤に石を置いていくように的確にストライクをとり、簡単に打者を打ちとっていた。左右、高低、緩急も自在で、ボールの力がなくても工夫したフォームと制球力で抑えられるお手本と言える投手である。16年限りで引退し、今年からは監督に就任したが、第二の佐伯と言われるような投手を輩出してくれることを期待したい。

他にも大学生では多田野数人(立教大)、菅井聡(立正大)、小川泰弘(創価大)、菅野智之(東海大)、有原航平(早稲田大)、東克樹(立命館大)、青島凌也(東海大)、村上頌樹(東洋大)、赤星優志(日本大)、社会人では森福允彦(シダックス)、坂本保(Honda)、石田祐介(日産自動車)、濱野雅慎(JR九州)、川脇輝生(東海理化)、木村佳吾(セガサミー)、牧田和久(日本通運)、野口亮太(鷺宮製作所)、大竹飛鳥(NTT東日本)、堀誠(NTT東日本)などがコントロールの良い投手として強く印象に残っている。

大久保、野口、大竹、堀は社会人でまだまだ現役だけに、今年もその高い制球力にぜひ注目してもらいたい。

文●西尾典文

【著者プロフィール】
にしお・のりふみ。1979年、愛知県生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。アマチュア野球を中心に年間約300試合を取材。2017年からはスカイAのドラフト中継で解説も務め、noteでの「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも多くの選手やデータを発信している。

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