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経営者、審判、コンサルタント。それぞれの立場で語るスタジアム・アリーナ

市民・行政・クラブの理想の関係とは

-行政をどう動かしていくかというのは重要ですよね。

上林:地域を巻き込むという意味で、近年は市民全員がステークホルダーとして一緒に考えながら、スタジアム・アリーナを作り上げていこうという話になってきています。

そして、その市民の代弁者であるのが市職員であり、行政であるはずなんです。そういう意味では、行政を目の敵にするのではなくて、味方につけるような形が一番良いのではないかなと思います。

藤本:その話、すごく理解できる一方で、課題も感じます。栃木ブレックスの場合、行政の職員さんはすごく頑張ってくれているんです。窓口になってくださっている部署もそうですし、知事も市長も「何でも言ってくれ」みたいな感じでサポートしてくれています。

とはいえ、例えばトイレの数をもうちょっと増やしてください、と言うとします。そのためには予算が必要なので議会で承認をもらわなければ、という話になるんです。そして、「公共性はどうなんだ」という話に行き着いてしまう。それで、トイレが必要なのは栃木ブレックスが使うときだけじゃん、ということになると話が行き詰まってしまうんですよ。

それからBリーグは年間で30試合やるんですけど、その中で体育館を使用する時に市民の要望とバッティングしてしまうことがあるんです。地域に愛されなければいけないのに、むしろ恨みを買ってしまっているというケースもあります。そして、行政の方が僕らの代わりにそういう恨みを聞いてくれているんです。
そういう状況なので、行政の方も「ブレックスさんのために何とかしたいんだけど、市民の声をさし置いておいてまで新しいことをやるのはやっぱり難しい」と。そう言われてしまうと、何も動けないということがあります。

-クラブと行政の関係について、同じく経営者として橋本さんはどうお考えですか?

橋本:やはり民意が高まれば行政も動かざるを得ないと思うんです。ピッチの芝の話になるんですけど、今年はあまり天候が良くなくて、芝の育ちが悪かったんです。栃木グリーンスタジアムは25年前から一度も芝を張り替えたことがないんですよ。だいたい10年で張り替えなきゃいけないって言われている中で、もう根腐れもしていて。指定管理者の方は本当にギリギリのところでリカバリーしてくれているんです。

それでも、対戦相手の社長とお話する時に芝の状態を心配されてしまうようなこともあります。そういう状況なので、サポーターの方のお叱りがクラブに来るんですよ。芝をどうにかしろ、と。あれがプロの試合をやる芝か、と。

ですが、そもそもグリーンスタジアムは栃木SCのものではなく、自治体の持ち物だということをご存知ない方もたくさんいます。なので、ぜひそういった意見を行政にぶつけていただきたいと思っています。

スタジアムをお借りして自治体と協力しながらいろんなことをやっていく中で、そこに民意も参加していただきたいですね。特に、今年は強く感じましたね。

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石井 宏司 氏 (ファシリテーター) SPOLABo 執行役員。1997年東京大学大学院卒。専攻は学校教育開発学。卒業後はリクルートに入社し、インターネット関連の新規事業や海外事業推進などを担当。2009年に野村総合研究所へ転職し、コンサルタントとして新規事業推進のほか、スポーツを絡めた事業戦略の提案などを行う。スポーツ庁未来開拓会議委員、日本女子プロ野球機構事業理事などを歴任。

上林 功 氏 スポーツファシリティ研究所 代表。建築家の仙田満に師事し、株式会社環境デザイン研究所にて主にスポーツ施設の設計・監理を担当。担当作品として「兵庫県立尼崎スポーツの森水泳場」「広島市民球場(Mazda Zoom-Zoom スタジアム広島)」「日本女子体育大学総合体育館」など。2014年に独立、株式会社スポーツファシリティ研究所設立。

當麻(家本) 政明 氏 サッカー国際審判員。2005年から現在までサッカーの国際審判員およびプロ審判員として国内外にて活動中。Jリーグ等では「家本政明」の名義を用いることもある。Jリーグ主審/副審: 368試合/6試合 (2017年2月6日現在) 国際試合 102試合(2017年2月6日現在 *フレンドリーマッチ含む)

藤本 光正 氏 Bリーグ栃木ブレックス 取締役副社長。株式会社リンクアンドモチベーション入社。営業職、コンサルタント職などを歴任。2007年 ブレックスの設立に携わり、経営企画、選手獲得交渉、スポンサー営業、プロモーション、チケット、グッズ、スクール事業などほぼすべての職種を担当。2012年 取締役に就任。2016年 取締役副社長に就任。

橋本 大輔 氏 栃木SC 代表取締役社長。現在の株式会社栃木サッカークラブ設立時に発起人として立ち上げをおこなう。2015年に同クラブがJ3降格したことを機に2016年3月から代表取締役社長に就任、J2昇格を目指し、クラブの建て直しを行う。2017年栃木県サッカー協会副会長就任。

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